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美少女勇者はワシが操縦しています。  作者: オレイカルコス松村
【第1章】美少女勇者誕生
12/25

shoes-12「冒険者と行動する老人」

 冒険者ども(ヤツら)の話によれば、ワシの手によって倒されたあの化け物はデビルマンモスと言う名の魔物らしい。

 一応、一層から二十層の中で主と呼ばれる存在である為、強い事は強いのだが、普段はあれほど凶悪な魔物ではないらしい。

 では何故、あのような禍々しい気を放つほどの魔物に変貌していたかと言うと、どうやら『堕階(だかい)』と呼ばれる現象が関係しているようだ。


堕階(だかい)』とは、簡単に言えば魔物の『凶暴化』の事だ。

 だが、単なる『凶暴化』ではない。

 二十層下の魔物にも匹敵する力を得ながらにして『自我を持つ』と言うのだ。

 この迷宮から生まれる魔物は、通常、固有の行動を起こさない。生まれた時に目の前にいる生き物を母と勘違いする雛鳥のように、自分のテリトリーに入ってくる生き物を敵とみなして襲い掛かり、倒すとまたその場で次の敵が現れるまで待ち構えるという食虫植物のような単純な行動をくりかえす。

 だが自我を持つことにより、その生き物の動きは単純明快なものではなくなる為、冒険者ども(ヤツら)にとっては予測不可能な行動をとる厄介な魔物となるらしい。


 そんな現象が、最近この迷宮の中ではよく発生しているようで、その対応の為にB級の冒険者チームである元精(アホ)冒険者ども(こやつら)が狩り出されたようだ。

 ……で、何故ワシがこのような情報を得ているかと言うと……。



「いやー。それにしても、アニキのあの一振り、凄かったなぁー。アレって技だよなぁ? 何て技なんだ?」


「…………」


「へ? もしかして……アレ、技じゃねぇーのか? おいおいマジかよ!? やべぇなおい!」


「…………」


「って事ぁーアレか? 技じゃねぇーって事は、アニキの持ってるソレ……。ま、まさか魔剣か!?」


「…………」


「いやいやいや! そんなワケねぇーだろ! そんな変な形の剣見た事ないぜ! 間違いなく魔剣だろ!!」



 ……このさっきから永遠と一人で喋りかけてくるウザい槍の戦士——グレイとか言ったか?

 こやつがまぁ、聞いてもいないのによく喋りおる。お陰でだいぶ冒険者事情に詳しくなってしまった。

 ちなみにワシは、乗り物の顔を縦や横に振っとるだけだ。



 と言うかワシは今、冒険者ども(こやつら)と共に迷宮を歩いている。

 ……何故こうなった。


(※ここからの音声は巨人目線でお送りするぞい!)





 ・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・





 そもそもの原因は、瀕死のデビルマンモスが最後の足掻きとばかりに奮った鼻を、偶然とは言え一太刀入れてしまったワシが、槍の戦士を助けたと勘違いされてしまった事にあるらしい。

 普通であれば、冒険者ども(こやつら)を助けた所で初対面であるはずのワシが仲間に加わる事などあり得ないのだが、連日連夜の戦闘に加え、強者との戦いに疲弊したヤツらは、ワシを護衛につけたいと考えたようだ。


 だがワシが思うに一番の要因は、そこの剣士の肩に座って眠りこけている元精(アホ)のせいなのだろう。

 元精(アレ)は、そこらの冒険者を百人集めても敵わないくらいの力を持っている。

 それが寝てしまった事で、もしまた堕階(だかい)した魔物が発生したらと不安になっているのだ。


 要するに、こやつらはやはり元精(アホ)に頼りきっていたと言うワケだな。

 だが、もしまたあのレベルの魔物が出て来たとしても、ワシは倒せんぞ?

 そう言おうとしたのだが……、愚かにも巨人種はワシの声が聞き取れないのだ。

 ワシは巨人の街で靴屋として働いていた頃に、巨人種の言葉を学んだものだが、巨人種はワシらの言葉を覚えようともしなかったようだ。全くもって嘆かわしい。



 ……そんな訳で、ワシの言い分は届かず、デビルマンモスを倒した力に惚れ込んだグレイと言う名の槍の戦士とラルクと言う剣士に、強制的に連れて来られてしまった。

 まぁ逃げる事も出来たが、それで疑われたり壊されたりするのも面倒なので、今は大人しくしている。


 幸いにも迷宮内は暗い為、迷宮の中だけならワシに近づいても、乗り物とバレる事は無いだろう。それに、ヤツらも丁度迷宮の外へ帰るところらしく、入り口近くまでならと言う条件で仲間に加わったのだ。

