最終話 これから
俺の目の前で春樹は丸くなっている。
「あの男が俺の父親で、目の前にいるのは俺の爺ちゃん……」
まったく信じられないようだがそれは俺も同様である。まさか目の前に孫がやってきて息子を殺そうとしているとは思わないだろう。夏海の方は何か誇らしげだが。
「と言う訳でとっとと諦めて帰りなさい!」
「帰れるかぁ~!俺はこれでも国の機関の者だぞ!命令に逆らえるか!」
春樹は電子手帳を出した。そこには証明写真とともに。特殊機関Xと書かれていた。
「バカね。こんなバレバレのエージェントなんて平成時代の産物よ?これだから爺は」
「ジジイって何だ。俺はまだ20代だぞ?!」
「アタシの時代じゃ十分爺さんよ!老人ホームに入りたくなかったらとっとと時代に適応しなさい!」
「何を~!お前なんか細胞すらも存在してないくせに!」
「じゃあアタシが電話するわよ。統括機関の電話番号は一緒よね」
「バカ野郎50年前から電話してる奴の話なんて信じる訳……」
夏海は電話を始めた。
「あっどうもこちら夏海です。え?番号が違う。ってここ100年前だからその組織使われてないじゃない!」
夏海は電話を思いっきり地面に叩きつけた。
「ほら見ろ。この災害を防ぐにはこの雄平を殺すしかねぇんだよ。それとも薬の為にあのテロを指をくわえて見てろって事か!」
「だから黙ってなさい春樹お爺ちゃん!」
「お爺ちゃんて……お前まさか」
春樹はまた起き上がった。
「そうよ。アタシはアンタの孫!そこの雄平のひ孫よ!」
「なんだともう!またかよォ~!」
春樹はまた叫んだ。俺はしぶしぶ口を開く。
「あのさ俺の孫と玄孫……」
「何だ」
「何よ」
「あのテロが起こったのって事故が起こったからなんだろ?それを防げばいいんじゃないか?」
2人は顔を見合わせる。
「だって雄平が暴走したのはあれがきっかけなんだから、これを防ぐのが先決なんじゃないのか」
「そうよ。さっさとあの事故を防ぎなさい。あれは単純に後世にも語られる大事件よ」
「そ、そうなのか……」
「うん俺もそうした方が良いと思う。あれを防げれば結果は一緒だろ」
「は、はい」
春樹は急にしおらしくなり、夏海とテクテク歩いて帰って行った。
急に親父とお袋が話し出す。
「それでそろそろ出てくるのかね」
「そうね」
しばらくして今度は中から扉が開いた。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
俺たちは雪崩れ込むように入って行く、そこには妻の隣に小さな男の子がいた。
「抱き上げますか?」
俺は頷き雄平を抱き上げた。
「可愛い子だなぁ」
息子が将来どんな人生を歩むのかは分からない。でも雄平が困った時に助けられるよう、春樹や夏海に会えるよう。俺たちもできるだけ長生きしようと決めたのだった。




