一つの負傷も許されない
今回の討伐は山にある祠だった。
そこに通っていた一家が亡くなった際の状況に不可解な点が多く、邪霊との関連が疑われたため依頼された。
警察の中にいる特諜局の協力者が人がやっていないようだと報告を上げたのだ。
そこで京介が現場に出向き跡を追ってこの祠を突き止めた後、周りへの聞き込み調査を終わらせ、破邪師である茜を連れてきたのだ。
そしてこの日、同時に警察の中でも偽装作戦が行われることになっている。
架空の犯人を捏ち上げ、逮捕するのだ。これによって事件は収束し、この邪霊が表沙汰になることはない。
茜は警察の方の偽装作戦が気になっていた。
この作戦にあたる人員に心当たりがあったのだ。
そして、そこに携わるということはこの件を既に知っているということ。
「京介、今日の警察の方の偽装、担当って誰かしら?」
静かな声で尋ねながらちろりと目線を向ける。ぱっちりとした目は細められ彼女の思考は止まらない。
「そうですね、確認します。………羽月さんですね。」
京介は端末で確認をして茜の質問に答えた。
担当を見た時、彼は彼女がそれを聞いた意図に気づき、目を閉じる。
「そう。」
茜はただ一言だけ呟いて黙る。
(璃孤ちゃんか……。あの子は身内がいなくなるのに弱いからね…、急いだほうがいいわね。)
茜は彼女とプライベートで交流があり、互いに気の置けない友人なのだ。
更に、茜は彼女の経緯を知っている。故に、より心配を掛けたくはないと思っている。その点、今回はかなり心配を掛けているといえるだろう。
まだ未確認とはいえ、一家を惨殺している邪霊の危険度はかなり高い。
更にそれを事前に羽月が知っているとくれば心労を掛けていることに違いはない。
「なら、はやく片付けて、完了連絡いれるわよ。京介、離れていて。」
茜は気合を入れ直し、京介に離れるように言った。
京介はそれに応じるように離れて茜を見守る。
(あんなに小さかったのに成長して……。いっそ逃げ出して仕舞えばよかったのに、それでも…それが茜嬢だから。)
複雑な思いを胸に茜の背中を見つめる。
<次回>「祓う」 同日投稿予定




