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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第一部 「だったらナーロッパにするしかないじゃない!」

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第32話「京壊滅の報」

金曜日なので第32話です。


よんでくださってありがとうございます。

静まり返った広間に信長の声が響く。

自身の顔が青ざめているのがわかる。

時間の問題だと思う、と言ったのを覚えている。

だけど。

本当にそうなるなんて。

それが京、つまりこの国(日本)の中心で起こるなんて考えていなかった。

京は多くの寺社仏閣があって、イナリちゃんの存在から「神」がいて、守護されていると漠然と考えていた。

でも。


京は、鬼門から溢れた魔物に蹂躙され、魔境と化した。


そう、信長は言った。



~信長の話~

まず、前提として言っておく。

この話は口外法度だ。

親父(オヤジ)と話し合ってそう決めた。山科様も同意された。

……今の尾張がこの報せを受けて動揺せぬはずがない。

早急な尾張平定が必要になった以上、余計な動揺は避けるべきだ。

わかってくれるな?

もちろん母上もです。

貴女を同席させるのは、帰蝶の重要性を正しく認識してもらうためだ。

……母上にはすまぬが、もはや奥とか家とか言ってる場合ではなくなった。

帰蝶、お前の知恵がいる。力を貸してくれ。

ああ、わかってるさ。お前は最初からそのつもりだってな。

……そうだな。あまりに衝撃を受けすぎて、話すのが怖くなってたみてえだ。

京について、話そう。


1月ほど前、京の北東側に小鬼がうろつくようになったそうだ。

最初はどこぞの賊が暴れておるのかと思っていたらしい。

朝廷は公方様に追討を命じた。

公方様は家臣を物見に出したが、誰一人戻らなかった。

やがて賊ではなく鬼だと分かると、公方様は御自ら鬼退治に行くと傍衆を引き連れ数百の軍勢で北東に向かい、戻らず……代わりに現れたのは、魔物の軍勢だった。

そのまま京は魔物に蹂躙され、魔境と化しているそうだ。


朝廷か?山科様の言に寄れば、公方様に追討を命じた時点で三好にも文を送っていたそうだ。

魔物の軍勢が畏れ多くも御所に近づかんとした時、三好の軍勢が現れ帝(みかど)を初め多くの公家衆を保護、辛くも撤退に成功したそうだ。

今は大和にまで引き、そこで仮御所を築いているさなかだとか。

山科様によると、京と近江の海西岸部は魔境と化し、三好、六角、浅井、若狭武田の4家で何とか防衛している状況だという。

……山科様は、俺に鬼退治に出よとおっしゃった。

熱田迷宮に入った事に尾ひれがついて京に届いていたらしい。


……「今頼光」だとさ。

そんなにかっこいいもんでもねえのによ。

が、親父(信秀)は断った。

尾張の平定が道半ばで、足元がおぼつかないのに遠征なんざとてもできねえからだ。

山科様は、大層落胆していたが……わかってはくれたよ。

だが、行き場を失った公家衆や京の町衆をいくらかでも尾張で受け入れてほしいとおっしゃって、それは受け入れる事とした。


帰蝶、お前の案でもあったな?人を集めると。

もう猶予はなさそうだ。

……作るしかなくなったぞ、なーろっぱ。

~信長の話 おわり~



ふう、と大きくため息をつく信長(ノッブ)。

誰も一言も発せない。

私は今の話を聞いて考えを巡らせる。


……とんでもないことになった。

そのうち畿内にも魔境が現れるとは思っていたけど、まさかそれが京都だなんて。

しかも、北東から?鬼門じゃない。


もし、すべての魔境の中心に迷宮(ダンジョン)があるなら。

……それがあるのは、多分、比叡山だ。

琵琶湖西岸が京と同様に魔境化しているというなら、だいたい中心に比叡山がある。

どうやって制圧する?熱田と違って噴出してから時間がたっている。

迷宮(ダンジョン)の仕様を考えるに、魔物は無限湧きだ。

信長(ノッブ)が迷宮に突入して以降、尾張国内の魔物が無限に沸いているとは思えない。そうであれば魔境は際限なく広がっているはずだ。

現実の尾張では一進一退だが徐々に人の支配領域は増えている。

他の魔境ではそうではないのにだ。

人は徐々に押されている。

関東や飛騨、信濃の魔境が少しでも減らすことができたとは聞いていない。

信長(ノッブ)の情報網でもそういったことは聞いていないらしい。

何が違うのか?

たぶん、迷宮(ダンジョン)だ。

他はそもそも迷宮(ダンジョン)があるのかすらわからないけど。

でも、多分、あるんだろうなあ。


迷宮(ダンジョン)に突入するとかしたら、何らかの原因で魔境での魔物の噴出が止まるんだろう。

この予想が正しければ、魔境の噴出を止めるために魔境を切り開いて中心にある迷宮(ダンジョン)に突入して何かをしなければならない。

無理ゲーすぎん?

普通の兵じゃ小鬼退治がせいぜいだ。

現実には大鬼もうろついてるし……もっとヤバい、上位の魔物がいないなんて楽観視できない。

迷宮(ダンジョン)の地下2層以下にいる魔物のことは信長(ノッブ)も言葉を濁すだけで教えてくれないし。


外に出た小鬼を倒してもレベルアップするけれど、それはゆっくり過ぎる。

迷宮内で一日数匹倒していただけの私がこの数日で走り幅跳び13尺(約4m)から28尺(約8.5m)まで飛べるようになった。

外で小鬼を倒してただけの兵は16尺(約4.9m)だったのにだ。

殺した小鬼の数は彼の方が遥かに多い。

魔境を解消するために迷宮(ダンジョン)でレベルアップする必要がある。

でもその迷宮(ダンジョン)は魔境の中心にある。

……信長(ノッブ)がいなかったら、日本詰んでたんじゃないかな?