 ちなみにワシの声は、昔に負った古傷のせいで出ない事になっている。身振り手振りでの説明は、操縦するのに苦労したがな。



 冒険者どもと共に行動する事となった次の日。

 魔物との戦闘は、しばらくワシがメインとなり、ヤツらは『神賜技(しんしぎ)』とか言うものを出せるようになるまでサポートにまわる事になった。

神賜技(しんしぎ)』。

 詳しく聞かされていない為よくは分からないが、冒険者どもが必ず一つ持つ特殊な技の事で、デビルマンモスのような化け物との戦いには必要不可欠な物らしい。

 おそらくワシが時たまに見ていた、威力の高い攻撃がそれに当たるのであろう。

 ただ、それを使うには多大な精神力を要し、先日の化け物との戦いで大いに消費してしまったので、それを回復する為にこのような陣形としたようだ。


 ワシだけ戦わせておいて、ヤツらは休憩するなど、なんたる事かと思ったが……。



「ほわちゃっ!」


「ギィエェエェェー!!」


「ちょいやっ!」


「グオォォオーー!!」



 ……これがなかなかに面白い。


 なにせ、迷宮に落ちたばかりの頃は逃げる事も出来ずに酒を飲みながら眺めてることしか出来なかったあのワシが、今やその魔物どもを斬り殺す事が出来ているのだ。


 まぁ、ここいらの魔物は、下層の魔物とは比較にならないくらい弱いのもあるがの。

 何にせよ、この巨人種と変わらぬくらい大きな魔物をワシの一振りで倒せてしまうと言う爽快感。上手く言い表せないが、身体の奥底から何かが溢れて来ておる。

 今ならば、あのデビルマンモスとか言う化け物も弱っていない状態でも倒せてしまいそうな、そんな高揚感がワシの身体中に満ちている。



 それから魔物との戦いを繰り返し、何層か上った所で休憩を入れる事になった。


 冒険者どもは、攻魔師の作り出した火の周りに集まり、昨夜の休憩の時と同じように食糧を煮込んだり焼いたりして、おのおの自由に食事をしている。


 ワシは、そこから少し離れた場所に陣取り、冒険者どもが休んでいる場所に背を向けるように、座っている。

 要するに、見張り番というやつだ。


 巨人種と言う生き物は一人一人の力は大した事はないが、徒党を組む事で頂点に登りつめた生き物である。

 この見張り番を立てると言う役割りも、一人では出来ない事を仲間で交代に行う事で、休みながらも周りの危険を警戒出来るという、知能の低い魔物では真似できない、ヤツらならではの発想といえよう。


 昨夜はラルクと言う剣士が見張り番をやっていたので、今回はワシがやる事にしたのだ。

 ……と言うのは建て前で、本当の目的はワシ自身(・・・・)が食事をとる為だ。


 始終兜の中に居るので、この中でワシが食事をとること自体は問題ないのだが、ワシが食事をとると、操作中の手がふさがり乗り物の動きが止まってしまうのだ。

 皆で食事をしている最中に、一人だけ微動だにしないと言うのは流石に不自然なので、こうして一人になれる場所に移動してきたと言うワケだ。



「……ムシャムシャ。……ふー。だいぶ肩が凝っておるわい。やはり、もう少し座席を広くするべきだったかのう」



 木ノ実をかじりながら肩を叩く。

 ウドノタイボクに取り付けた座席は、移動中に振り落とされないようにしっかり身体に合うように作ったのだが、それをそのままこの乗り物に利用した為、操縦中は身体を動かす事が出来ない。

