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昼と夜の交わり  作者: 泡沫
憲法第零条 国民の定義
46/63

国民の成り損ない

side. 政治家


「奴らは、特別扱いしてやっているというのに、何故感謝の念すらも感じないのだ。若いのばかりをこちらによこして、馬鹿にしているのが丸わかりだ。何が、あなた方の尻拭いは我々の仕事ではない、だ。誰のお陰でこの国が回っていると思っている。社会にも馴染めないクズが。」


 幹事長は怒りを露わにしていた。


 特諜局の存在を知る人など限られているため、下っ端に行かせるわけにいかない。だから、普段なら下っ端がやるような対応に幹事長が出向かなければならなかった。

 門前払いされるような依頼など下っ端に行かせれば良いもの。それなのに...


 正直、依頼をするという時点で嫌だというのに、それを自分でしなければならない、尚且つ、それを拒否される。彼にとって受け入れ難い屈辱であろう。


 (特諜局の技術や能力はとても高いと聞く。あれを揉み消すくらい造作もないだろうに。無理でも私のためならやって当然だろう。)


 「その通りでございます。彼らが何故あれほど自信過剰なのか私には理解しかねます。彼ら学校にすら通っていないというではありませんか?中卒や高卒のくせに生意気にも程があると思います。」


 特諜局の多くの局員は学校に通っていない。


 人によっては大学や大学院に進学しているものもいるがそれは一部だ。彼らの中で、学校に行くか行かないかは実力とはなんら関係がないのだ。学歴によって人生が左右されるわけでもない彼らは本当に学びたいことがなければ大学に行かない。いわゆる取り敢えず進学は存在しないのだ。何より、学校にいくかどうかは本人の判断に委ねられており、なんなら、一度も学校に通ったことがない者もいる。


 しかしながら、大卒としては高卒など自分よりも学歴の低い人に何かを言われたくないのだろう。

 ステータスこそ彼らの全てなのだから。


 「私もです。我々は国民に選ばれた代表なのです。蔑ろにされるなどあってはなりません。アレらはまだ二十代だと聞きます。そんな若者、そもそもが若者が年上に逆らうことが間違っているのです。目上の者には敬意を払い、そのいうことを聞くべきと思います。」


 年功序列が絶対といっても過言ではないくらいの社会では目上に逆らうなどあり得ないことだ。

 特諜局も序列至上主義といっても間違ってはいないが、それは実力による序列だ。とはいえ、実力というのも定かではない。時と場合によってその人の実力は異なってくる。どのように貢献するかも一辺倒ではない。だからこそ互いを尊重する。それが特諜局だ。そして、敬意を払い接するのは自分が敬いたいと思った人のみ。それは年齢なんかでは決まらない。そして、どんなに目上で尊敬する人であろうとも自分の意見と違えば進言するのが大切とされている。ただ従順に聞くだけでは成長しない。理由を何度も戦わせて、自分が納得できる点に落とし込むのだ。それが次回以降の判断精度を上げることになると信じられているからだ。それこそが特諜局の教育方法なのだ。


 幹事長の側近も怒りを露わにしている。


 それに幹事長はうなずいてそのまま続けた。


 「彼らにはたくさんの給料を支払っている。尚且つ、高い地位まで与えてやっているんだ。ただの若造の分際でそんなところに盛り立ててやっているのだから感謝すべきだろうに。恩を仇で返しやがって。そもそも、こちらがわざわざ出向いているのに、局長が出てこないとは何ということだ。」


 そう、今回出てきたのはただの局員だ。


 参謀というのは内部で使われるもので、表向きはただの局員である。外向きの地位はまた別の物差しが存在するのだが、彼らには関係なかった。局長がこなかった、という事実だけなのだ。


 何も考えが回らない、気も使えない屑になぜ自分が頼まなければならないのか。

 何故彼らは依頼を踏ん付けるのか。

 彼の中の怒りはトップに達していた。


 彼らの中で特諜局の人間は"社会不適合者の落ちこぼれ"で自分達政治家こそがエリートなのだ。

"普通"にすらなれない彼らに自分達以上の権限が与えられている。

この状況自体が既に彼らにとって気に喰わない。


 彼らの中では"社会に馴染めない普通以下のグズ"に仕事を与えてやっているのだ。

 わざわざ頼んでやっているのだ。

 機会を与えてやっているのだ。

 喜んでこなすべきであろう?

 

 ただ少し考えればわかる話だ。

 自分たちが"それ"をできないから依頼せざるを得ないのだということを。

 彼らが有能だから頼らざるを得ないのだということを。


 しかし、それに気づけない。

 何故なら彼らはただの社会不適合者で自分たちにとって都合の良い奴隷や家畜であって欲しいからだ。

 そう信じて疑わない。


 それが彼らの限界である。

 特諜局は彼らにとって苛立たせる存在であり、見下す対象である。

 彼らの見解は変わることはない。

<次回>「守り手たち」10月11日投稿予定

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