とにかく。

兵の強化が最優先だ。

―そこまで考えが巡ったところで、イナリちゃんが叫んだ。


「ふ、伏見は!!伏見はどうなったのじゃ!?ノッブ!教えよ!!」


ああ、そうだ。この子は伏見稲荷の……

信長(ノッブ)は表情を変えずに言った。


「俺も聞いたが、要領を得なくてな。さすがに混乱してあまり見て回る余裕は無かったそうだ」


「そんな……」


「だが、大和へ落ち延びた後に聞いた話だが、と付け加えたうえで教えてくれた。

……伏見の稲荷山の麓から立ち上る煙を見た者がいるそうだ」


「あ、あああ、あああああああああー!!」


イナリちゃんが慟哭を上げて床に突っ伏す。

私と土田御前(ノブマッマ)が駆け寄り、そっと抱きしめる。


「……すまぬイナリ殿。

後々ほかの者より聞いた方がつらかろうと思い、伝えさせてもらった」


慙愧に耐えない、と言う表情で言う信長(ノッブ)。

私は涙目でイナリちゃんを撫でるしかできない。

イナリちゃんは突っ伏したまま身も世もなく泣き続けている。

土田御前(ノブマッマ)は私と同じくイナリちゃんを撫で続けていたが、私をキッと見つめて言った。


「帰蝶殿、貴女に何か策があるのですか。女子(おなご)のあなたが。

このような地獄を変える策があるのですか。

このような幼子の涙を止められると言うのですか!!」


私は固まる。

そんな自信はない。

私はただ、自分や周りの人が無事に生きられればそれでいいと思ってた。

地獄を変える策だなんて。

人の涙を止める策だなんて。

そんなもの、私には……

俯きそうになった時、信長(ノッブ)が、私の最推しが。

はっきりした声色で発した。


「母上。帰蝶だけではだめなんだよ。俺も、親父も、母上も、家臣も領民も、みんなで戦う必要がある。

そして、その戦いの方向性を決めるのに、帰蝶の知恵は得難い価値がある。

俺はそう思ってんだ。

母上……母さん。頼むよ。力を貸してくれ。」


茶筅髷が下がる。

土田御前(ノブマッマ)がひゅっと息をのんだのがわかった。

イナリちゃんの泣き声は止まっていた。

そして。


「……良いでしょう。どうやら魔境の脅威とは奥にいれば無関係という訳にもいかないようですし。

それで、何をしろと言うのです?」


大きくため息をついて、土田御前(ノブマッマ)は言ってくれた。

それを聞いて頭を上げた信長(ノッブ)はにこやかに笑って


「恩に着る、母上!それでな、まず最初に……」


とまで言ったところで、私が抱きしめていたイナリちゃんが急に立ち上がって叫んだ。


「わらわは伏見に帰る!宇迦さまに会いたいのじゃ!皆が死んでしまったなど信じぬぞ!!」


「イナリちゃん!」


「止めてくれるなきちょー!伏見を失ったら、わらわは、わらわは帰る場所が無くなってしまうのじゃぞ!」


そう言ってとてとてと外に走っていこうとする。

遅い。

魔法も使えるしレベル高そうなんだけど運動能力は見た目通りなんだろうな。

ああもうレベルアップの意味が分からん。

あの子、神様のはずなんだけども!!


私は追いかけてイナリちゃんの肩をつかんで止めた。

イナリちゃんはジタバタ暴れるが見た目通りの幼女なので留めるのは容易い。

そして私とイナリちゃんの口論が始まる。


「待って!今伏見に行ってもどうにもできないでしょう!?」


「わらわは宇迦さまの眷属じゃぞ!小鬼や大鬼なんぞひとひねりじゃ!」


「イナリちゃんご飯も食べなきゃだし寝ないといけないんでしょ!」


「そんなもの、どうにでもなる!」


「ならないよ!慌てたときほど落ち着きなさいって宇迦さまに言われてたんでしょ!!」


「じゃあどうすればいいのじゃ!!わらわにはもう、もう……帰る場所がなくなってしもうたんじゃぞ……」


「だったら尾張にいればいいじゃない!!」


「きちょー……」


「イナリちゃん言ってたでしょ!熱田さまも宇迦さまもあの程度の鬼どもに負けるわけがないって!急に鬼が溢れてびっくりしただけでいったん引いて体制整えてるに決まってんじゃん!」


「……」


「その時、熱田から出たイナリちゃんが居ないってわかったら熱田さまも宇迦さまもどんだけ心配するか!

いい!?迷子になったらそこから動かないのが大原則なのよ!!」


自分でも何言ってるかよくわかんないけど、とにかくこの状態のイナリちゃんを行かせてはだめだ、という気持ち全開で言葉を発する。


「だから、尾張にいなよ。なんだったらここをイナリちゃんの帰る場所にしてもいいんだよ」


「……きちょー……」


「それに、まだ術を教わってない!せっかく出してあげたのに、約束破ったら宇迦さまに怒られるんじゃないかなあ?」


「ぐぬぬ、言うではないかきちょー!

……あい分かった!きちょーがそこまで言うならしばらくここにいてやっても良いのじゃ!!」


口では悔しそうに、でも嬉しそうに言うイナリちゃん。

良かった。とりあえずイナリちゃんが飛び出していくことは無さそうだ。

なんか適当に言いくるめたような気がするんだけど、イナリちゃんがちょろくて良かった。

なんかちょっとした罪悪感が湧いたので私が知ってるおいしいお団子を作ってあげようそうしよう。


うまいお団子ってなんだろうね。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

よろしければブクマ、ポイント、感想などいただけると喜ぶんですが、まあ無理せんでもいいよ。

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