第2章 17「戦争と恐怖と」
人生初の戦争を体験した。
とても怖かった。
敵がどこから自分の命を狙っているかもわからない。
そのくせ自分は敵兵の命を奪おうとはしない。
少し無謀と思われるような状況で俺はちゃんと帰ってくることが出来た。
最近は命の重さを感じることが多い。
敵を全員追い返した城内で食欲が出ないため夕飯をすっ飛ばし、両足は林の回復系魔法で綺麗に治してもらった。
どれだけ寝れるかもわからないので即座にベッドへ向かい、布団の中に収まっていた。
コンコン。と、ドアが叩かれた。
「へーい…」
脱力感溢れる声を上げながらベッドから抜け出し、ドアを開けた。
「夜分遅くにすみません」
そう言うのは金色の髪がキラキラと光り、身体より少し大きく片方の肩が出てるくらいの服を着たユニアだ。
「ど、どうしたの?」
少し露出のあるユニアの格好についドギマギしてしまう。
「失礼してもいいですか?」
「あぁ、うん」
そう言ってユニアを部屋に入れた。
「で?どうしたの?」
かわいい女の子と少しでも多く話したい。そう思うのは思春期の男子ならば仕方がないのだが、その欲より睡眠欲が高い優先度だったため、すぐさま本題に入ろうとした。
「いや…その…」
ユニアは真っ直ぐにこっちを見ず、少し横を見ている。
「ん?」
そんないつもと違うユニアに疑問を持った。
「ユニア?」
そう言うとユニアは一つ深呼吸して俺の目と鼻の先まで近づいてきた。
「ユ、ユニアさん?」
その顔は赤く火照り、とても魅力的だ。
俺がもうちょっと自分の欲望に忠実なら手を出しかねない。
「マサキ様…」
「は、はい」
「マサキ様は私が嫌いですか?」
「そんなわけないじゃん」
「なら良かったです」
そう言うとユニアは更に俺に近づき、唇を重ねた。
「…!」
少し経つとユニアは俺から離れ
「死なないとは思いますがキスもしないまま死ぬのは可哀想だと思って…」
ユニアは顔を赤くしながらそう言った。
「そういうことです…そういうことなんです!それでは…し、失礼します」
ユニアは少しムキになってそう言い、部屋から去って行った。
「…」
自分の唇に手を当てた。
「…」
今起こったことを思い出す。
「俺は今、ユニアと…」
あまりの驚きに脳の回転が間に合わない。
「ユニアと…」
頬をつねり、現実であることを確信する。
「うっそ…」
つまり俺は今ユニアと
「キスしたってことか…」
頬が熱を持っている。顔中が熱い。
声にならない声で叫んだ。
「なんてこっだ‼︎」
このなんとも言えない気持ちをどう表したらいいのかわからず、ただひたすら部屋中をウロウロした。
そしてまた、自分の唇に触れた。
「ユニアの唇、柔らかかったな…」
ボソッと呟いたその一言を言った後に後悔した。
「言い方がまるで変態じゃないか‼︎」
自分の発言にツッコミを入れ、まるでドラマーのようにヘッドバットする。
「ど、ど、ど、どうしよう」
何をどうするのかはわからないがそう言わずにはいられなかった。
ユニアは俺が好きなのか?
いやいやキスもせずに死ぬのは可哀想とか言っていたし…
いやいや、でも、ユニアの顔は真っ赤だったし…
いやいや、でもでも、キスするなんてみんな恥ずかしいものなんだろう…
「もうやめよ…」
自問自答をし続けた結果、なんの答えも出ないことに気がついた。
こういうのをパラドックスっていうんだっけか?
「あぁ…」
女の子からのキス一つでこんなに心がやられるなんて…
今日は寝よう。
眠れる気は一切全然全くしない。
考えすぎはよくないと思う。
と言っても無理な話なのだが…
頭の中はユニアのことでいっぱいだ。
ユニアの笑い顔、泣き顔が頭の中にいっぱい浮かんでくる。
「俺は…」
多分きっと…
そこで思考を停止させた。
その先を考えてはいけない。
そんな気がした。
「ゔぁぁ…」
眠れないとわかっていながら布団で頭を覆い、ただひたすらユニアのことを考えてしまった。




