1080話
翌日、二日から雄太は仕事が始まった。同じく直樹と里美も店を開けていた。病院はまだ休みだったので、仕事が終われば孫達に会えるのを楽しみに頑張って来たと嬉しそうに話している。
「仕事の疲れなんて、孫達の笑顔で吹っ飛ぶな」
「それについては異義はないわね」
既に夕飯を済ませていた孫達はパジャマ姿であるが、一緒にテーブルを囲んでくれている。
「眠くなったら寝るんだぞ?」
雄太が声をかけると凱央達は頷いた。ただ一人美理愛は時折目をクシクシと擦っている。
時刻は八時を過ぎているから仕方がないのだ
「美理愛。お部屋に行って寝る?」
「ン……。モウチョットダケ……」
『もうちょっと』とは言うものの、欠伸を連発している。
その愛らしい姿に直樹達は箸を止めた。
「美理愛。眠いんならママとベッドに行けよ?」
「ン……。ジィジトバァバトネルノ……」
「そう? なら、ママと一緒にバァバ達のお布団で待ってなさい」
「ジィジトバァバ、アトデクル……?」
眠そうに直樹と里美を見ると、また欠伸をした。
「ああ。後で行くからな」
「ワカッタ……。ジィジ、バァバ。サキニイッテルネ……」
美理愛は春香に抱き上げられてダイニングを出て行った。
「お義父さん、お義母さん。美理愛と一緒で大丈夫ですか? しっかり眠れますか?」
「心配しなくて良いぞ、雄太。美理愛も夜泣きをする歳でもないしな」
「まぁ、そうですけど。あ、美理愛の枕持って行ってきます」
昨日は、慎一郎と直樹は『もう一局』と話して、夕飯の後は慎一郎宅で将棋をしていて、待ちくたびれた美理愛は春香の部屋で寝ていたのだ。
「あのね、ジィジ」
「なんだ? 凱央」
「ぼくもね、ジィジとバァバと寝たいんだけど良い?」
ニッコリと笑う凱央の幼い頃を思い出す。ちょっと引っ込み思案なところもあった凱央が正月に見せたお兄ちゃんっぷりに胸が熱くなったのに、一緒に寝たいと言う凱央が可愛くて仕方がない。
「良いぞ。じゃあ、枕持っておいで」
「うんっ!」
凱央が立ち上がると、悠助と俊洋が直樹と里美をジッと見る。その視線の意味が分かった直樹と里美は微笑んだ。
「悠助も俊洋も枕を持っておいで」
「うんっ!」
「モッテクル〜」
三人が立ち上がって駆け出したところに雄太が戻って来た。
「え? え? え?」
雄太は目を丸くして三人の背中を見送った。
「凱央達も一緒に寝たいってさ」
「え? 凱央達も?」
「嬉しいわよ? 凱央達が冬休みの時に泊まりに来て良かったわって思うもの」
にこやかな直樹と里美を見て、雄太はホッとした。
(本当、お義父さんとお義母さんに泊まりに来てもらって良かったよな)
「じゃあ、子供達の布団敷いて来ます。春香が美理愛を見てますから、ゆっくり風呂入ってください」
「ああ、ありがとうな」
「お願いね」
雄太は再びドアを閉めて和室に向かった。
「直樹」
「ん?」
「叶う事ならずっと居たいって思ってるでしょ?」
図星だった直樹は苦笑いを浮かべた。
「なぁ、春香」
「なぁに?」
春香の部屋で雄太はマッサージを受けながら話している。
「お義父さん達にゆっくりしてもらいたいって思って招待したのに、凱央達がベッタリで疲れてないかと思ったけど本当に嬉しそうだな」
「うん。お父さん達、帰ってきて食事やお風呂の準備したりしてたら遅くなっちゃうから睡眠時間が長くとれて助かるって言ってた」
直樹達の自宅は店の上であるとはいえ、家事があるから就寝時間は22時になる事も珍しくない。
例え一時間でも早く眠れるのは体にも良い事だろう。確かに通勤時間はかかってはいるが、春香の作った料理を食べ、孫達と過ごす時間は何物にも代えがたいと二人は言う。
「お父さん達って雄太くんと同じように言うんだなって思ったよ」
「ははは。俺も離れて暮らすより草津から通勤するほうが良いって言ったもんな」
「うん。これから先、何度お泊りに来てもらえるか分からないけど、また来たいって思って欲しいな」
「ああ」
雄太も春香も泊まりで遊びに来てもらえるのが親孝行だと夫婦の考えが一致した事が嬉しかった。




