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ダンジョン再び⑤

 泣き疲れたリゼットは、俺の膝の上で眠っていた。

 フィーナ達は気を使ったのか、少し離れた所で休んでいる。


「今いい?」


 まぶたを赤く腫らしたリゼットの髪を撫でていると、小さな声で呼ばれた。

 顔を上げるとジョゼットが遠慮がちに立っている。


「ああ、良いけど。

 リゼットは起こさないようにしてくれ」


 ジョゼットはうなずくと、俺の横に静かに座る。


「こんな時に聞くことじゃないかもしれないけど。

 ううん、こんな時だから聞いておきたいの」

「なに?」

「クラリーヌと付き合ってるって言ってたよね?」

「そうだ」

「で、リゼットの事も愛してるって言ってた」

「ああ、その事か……。

 別に秘密にしてた訳じゃやないんだけど、リゼットとも付き合ってるんだ。

 それだけじゃない、フィーナやティアともね」


 少し言うのを少しためらったが、皆のためにも変に隠すのはやめた。


「やっぱりそうなんだ」


 ジョゼットが抱えた膝にあごをのせる。


「変……かな?」


 複数の女性を好きになるなんて、日本だったら許されなかった。

 そういう価値観が、小さな罪悪感として心の中にある。

 意図ぜずに隠していたのも、そういった思いがあったからだと思う。


「ううん、そんなことない。

 言われてみれば納得する。

 あっ、でもちょっと変かも」

「やっぱり変か……」


 変か……落ち込むなー。


「違う違う、悪い意味じゃなくて。

 普通は政略結婚とか、多くの子供を残すためとか。

 あとは、単純に女好きとか。

 ボクが聞いた話はそんなのばっかり。

 でも、ユウキはきちんと好き合ってるんだよね?」

「うん。まあね」


 はっきりと言われると照れるな。


「だから珍しいって事。

 正直、クラリーヌがうらやましいよ。

 あっ、本人には黙っていてよ。

 あいつすぐ調子に乗るから」

「わかったよ」


 ジョゼットは立ち上がると大きく伸びをした。


「ちょっと、もやもやしてたけどスッキリした。

 じゃあ、見張りに戻るね。

 ユウキ達は安心して休んで」

「ああ、頼む」


 彼女はリゼットを起こさないように気をつけながら戻っていった。


 俺はなんとなく恋しくなり目線を送ると、フィーナがすぐに気づいてくれた。

 彼女たちを呼んで、固まりながら眠りについた。

 リゼットもその方が寂しくないはずだ。


……


……


 夢の中のフワフワとした意識。

 真っ白な空間に立っている。

 周りを見渡すと、青と緑のモヤがいた。

 そして、前はいなかったオレンジ色がかった黒いモヤもそこにはいた。

 黒いモヤはイライラとした調子で青にモヤと話している。


 何を言っているかは、やっぱり聞き取れなかった。


 黒いモヤは俺に気づくと近寄って話しかけてきた。


「…………、………………。

 ……………………………。

 ………………」


 何かしきりに訴えかけてる様だが、全く聞き取れない。


 黒いモヤは話が通じないことに気づくと、今度は緑のモヤに話しかける。

 そこに青いモヤも加わって話し合いが行われている様だった。


 ふわふわした意識の中、その様子をボーっと眺めていると、黒いモヤがまたやってきた。


「まったく、融通のきかん奴らじゃわい」


 今度は普通に声が聞こえた。


「あの……」


 声をかけようとすると、黒いモヤは矢継ぎ早にまくし立てた。


「まったく、あの程度のやつに遅れを取るとはどういうことじゃ。

 これでは、ワシが『生欲の王』より劣っている様ではないか。

 まあ、実際にはワシは封印されていたから力が使えなかったわけじゃが。

 しかし、ワシを倒したからには、あんな女に遅れを遅れを取ってもらうわけにいかん」

「あなたは誰でしょう?」

「んん? 何じゃ、ワシの事すらわからんのか?

 まったく、ずっと見ておったが、女とイチャイチャしてばっかりの腑抜けじゃ仕方がなしか。

 ということは、ワシは腑抜けに負けたということか?

 ええい、ワシはそんなに弱くないぞ。

 まあ、あの時にはまだ目覚めたばかりじゃったからな。

 叩き起こされた所を狙われたのだからワシが弱いことにはならんな。

 しかし、今は違う。

 ワシが負けた相手が、負けたとあれば優劣が決まってしまう。

 それだけは阻止せねばならん。

 つまり、お前には、彼奴あやつに勝ってもらわねばならん」

「ええと……」

「こら、しゃきっとせんか。

 まったく、最近の若者は緊張感が足りん。

 嘆かわしい限りじゃ。

 いいか、お主はリゼットとか言う最愛の人をバカにされたのじゃろう?

 だったら、もっと怒れ。

 仇を討ってやるのじゃ。

 リゼットとか言う奴は、お前と違って少しは物事を知っておる。

 だから、バカにされてワシもちょっぴりじゃが腹が立った。

 お主はどうなのじゃ?」


 そうだ。

 シャーロットとか言う女に、リゼットの恥を暴露された。

 しかも、リゼットが一人になるようなトラウマを植えつけたヤツだ。

 あいつは許せない。

 なんで援軍なんかに任せようとしてたんだろう?

 リゼットのためにも、ヤツは俺が倒さなきゃならない。


 俺の心にふつふつとした怒りがこみ上げてくる。


「そうじゃ、その調子じゃ。

 特別に力をかしてやる。

 お主の力にワシの力が加われば百人力じゃ」

「ああ、誰だか知らないが力を貸してくれ」

「良かろう。力が必要な時には名を呼べ。

 ワシはデーモンロード『食欲の王』じゃ!」



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