35話 「夏のモヒート」
木苺を娘と妻のお土産用に少しだけ貰って、移動がめんどいので神殿内で夜飯用に軽食を食べ、我々は帰還することにしたのだが、
「我が侯爵家で休まれて帰っても」
ウィード侯爵が俺の体力を心配してくれたのか、家に誘ってくれた。
「ありがとうございます、しかし家族が心配しておりますし、まだ仕事が立て込んでおりますので」
俺にはダンジョン側の別邸を見に行く仕事があるのだ!
「そうですか、分かりました。では後日改めて謝礼をお送りいたします」
「謝礼ですか、では物とかはいりませんが、万が一娘、いえ家族に何かあった時は味方に……力になってやってください」
これが1番大事なので。有事の際の横のつながり。
「それはもちろん! しかし何もなしとはいきませんので少しくらいは謝礼金など」
「じゃあ遠征についてきた騎士と魔法使いの出張費だけいただきますね」
「はい!」
そして北部のウィード侯爵家からは部下の出張費だけ貰って帰宅した。ちなみに既に時刻は深夜となっている。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、あなた。お怪我とかはありませんの?」
妻がわざわざ屋敷の玄関まで来て出迎えてくれた。
既に深夜な上に社交で忙しくして疲れてるだろうに。
あ、魔法使いが帰宅に合わせて連絡の鳥を飛ばしてたな、そういや。
「無事だ。ところでミルシェラはどうしてる?」
「流石にこの時間は寝てますわ、深夜ですから」
「そうか、とくに何事もなかったならいい」
「お風呂の用意もできてますけど」
「そうだな、アンデッドと戦ってきたし、清めの意味も込めて入ろう」
帰ってから風呂に入ってさっぱりしたとこで、俺は自室でこっそりと飲み物を作ることにした。
日本から仕入れてきたものが魔法の袋に色々入ってるんだ。
今から作るのは 夏にピッタリ、爽やかなモヒート。
グラスに砂糖を小さじ2杯とミントを洗って千切って入れて、更にシロップを入れ、ラム酒を加え、ミントをマドラーでつぶしていく。
それからライムを絞って、その実もまたグラスに入れて氷を投入。
(ちなみにライムがなければレモンでもいい)
さらにそこにソーダを注ぎ入れる。
(ラム酒などを買うのが敷居が高いとか、面倒ならコンビニやスーパーで買える市販の缶チューハイのレモン味とかで代用してもいい。日本にいた時はそんな飲み方もしてた)
そして 炭酸を飛ばさないよう、軽く混ぜていけば完成だから、早速作ったモヒートを喉に流し込む。
「はー、生き返る……」
美味しくできたモヒートに満足してから歯を磨いて就寝。
お休みなさい。
◆ ◆ ◆
爽やかな小鳥の囀りで目覚めた。
窓の外を見ると木々の緑は輝き、晴れてる。いい天気だ。
朝を迎えて顔を洗い、歯を磨いて身支度を整えて食堂へ向かうと娘が駆け寄ってきたので、抱きとめる。
「パパー!! おかえりなさい!」
「ただいま、ミルシェラ、そしておはよう」
「あっ! おはようごじゃます!」
「おはようございます、ケーネスト、ミルシェラ」
そして食堂へ現れた妻のヘアースタイルが変わってる!
「おはよう、アレンシア。 今日は髪を上げて涼やかなポニーテールにしたのか。いいじゃないか」
「はっ!? ま、まあ、夏なので!」
髪型を褒めたら何故か動揺してる妻。
しかしポニーテールとかってうなじも見えるし、いいよな。
「おはようごじゃます、ママ。いえ、おかーさま」
「え、ええ」
若干舌っ足らずな挨拶をするミルシェラが今朝もかわいい。
我々は朝食の席についた。
ベーグルにはクリームチーズを塗っていただきます。
なかなかにおしゃれだな。多分。
口に入れたらパリッとした食感のハーブ入りウインナーとかも美味いし、デザートのフルーツは小ぶりながらもメロンだ。
社畜時代は休日以外の平日はふりかけご飯とか、たまごかけご飯に豆腐にネギと醤油かけて食うとかで済ますことも多かった。
公爵家は人が用意してくれて楽だな。
食事の後は完成したばかりの別邸の視察に向かう、楽しみだ。




