第3章 15「実力差か経験差か」
「っく…」
五体の『影』に囲まれ、背中を合わせる俺とミルドとユニア。
「倒すしかない…か」
そう呟きながら指ぬきの手袋をはめるミルド。
「待ってください」
ミルドは身体を前かがみにし、戦闘態勢に入っている。
「なんで?」
「こいつら元々人なんです」
「知ってる…だから殺しはしない」
ミルドが『影』に対する知識を持ち合わせていることに胸をなでおろし、両手で二本の剣を一本ずつ持つ。
普通に考えれば一人あたり三分の五体、少数だと一・六体倒さなければいけない。俺とミルドはいいとして
「ユニア、大丈夫?」
そう聞くとユニアは腰に着いてるレイピアを鞘から抜き
「大丈夫です」
と、返してくれた。
三人の息があった瞬間、戦闘に入った。
まずは一番近い敵から仕留めにかかる。
「うおおお‼︎」
剣を炎で加速し右手の剣で俺を狙う影の爪を弾き飛ばす。爪とともにノックバックした『影』に剣の峰でこめかみに打撃を加える。
『影』はだんだんと獣の姿を失い、人へと戻っていった。
一体倒したところで振り返るとユニアは未だ戦闘中、ミルドは地面から出てきた巨大な手で『影』二体を捕まえ、自身の両手を木によって巨大化させると二体を思い切り殴った。
すると『影』は同様に人の姿へと戻っていった。
「すげぇ…」
唖然と見てしまい、ユニアのところに二体いることに気づけていなかった。ユニアは二体の攻撃を捌きつつ、攻撃を加えているが未だ決定打が入っていないように見える。
「ユニア‼︎」
俺が叫ぶのと同時に飛んできた二つの木の塊が『影』を吹っ飛ばした。
『影』は起き上がることなく人の姿へ戻った。
「ありがとうございます。ミルドさん」
「礼には及ばないよ…」
なんだろう…なんか悔しい。
俺は無意識に歯を噛み締め、手を握りしめていた。
「逃げられたね…」
そう言ってミルドは少し遠くを見た。
「仕方ないですよ」
ユニアもミルド同様、どこか遠いところを見ている。
「まぁ仕方ありません。今日はもう遅いですので、戻りましょう」
「そうだね…」
足元に倒れた人達を軽々と持ち上げ歩を進めるミルドとユニアを少し放心状態で見ていた。
「何してるんですか?」
「あ…ごめん。今行くよ」
俺は走ってユニアとミルドの背中を追いかけた。
山にあった黒闇寺から郷まで降りるとそこはなんだかお祭りムードに包み込まれていた。
「今日ってなんかの祝日だっけか?」
この郷の住民ミルドに問うと
「魔王が来たらどんな村でも郷でもこんな感じなんじゃないかな…」
と、言われた。
つまりこの祭りの元凶…いや、原因は俺ということか。




