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先輩職員と同僚との狭間

 丁度斧が出来た所で、馬車が止まった。自分の腰に斧を差す。馬車から降りたらそこは、町とはくらべものにならないくらいの大きな都だった。水の張られた巨大な堀があり、橋には多くの人が行きかう。かなりの人口がいるらしい。前情報では、10万人くらいいるそうだ。現在、ゲヘナカンパニー(株)のプルールという悪魔が支配している。


 悪魔プルールは直情的な性格であり、非常に好戦的である。しかし、そこを除けばただの女の娘らしい。子供が好きなようで、よく城下町に降りて、貴族階級以外の人との接点もあるようだ。都の人からは結構な信望を集めている。それに、実力も確かなもので、魔獣の撃破数は、周辺地域では段違いである。臣下にしても、真っ直ぐな性格の彼女は扱いやすい。部下の中に政治や経済に長けているものがいるらしく、経済的にも裕福な都である。


 前もって作っておいた偽造通行証を見せて、難なく潜入が完了した。たしか、協力者とはセントラルスエリアの「猫の尻尾亭」という飲食店にいることの事だったので、宿屋をとってから向かう事にした。ちょうど昼もほしかったのだ。


「お客さん、他のお客もいるから。夜は静かに盛ってくれよ」


 スキンヘッドの宿主は、やる気のない声で、俺たちを部屋に案内する。


 今まさに難解に直面している。薄給の所為で、宿の部屋が、1室しかとれなかったのだ。


「イエス、構いませんよ」


「いや、俺が構うわ!」


 当たり前の様な顔で、俺に向き合うルーメンであるが、俺は構いますよ。そりゃ、俺も男であるからに。自分の作り出した従者ではあるが、「特別」だから普通の錬成した部下とは違うのであって。その……ま、間違いが、万が一だけど、あるかもしれないじゃん。心の準備っていうか、いろんな準備ができていないっていうか。薄い愛の皮が足りないというか……。


 結局、お金は多くの選択権を与える物だと分かった。俺には初めから、選択権はなかったのだった。取りあえず、ベットは2つあったので、並んで寝るようにした。少し休んでから、例の店に行く。


 「猫の尻尾亭」は、セントラルエリアの小路にひっそりとある。猫を模った、木製の看板が吊るされている小さめの飲食店であった。昼はランチメニューがあり、夜はお酒を出すらしい。しかし、常連が多く、新参者は入りにくい雰囲気がある。入った瞬間に、皆の視線がいたい。一番奥の机に案内された。俺が鮭のアクアパッツァとパン、ルーメンがズッキーニのリゾットを注文した。


 そして、[エル・ドラードシステム]を起動、協力者の顔を確認する。そうすると驚いたことに、店員に魔器狂いのナーシェがいた。注文を取りに来た活発系の娘が、協力者だったのか。金色の髪に、ポニーテイル。活発そうな雰囲気からも分かるように、体は引き締まっている。身長は170くらいありそうだ。それに見劣りしないほどの膨らみもあり、アスリートもの好きには、たまらないだろう。俺がたまらないのだから違いない。


「はい!注文の品だよ!」


 非常に通る声で、料理を運んでくる。料理を渡され、その瞬間に、お盆に紙を置く。そして、それを彼女は無言で受け取り、厨房へ下がっていく。


「中々、おいしいな」


「イエス、マスター」


「ところで、お前は食事が必要なのか?」


「イエス、マスターは私をオートマタとでも思っているのですか?私は、食事により、体の代謝を行っています。それに加え、マナの確保も行っています。ふつうの人間です」


 食べ終わってゆっくりしていると、先ほどのウェイトレスが、戻ってきた。


「俺に用があるのは、お前か?」


俺は目を細め思案する。俺っ娘か?ほう、珍しい。そして、良し。


「そうだが、お前がナーシェだな」


「そうか、何とも頼りなさそうな男だ」


「頼るのは、俺の方だ。お前は、頼りになりそうでなによりだ」


「ふん!」


「イエス、マスターは頼りない存在です。虫けらです。しかし、貴方は雌の匂いがぷんぷんします。あまり、マスター(蟲)に近づかないでください」


「ふん!こんな男に惚れるかよ!それより、生意気な女じゃないか。そいつがお前のマナダイトか?人形遊びとは良い趣味してる」


「おいおい、こいつは俺の『特別』だぜ。人形扱いするな」


「ノン、先ほどはマスターも人形扱いしてました」


 ジト眼のお前もかわいいぜ!


「んなのは、どうでもいいんだよ。そんなんじゃプルールには勝てないってことだよ」


「勝つ必要はないだろ」


「はぁ?指令も忘れたのか、この軟弱」


「勝つとは書いていない」


「?」


「支配の範囲は曖昧だとも聞いている。要は、気づかれずにマナキューブをここに設置できればいいだけだ」


「けっ!そんなの屁理屈じゃねーか」


「ノン、理屈的にはあっています。自然界でも支配者だと思っていた者が、実は実質的な支配者では無かったというのはよくある事です」


「まあ、お前の力はいずれ必要になる。その時は、俺の剣となってもらおう」


「ノン、マスターの剣は私だけです」


「けっ!お前なんかの為に力を使うかよ!」


 威勢のいいものだ、その言葉を残して彼女は去っていく。食べ終わった皿を少し眺めて  

協力者からの助力が得られない事を悟ると、次はどうやって敵に知られずに、マナキューブを配置するか思案する。


 だいたい、他の[神]たちもマナキューブが必要なのだろうか?俺だけの能力の可能性もある。まだまだ、[神]も[悪魔]も分からない。まあ、[魔獣]さえ分からないんだ。てか、何にも分からないのか。


 去勢はいくらでも張れるが、実行をしなければならない。それが、社会人の姿だろう。安月給、残業代なし、終日連勤のブラック企業だけどな。


 まずは、プルールの様子でも見に行こうと考えた時、警戒放送が王都を駆け巡る。

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