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25話 まったりスローライフ

 昼が長いなぁ……もう夜の七時近いのに、まだ空は夕陽に照らされていて、俺は明るい公爵邸の庭園のただなかにいる。


「夏だ……なぁ」


 そう、日本から持ち込んだタブレットの時刻では、既に夜を示す数字で、あちらとの時間もそうズレもなかったみたいなんだ。


 俺は昼に引き続き、酒を飲みつつ食堂へは行かず、夕飯時にも焼き鳥を食べている。

夕陽の色を映し、輝く庭園の噴水を眺めながら、ゆったりとした夏時間を堪能しつつ。


スローライフって最高だなぁなんて思う。


今世は娘の断罪を回避しつつも、社畜過ぎた前世とは違う風に生きたい。

書類仕事はもう明日の俺に頑張ってもらうことにして、風呂入って寝よう。


 もうお酒も飲んだし。ほんとは酒飲んだ後の風呂はいけないんだけど……。



「あなた、またこんなにところで……食堂にいらっしゃらないあと思ったら」


 また庭園で妻とエンカウントしたが、流石に本来夜であり、夕陽の時間は日傘は持ってなかった。



「あ、すまない、俺……いや、私を待ってくれてたのか?」

「は? ま、待ってなどいませんわ!」



 彼女の顔が赤くなった。やはりツンデレの要素があるよな? この人。

そしてこのボディ、本来ケーネストのものであるからして、顔面強者だ。ゆえに、この反応もなんらおかしいことはない。



「あぁ、そう、つれないね」


などと、軽口もたたいてみる。


「全く! 最近は食べてばかりで……鍛錬はされてますの?」



 はっ!!

 まだ太った様子はないが、忘れてた!



「あ〜〜忘れてた! 運動もあったなぁ」

「全く……」



 その時、妻のヒラリとした夏服のゆったりした姫袖が風にあおられた。



「流石夏服……エアリーだな」

「は? エアリー?」

「確かそう、エアリーはふわりとした空気感があり、軽やかとかそういう意味だったと思う」


 体調崩して熱出て会社休んだ時に、たまたま見た、昼の奥様向け情報番組のファンション対決でそんな説明をされていた気がする。


 今日の妻の服は涼し気な素材で出来た白いサマードレス。

 胸元もそこそこ夏らしく開いてるのに気がついたのか、急に谷間のあたりを両手で押さえて隠す妻。


 まるで初々しい乙女のようだ。



「あんまりじっと見ないでくださいまし!」

「一応夫なのに……今更隠す必要あるのか?」

「ふ、夫婦でもぶしつけな視線は失礼ですわ!」

「はいはい、すみません。そして鍛錬は明日からします」


 俺は苦笑いをして、涼みを終え、そろそろ風呂に入るかと、腰を上げた。


「今度はどこに行かれるのですか?」

「風呂だけど? 何? 一緒に入るか?」

「は、入るわけないでしょう! 一緒になど! 破廉恥な!」


「平民はたまに一緒に入るそうだよ」


少女漫画のいちゃラブシーンで見た。


「へ、平民が一緒に入るのだとすれば、湯の節約でもしてるんじゃないのです!?」

「あはは、冗談だよ」

「冗談!?」

「平民は自宅で湯船につかれる家もそう多くはないみたいだし、市井に大型銭湯でも作るか」


こちらの土地は日本ほど水も豊かではないらしいから。


「せんとう?」

「じゃあいい方は変えて……テルマエだな? 入浴施設だよ」


なんとなく思いつきで古代ローマのアレな発言をしたが、ちゃんと男女は分けて混浴禁止にして、売春などされないよう、衛生にも気をつけないとな。


「ケーネスト、あなた思いつきで話をされてますでしょ?」

「まぁな」

「呆れた方……」


などとたわいのない会話をしつつ、俺が庭から本邸へと続く石畳の道を歩くと、後ろから妻もついて来ていた。そんなとこは雛鳥のようで可愛いと思ったし、日本で読んだとある詩人の言葉がふと思い出される……。


姉が従姉妹のおねーさんに貰って大ハマりしたと、貸してくれた本で読んだ。



『恋人同士の会話にはムダなものは一つもない』のだというもの……。

うちの……この場合は既に夫婦なのだが、まぁ政略や契約で繋がったものだとしても、特別な関係であるには違いない。


娘と同様、俺の……守るべき大切な人なのだ。




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