 この乗り物に乗ってからは一度も降りる暇が無かったので、身体が固まってしまったようだ。



「……まぁだが、あと少しの辛抱じゃわい」



 冒険者どもが話していた内容では、あと一、二回の休憩で、迷宮を出られるらしい。

 長かった迷宮の旅ももうすぐ終わりだと考えると…………嬉しくてしょうがない。

 早く家に帰り、風呂に入りながら酒を飲みたいと思いつつも、次第に瞼が重くなりウトウトしだす。


 その時、後ろからゆっくりと近づいてくる足音が聞こえる。



「ムシャ……ッ!?」



 離していたレバーを握り直し、振り返る。

 と、そこに居たのは槍の戦士(グレイ)だった。



「いやぁーアニキ、今日は凄かったぜぇ」



 そう言いながら、ヤツはワシの横に座りあぐらをかく。



「出てくるモンスター全部一発だもんなぁー。やっぱアレか? その魔剣のおかげか?」



 まだこやつはワシの持っている武器を魔剣と勘違いしとるらしい。

 これは鎧の魔物が持っていた大剣を、強度が増すように二つくっ付けただけの代物だと言うのに。

 その後もこやつは喋り続ける。



「いーよなぁー、魔剣。……俺さぁ、レベルはチームん中で一番高ぇのに、神賜技(しんしぎ)がさぁー、弱ぇーんだよなぁ。そんでいつも皆んなの足引っ張っちまってよぉ。昨日だってそーだよ。アニキが助けてくれなきゃ、死んでたかもしんないんだぜぇ? だからよぉ、もし俺の槍が魔剣なら、神賜技(しんしぎ)が弱くったって足手まといになんねぇーのになぁーって思ってたワケよ。……けどよぉ、俺ぁアニキの剣さばき見た時にビビッときたんだよ。もしかして俺って、槍って感じじゃなくね? ってな。ガキん頃は、騎士様とか見て俺も槍持ちてぇーてなって、こーやって槍使いになってみたけどよぉ。あれって、馬に乗ってっから様になるんだよなぁ。俺、馬に乗れねーし。しかも迷宮になんか入っちまったもんだから、長い槍が使いづらくてよぉ。まーそれでも俺ぁ槍が一番使えこなせっから、今までやって来たんだけどよぉ。やっぱ、違うんじゃねーか? って思ったんだよ。今さっきな。……なぁアニキ、アニキはどー思う?」


 グレイがワシの肩をポンと叩く。



 ……うおっ!?

 今ちょうど良い感じで眠りそうだったわ!



 横を向くと、グレイの顔がワシの答えを待つかのように覗きこんでいる。

 なんかもう唇と唇が合わさりそうなくらい近い。



 ま、待て! わかったから!

 答えるから、これ以上近寄るでない!!



 途中で半分くらいは寝に入っていたので、後半はよく分からんが、要するにこやつは弱い自分を気に入らず、それが槍のせいだと思っているようだ。


 まぁ、若者によくあることだな。

 自分の技量の低さを認めずに、道具のせいにしてしまうとは。

 ワシも若い頃はそうだったわ。

 それに気付かずに、値の張る高い道具を手に入れるが、そのあと悟る事になるのだ。

 道具を変えてもまるで変わらん……とな。

 むしろ、使いこなしていた道具では無くなる為に、前よりも技量が落ちてしまう罠。

 ……懐かしいのう。


 だがこれは言っても分からぬ事。

 ならば、捨ててしまった方がこやつには良い薬になるかも知れん。


 そう思い、ワシは自らの大剣を手に取り……。


 ズガンッッ!!


 こやつが自らの側に突き刺していた槍めがけて大剣を横に振り抜く。

 すると、槍の棒——()の中段辺りに切れ目が入り、持ち手部分の棒がストンと地面に落ちる。



 うむ。狙い通りだ。



 あまりにもうまく言った出来に、ドヤ顔になるワシ。しかしそれとは反対に唖然とした顔になるグレイ。



「…………お、ぉ」



 これでこやつは槍を諦め、新しい武器を使うだろう。そして気付くのだ。やはり槍が一番だと。

 そう思ったのだが…………。



「…………さ、さすがアニキ!! その考えは無かったぜ!!」



 今までこやつより少し高いくらいの長さだった物が、半分程縮んだ槍——超短槍を持ち、興奮しておる。

 ……いやちょっと待て、槍と言うのは長いほど有利であって、その長さが無くなったと言う事は…………ま、まぁ、こやつが喜んでいるなら良いか。


 それから数年後、超短槍のグレイとしてこやつは冒険者の中でもかなり高い地位につく事になる…………かどうかは分からんが、若いのだからなんとかなるだろう。



 ——それから数日が過ぎ、精神力が回復した冒険者どもも戦いに加わり順調に迷宮を進んでいった。


 その中でも意外や意外。

 グレイの強さが際立った。

 短くなった槍を軽やかに使いこなし、今までの倍ほどの速さで敵を翻弄し、仕留めていきおった。

 …………人生とは、分からんものだ。



 そしてついに……ワシは迷宮の出口——いや、入り口にたどり着く事が出来たのだ。





 ・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

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