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第0話 世界の始まり

土曜の朝。

街は休日の空気に包まれているのに、俺だけが背広姿で歩いている。

空は一面、鈍色。

ビルの隙間から吹き抜ける風が、スラックスの裾をかすかに揺らした。

「……なんで、俺なんだよ」

ポツリとこぼした独り言が、車の音に紛れて消えていく。

本来なら布団の中でゴロゴロしてるはずだった。

休日出勤なんて、冗談じゃない。

けど俺は、何も言えずに「はい」と答えるしかなかった。

気がつけば、そういう役回りになっていた。

信号が点滅を始めた。

でも走る気力もなくて、俺は足を止める。

赤に変わるのを見届けるように立ち尽くしたまま、ポケットの缶コーヒーに口をつけた。

ぬるい。甘い。苦い。

でも、この味が、いつもの朝を教えてくれる。

「帰り、ラーメンでも食って帰るか……」

どこにもぶつけられない苛立ちを、ため息で押し込める。

それでも、どこか諦めきったような笑いがこぼれた。

仕事を終えても誰かが待ってるわけじゃないし、特別な予定もない。

彼女も、趣味も、夢もない。

 このまま年を取って、

ただダラダラ働いて、

何も残せないまま死ぬのか。


——それだけは、嫌だった。


何かを成し遂げて終わりたい。

俺は、俺として生きたと言える何かが欲しい。


そんなことを、いつも考えている。

いつも通り……のはずだった。

ビルの奥、遠くから微かに「ゴォ……」という音が聞こえた。

重たい何かが軋むような、耳鳴りにも似た不快な響き。

風も止んで、鳥の声も消えて。

人の気配すら遠ざかる。

嫌な予感が、足元から這い上がってきた。

でも、まだこの時点では──誰も、それを“前触れ”だなんて思ってなかった。

ゴウン――ッ。

腹の底を揺さぶるような、鈍い地鳴り。

「……地震?」

周囲の誰かがそう呟いた直後、道路が盛り上がり、ビルが軋みを上げる。

悲鳴、怒号、車のクラクション――雑踏がパニックへと変貌していく。

悠翔は反射的にしゃがみ込み、頭を抱える。

だが、揺れはすぐに収まり……不自然な“静寂”が訪れた。

そして――空が、光った。

曇天を突き破るように現れたのは、紫がかった白い光。

雲が渦を巻き、吸い込まれるように一点へと収束していく。

その中心に、魔法陣のような文様が、空に浮かび上がった。

「……なんだ、あれ……?」

俺も、周囲の誰もが見上げ、息を呑んだその瞬間。

大地が――裂けた。

「うわああああああっ!!」

地面が崩れ落ち、ビルが倒壊し、車が巻き込まれていく。

青年の足元もアスファルトごと――奈落へと呑み込まれた。

──世界は、落ちた。

その瞬間、日本だけではなかった。

世界各国で、**“異常”**が発生していた。

【大阪】

道頓堀の戎橋に、突如大きな地割れが走り、黒い羽をもつ異形の鳥が現れる。

観光客の叫びを背に、それはビルの屋上へと舞い上がった。

【アメリカ・ロサンゼルス】

空中に現れた“塔”が、次々と軍用ヘリを撃ち落とす。

魔術的なバリアが張られ、ミサイルがすり抜ける異常事態。

【フランス・パリ】

エッフェル塔が、異世界の蔦に絡まれ崩壊。

その根元から現れたのは、獣人のような集団だった。

世界各地で、天災のように“異世界の要素”が現れ始めた。

街は崩れ、空には塔が浮かび、大地には見たこともない建造物が現れる。

電気は遮断され、通信は途絶え、ネットは断絶した。

人々はまだ、それを理解できていなかった。

“融合”が起きたことを。

そして世界は――

混ざった。

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