48/55
『漁業をやめて農業を始めた兄の優しさと、ポッケの中で二つの玉を握りしめる山幸彦』
地上に帰ってきた山幸彦くん。兄ちゃんの元へ釣り針を返しに行きました。
「なんだ?お前、生きていたのか。三年もどこをほっつき歩いていたんだ。心配したんだぞ」
「ごめん……兄ちゃん……あ、これ、兄ちゃんの釣り針」
「そうか、もしかして、これを探しに行っていたのか」
「うん」
「でも、もういいんだ。俺、漁業やめて農業始めようかと思っているんだ。お前もやるか」
「え?兄ちゃん、あんなに海が好きだったのに」
「仕方ないさ。食っていかなきゃいけないしな。俺は高いところに畑作るから、お前は低いところに作るといい」
「もしかして、兄ちゃん、この土地って」
「うん、お前がいつ帰ってきてもいいように手に入れたんだ。ホスセリの奴は相変わらずだしな。頼りになる弟はお前だけだよ」
「兄ちゃん……」
「あ、山で狩りをするなら、それでもいいぞ」
山幸彦くんはそっと二つの玉を握り締めました。




