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第2章 16「敵を殺さず倒す」

 一人目の標的に右手の剣を向け加速する。

 現在交戦中の相手はこちらの動きに気づいていない。

 剣と剣がぶつかり合う甲高い音が鳴った瞬間、剣を加速しこめかみに思い切り蹴りを入れる。

「よし!」

 交戦中の相手が急に気絶したことに驚いた兵士はこちらを見てキョトンとしている。

「この人をとりあえず縛って、動けないようにしといて」

「え?殺さないんですか?」

 殺したくないという理由ではきっと納得してもらえないだろう。

「捕虜だよ捕虜」

 いきなりな割に良い言い訳が思いついた。兵士は納得したようで敵兵を城に運んで行った。

「よし、次だ!」

 そして俺はまた次の標的に剣を向けた。

 それからも何十人もの敵兵を『捕虜にする』という名目で戦闘不能にし続けた。

 途中何度か苦戦を強いられたがそれでも生き抜くことができた。

 戦いは進めば進むほど険しくなっている。

 いくつもの無残に殺された死体を見た。目を逸らしたくなる現実だ。

 しかし今は救える命から救わなければ。そう思い、ドンドン先へ進んで行った。

「マサキ様ここで何を?」

 通り過ぎようとした俺にそう声をかけるのはユニアだった。

「あ、えっとこれは…」

「城で待っていてと言いましたよね?なんで来たんですか?」

「俺だってみんなの力になりたいんだよ」

「それがみんなの望むことだと、そう考えたんですか?」

 ユニアの声は冷たい、下を俯いて顔を上げない。

「私や他の人の代わりはいくらでもいます。しかし、マサキ様…いえ、魔王様。あなたの代わりはいないんです。あなたはこの国の最後の希望であり切り札なんですよ?」

「ユニア…」

 ユニアが俺のことを大切に思ってくれえるのはすごく嬉しい。

 しかし、自分の代わりがいくらでもいるなんて言わないで欲しかった。

「マサキ様のことだから、敵兵の命でも助けに来たんじゃない?」

 そう言うのはテニーだ。

 濃い緑の戦闘服みたいなのを着て、手にはナイフを一本持っている。

「そうなんですか?」

 ギロっとユニアの視線が刺さる。

「いや…その」

「その感じだと図星みたいですね…もっとご自分を大切にしてください」

「ごめん…」

「まぁまぁユニア。この人も悪気があったわけじゃないと思うよ?許しやんなよ」

「私は別に怒ってなんか…」

 テニーにからかわれユニアは顔を膨れさせている。

「一つ条件があります。テニーと私を一緒に連れてくことです」

「わかったよ」

「一人だと何するかわかったもんじゃないですからね…」

 ユニアはボソッと呟いた。

 まだまだ信用されてないな…

「じゃあ行こうか」

 気を取り直してまた、敵を探し始める。

「お、いたいた」

 敵兵を見つけた俺は右手の剣ですぐさま加速し相手の頭を揺らす。

「さっきからずっとこんな感じですか?」

 ユニアの頭には疑問符が浮かんだらしい。

「そうだよ。なんか近くにあるものでこの人を固定しておきたいんだけど…」

「だから足がこんなに血だらけなんですね…」

 俺の言葉を遮りユニアが呟いた。

 確かに先程か蹴ってばかりいたため、両足共に血だらけだ。

 もはや敵兵の血なのか自分の負傷なのかもわからない。

 ズボンの裾をめくればきっと血だらけ痣だらけの足が待っているのだろう。

「まぁいいさ、足なんていつか治るよ。さぁ次行ってみよう」

 気を取り直してまた走り始めた。

 日はもう沈みかけている。そんな時間が経った感じはしないが、この戦い自体始まってしまったのが昼過ぎのことを考えると夕方なのもなんとなく納得が行く。

 ユニアとテニーが後ろを走るなか急に後ろを振り向き止まった。

「どうしたんですか?」

 俺の奇怪な行動にテニーが疑問を投げかけた。

「いや、これからどうするのかなって」

「というと?」

「もうそろそろ夜だからさ」

「そうですね…今日は一度戻りましょう。敵も夜はそんなに動かないと思われますので」

 全員が頷いたため、一度城に戻ることにした。

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