結末
24 向えた結末
エレミカに1週間ほど滞在し、それから王都グレグナに戻る事ができた。
それから『魔女狩りを行っていた』という事実を、国家は明らかにし、教会を糾弾。今だ政治的な影響力のある『教会』の必要な証人を立て、一気に教会の力を殺ぎ落としにかかった。
ココットも証言台に立つ事になり、他には北領のさまざまな街でナストが証人を集っている。
結局、父ナストが生きていることを、会って確認したミシェルは、飲んだくれていた父親の背をどやしつけ、「宿が心配だから帰る」と鮮やかな笑顔で言って、エレミカに戻った。
娘の言葉が身にしみたのだろう。 ナストは人が変わったように、自分の信じた正しいことをしようとしている。
そして北領の領主は、爵位返上の上、家名の取り潰しとなった。
一家は家財として許されたもののみを持ち、どこかの土地に落ちついた。 そして誰からか匿名で送られてきた他の魔女の居場所を書いた地図も出てきて、捜索が始まった。
無論、まだ裁判は続いているので、監視されている。
ただ唯一、南部地方で静養している北領の次女は難を逃れた。
そしてその南部地方の領主が、北領の領主の次女、シャロットを次期北領領主として押し、後見人となろうとしているという噂が、巷に流れている。
何はともあれ、ココットは王城と、裁判所を往復する日々が続いていた。 その日もまた詰問されるような、調査を終え、裁判所の回廊を通っていた。
すると、出口の方からティティスが歩いてきていた。
「おはよう」
相手もココットの姿を認めて、微笑みながら挨拶をしてくる。
「おはようございます」
ココットも頬が、にんまりと緩むのを自覚しながら、挨拶を交わす。 あの事件の後、やはり二人は仲が良くなり、よく話しをしているのだ。 ちなみにココットは、ティティスと仲が良い事で、さまざまな女性達を賑わしている事を知らない。
「これから……ですか?」
「いや、終った所だよ。 まったく何度も何度も同じ事をね。よく飽きないものだよ」
肩をすくめ、呆れたような苦笑をする。
事実、教会は自身の非を認めたくないために、あら捜しに躍起になっていた。 さらに小さな小競り合いまで、ない交ぜになってややこしいことこの上ない。
「あっ、そろそろ行かないと。
すみませんが、また今度、時間がゆっくり取れる時にでもゆっくりと話しましょう」
会釈してティティスが、ココットがさっき出てきた部屋に入るのを見届けてから、ココットは敷地の出口に向う。
すると今度は女性が歩いてきた。
その女性を見て、ココットは違和感を覚えた。
髪の色が違う、雰囲気が違う。
心の中で否定を繰り返しても、動かない体。
顔が同じ、目の色も同じ。 ありえない……。
髪の色が違う、ココットと瓜二つの女性は、質素だが高級そうな衣装を纏い、悠然とココットに向って歩いてきた。
依然ココットは動けないまま、その人物とすれ違った。
甘酸っぱい柑橘類のよい香り。 その香りが、この人物は南から来ている事を告げていた。
多少の柑橘類なら、市場でも購えるが、あれほど濃厚に、染みついたような香りはでるまい。
そして人に不快に感じさせない程度。 何となく緊張したココットであったが、香りを吸い込んだ途端、何故かほっと安堵した。そして歩き出す。 しかしその一歩で足は、また止まった。
くしゃっと言う、何か軽いものを踏んだような音と感覚があったからである。 足を退かして、それを拾う。
やはり紙切れだったのだが、几帳面に二つに折りたたまれた紙には、“ココットへ”と流麗な文字綴られていた。
ココットは驚いて、背後を振り返る。 そして辺りをきょろきょろと落ちつきなく見まわした。
しかし周囲に人影もなく。 鳥の囀りと、葉擦れの音だけが聞こえる。
『あなたはこれで終ったわけではない。 あなたも、あの三騎士達も。 そして私自身も。
またね、ココットお姉様』
手紙にはそう書かれていた。
お姉様というからには、そう呼ぶ人間は一人しかいない。
「無事だったのね……、シャロット。 でもこれでお仕舞い。
もう私は一人じゃない。 だから負けない。
そしてもし私が囚われても、必ずあの人が助けに来てくれる。
だから私は、もう負けない」
ココットはフワッと吹いた風に、髪を靡かせ、前をしっかり見据え、歩き出した。
完




