ココットとして
11 ココットになりすますシャロット
さて当初の計画通り、シャロットはふらふらと森の中を彷徨っていた。 北領騎士団の声が聞こえる。 そちらへあてどなく彷徨っていた。
「いたぞ、女性だ!」
シャロットは内心にたりと笑ったが、そんなことはおくびにも出さず、呆然と首を傾げた。
「大丈夫ですか? どこか怪我したりしてませんか?」
騎士の心配そうな言葉にシャロットは首を傾げ、「いいえ」と答え、頭を抱えた。
「私…どうして? ここは、私…私? 私……は誰?」
シャロットは呆然と呟いた。 無論演技である。 しかしそうとは知らない騎士団はココットだと思い込んでエレミカの宿屋まで運んで行った。
カランカラン…来客を告げる鐘が鳴り、ミシェルがドアをあけるとココットそのまま、そっくりの女性と、北領騎士団の団員が来たので、唇を軽く噛み締め、身構えた。
「失礼、お嬢さん。 宿屋の主どのは居られるか? それとご家族を、身許を確認したい故、呼んでもらいたいのだが」
「主は私です。 二階に王城から父君と、兄君がこられて居ります。呼んで参りますからロビーでお待ちください」
ミシェルがそう言うと、騎士団は満面の笑みを浮かべ「助かった」と中に入ってきた。 その数五人、シャロットを抜きでも一個小隊くらいはある。 何人が駆り出されたのだろう、と疑問に思いながらも二階の客室のドアをノックする。
「失礼します。 娘さんが見つかったそうですよ」
そう告げると、窓際に立って降る雪を見ていた灰色の髪にブルーの円らな瞳の男性と、同じ色の髪と伸びた顎鬚をもつ初老の紳士が同時に動いた。
二人は中央の階段の手すりから下を見下ろして、叫ぶ。
「「ココット!無事だったのか!?」」
二人の大男はココットに駆けより、まず父親が抱きしめる。 父親の目には薄っすらと涙すら浮いていた。
「だっ誰?」
シャロットが少し怯えたように言う。 それも無理からに事だろう。 本当にシャロットには見知らぬ大の大男なのだから。
娘に「誰?」と問われた父親バルスはショックのあまり、目を見開き、がばっと身を離した。
「ココット……お前わからないのか?」
気まずそうにコクンと頷くシャロットを見て、バルスがショックを受けていることは間違いなかった。
「どうも、記憶を失ってたみたいで。 しばらく森の奥にある修道院で介抱していたと、ココットさんを見つけた後に駆けつけてきた修道女が言ってました。 雪の中、倒れていたそうです。 それで意識を取戻すと、記憶がなかったと…」
側にいた騎士の一人がおずおずとそう言った。 バルスとディグノーは少し肩を落とした。
ディグノーはシャロットの左手をとって、自分の手を重ねた。
「父さん、ココットが記憶を無くすのはこれが始めてじゃない。
大丈夫だよ。 城に帰って元の生活をしていたら、そのうち記憶も戻ってくるよ」
ディグノーの言葉に、父も手を重ね、「うむ」と力強く頷いた。
ディグノーは、重ねられたシャロットの手首に違和感を覚えながらも、これでグレグナに帰れるという喜びを噛み締めていた。
一方シャロットは、まんまと入り込めたと、内心ほくそえんでいた。




