うじゃうじゃ沸く虫けら共を散々はたき落とした『堕ちし女神』は真実を知る
場所は変わらず荒野の世界だ。
「…………」
地上には何人もの女神が倒れている。というよりは私がこの手にかけた。
何人もの、というのはいささか謙遜か。
何千と言った方が正しい。
私はそのゴミ達を蹴っ飛ばしながら彷徨い続ける。
「堕女神エリス。貴様は一体何がしたいのだ?」
最上位の女神が空に顕現する。
【ゴッドヴィーナス】
女神の中の女神。天界にはこの称号を持つ女神が複数存在する。その名の通り神の称号を二つ与えられており、その名に相応しい実力を持つ最上位の女神。
「ゴッドヴィーナス……。これまた厄介なお方が私に何のよう?」
「ふむ。質問しているのは私の方だったと思うのだが」
「あぁ、ごめんごめん。私はただ、転生者共を殺していただけ。それなのに掟破りだとか、堕女神だとか言ってこの虫けらどもがうるさいから全員殺してた」
「何故?」
──何故?
何故だろう。発端が思い出せない。
「エリス。貴様は優秀な女神だった。……そう、『だった』、だ」
「はぁ、何? 何が言いたいの? まぁ、どうせあれでしょ。この使えないゴミ達に変わって、あなたが私を殺しに来たってことでしょ」
「エリスよ。貴様は何も分かっていない」
その女神が魔法陣を作り出し、その魔法陣から会長のジジイが出てくる。ジジイは眠っているのかピクりとも動かない。
「ジジイ!?」
「エリス、貴様には数千年前天界を滅ぼしかけた、あの堕女神の血が流れているのだ」
「!?」
「そう。貴様のその血は堕女神と、一人の人間の男の血が混ざり合ったものだ」
「う、うそ──」
「驚いているようだが、まぁ無理もないだろう。堕女神と人間との間に生まれたのが貴様だ。例え、堕女神の血が流れていても立派な女神だと私は貴様を尊敬していた。そして、そんな貴様を会長はずっと守ってくれていたのだ」
続けて女神は言う。
「本当なら堕女神の血が流れている貴様は生まれて間も無く殺されるはずだった。しかし、会長のお慈悲で貴様は生かされた。貴様に罪はないと、こんなに愛らしい子を手にかけるなんて、それこそとんでもない堕ち度だと、会長は言った」