第21話 顛末
ジョエル宅への侵入の後、俺たちは早速母さんに書類を届けに向かった。
大量に書類の入った袋を手渡すと、思ったより数が多かったからか、母さんは笑顔を見せた。
リケルをお持ち帰りしたのを怒られるかと思ったが、「あら、ちょうど良いわね」とのことでむしろよくやったと言われてしまった。
リケルは牢屋行きで、俺は「もっとバレないようになりなさい」と注意されたのみだった。リケルの扱いはちょっと可哀想になるレベルだな。
まあ母さんがすぐに牢屋にぶち込むくらいだから、どうせ悪人なのだろう。
今は母さんと多数の自警団の皆さん、加えてグレームとリカルドと一緒にジョエル宅を包囲している。
急展開だが証拠が揃った以上、速く動くのが得策だそうだ。
「ジョエル・ゴルダン、出てきなさい」
母さんが屋敷に向かって魔法で大きくした声を飛ばす。
さっきからジョエル家の方でガタガタと騒がしく音がしていたのが微かに聞こえていたが、それがピタッと止まった。
ジョエルが書類を探していた際の音だったら、音が止まったことでちょっと彼の心境が想像できる。焦りでヤバそうだなぁ……。
「あなたは内乱罪の容疑が掛けられています。素直に要求に従わない場合、強制的に身柄を確保することになるわ」
母さんは無慈悲に声かけを続けるが、ジョエルは出てこなかった。何度かの声かけの後、母さんが近くに居たリカルドに声を掛ける。
それを聞いたリカルドは自警団の方を向いて話し始めた。
「これから容疑者の確保を行います。私に続いてください。屋内に侵入する際は最大限に注意するようお願いします」
「「「はっ」」」
自警団の人達が敬礼して、リカルドの後ろにつく。
リカルドは正門にある門を、氷魔法を付与した剣で細切れにすると、「侵入します」と言って中に入っていった。
あんまりリカルドさんの氷魔法見たことなかったけどそんな感じなんすね。
というか、扉を細切れにするのは普通にヤバいと思うんだが。だってあれ一応氷と剣技だけでしょ?
アリサの成長具合に汗をかいていたリカルドさんだけど、流石にまだまだお強い。先は遠いぜ。
その先の玄関の扉も細切れにしたのか物音がした後、自警団の人の「突入!」の声で多数の足音が家に入っていった。
それからドタドタと音がし続けた後、「容疑者見つけました!」の声が聞こえると共に、ジョエルの「は、離せっ!」と抵抗する声が聞こえる。
屋内から「動くなっ!」「抵抗するんじゃない!」と怒号が飛ぶのが聞こえた。
しばらく物音と声が続いていたが、すぐに止む。
なんか、前世で見た覚えのある警察24時を見せられている気分だ。中世ファンタジーで警◯24時してんの、なんかおもろい。
俺が内心面白い気持ちで眺めていると、正門からジョエルが縛られた状態で出てきた。表情は意気消沈と言った感じでうなだれている。
リカルドが母さんの前に立つ。
「容疑者を確保しました」
「よくやりました。ここでは目立ちますから、先に移動します。自警団の詰め所に彼を連れて行ってください」
「はい」
リカルドが頷いて、自警団の部下に指示を飛ばす。
自警団の人達に囲まれて連れて行かれるジョエルだが、何かをブツブツと呟いていた。
耳をそばだてて聞いてみると、「なぜこうなったのだ……」「誰がこんなことを……」などなど納得できていないご様子。
まあ自業自得でしょ。あんな方法で実権を奪った上、好き放題していたみたいだし。それに敵対している内街への内通は流石に致命的だ。
哀れなジョエルが連れて行かれるのを見ていると、ルトリシアが近づいてきた。
「ようやく捕まったわね」
「だな。これで母さんも代表に戻れる」
ようやく今まで通りの生活に戻れるな。安全のために母さんから自由を制限されたりもしてたし。長かった……。
その後、ジョエルの尋問に母さんと同行した。ジョエルは最初黙秘を続けていたが、つらつらと述べられた証拠で容疑が確定すると、いきなり大声を上げた。
「わ、私にはジュベール子爵がついているんだぞ! こ、これは外交問題になるぞっ!」
「ええ、そうかもしれないわね」
「なら、私を解放して――」
「私たちは最初からそのつもりなのよ」
「……は?」
「あなたと違って私たちは先を見ているの。だから、あなたがジュベール子爵と繋がっていようが何の関係も無いわ」
「ふ、ふざけるなぁ!」
暴れるジョエルを自警団の人達が抑える。母さんはそれを見てため息をつくと、俺達に外に出るよう促した。
外の待合でしばらく待つことになった俺達は、三人で並んで座っている。
どうやら母さん的にはここまで考えていたようで、内街のジュベール子爵とやらを敵に回してもあまり問題ないようである。それは聞いてないよぉ~。
母さんの考えている規模感がわからないが、ほとんど内街と戦争になってもいいという表明になってしまっている気がする。
そこまで外街に力があるのか疑問だが、内街も謎が多いため判断がつかない。ジョエルの資料も盗んできたし、そのあたりで色々調べたいところだ。
しばらくして母さんが出てきて、「帰りましょう」と言った。
俺達が三人でついて行くと、帰り道で母さんが口を開いた。
「今回は助かったわ。三人ともありがとう」
「役立てて良かったよ。でも母さんなら最終的には解決してたんじゃないの?」
「それはそうかもしれないわね。でも、私が考えていたよりも早く、そして『ロイヴェリク』としてあなたが終わらせたことが何よりも重要なのよ。だから感謝してるわ」
母さんがアリサとルトリシアの方を向く。
「二人も、手伝ってくれて助かったわ。これからもクルトをよろしくね」
「も、もちろんです!」
「ん。まかせて」
二人が頷くのを見て、母さんが満足そうに笑みを浮かべた。
「これから色々忙しくなるわ。三人にも手伝ってもらうことが多くなると思うけれど、そのときはよろしくね」
「うん」
「は、はいっ」
「ん」
三人でバラバラの返事をすると、母さんはふふっと笑った。




