26話 小銭稼ぎ
朝。
俺は体型維持の為、運動がてら早歩きで屋敷内をウロウロしはじめた。
階段登り降りだけでも結構運動になるはずだし。
そう、ぶっちゃけこの家は広いのに、実は未だに執務室と自分の部屋、夫婦の寝室と娘の部屋と厨房と風呂と応接室と庭園くらいしか把握してなかったからだ。
そしてウロウロしてて思った、この屋敷内の写真を撮れば、異世界漫画やイラスト描いてる人の参考資料になるのでは!? と。
なので急いで自室へとって返し、廊下、天井、壁の絵など、資料写真をタブレットで取りまくる。
「旦那様、何をなさっているのですか?」
執事が俺の奇行に目を止めて声をかけてきた。
「資料写真を撮ってる、いや、記憶障害があるから、記録のためだ」
あと、小銭稼ぎだ。間取りがバレたとて、売るのは異世界の方だ。
攻め込まれた時に不利になりはしないだろう。
「は、はぁ、そうでございますか、記録の為に……。その板のようなものは新しい魔道具なのですね?」
「まぁ、そんなとこだ」
適当に誤魔化して、俺は次に騎士の鍛錬所へ向かった。当家の騎士はイケメンぞろいだ。
ついでにこの者達の写真も加工すれば、衣装の参考にもなるしかっこいいし、こっちも売れるかも!?
俺は思いつきのまま、その辺にいたイケメン騎士に声をかけた。
「君、私の小銭稼ぎに協力してくれないか?」
「は? 小銭と申されましたか?」
騎士は俺の言動に戸惑いを隠せない様子だ。さもありなん。
「ああ、別に公爵家の経済状態が危ういわけではないのだが、せっかく君達騎士の容姿がいいので、記録させてほしい。 なに、見せるのは他国の者ゆえ、万が一、やけに熱心なファンができても何も実害はないはず」
「は、はあ、ご随意にどうぞ」
「ありがとう」
流石騎士、怪訝な顔をしつつも雇用主の変な要求にも応えてくれる。
高い忠誠心って素晴らしいな。
そしてかっこいい筋肉のついたセクシーな騎士達の写真や鍛錬所、馬小屋、馬車、庭園の写真とかも撮っていった。
「パパ、何してるの?」
愛娘、てとてと歩いて登場!! 歩いてるだけで愛らしい!
「ミルシェラ、お前のことも撮っておこう、記念写真だ」
「なあに? それ」
「魔道具みたいなものだよ」
やはり、ミルシェラはこのタブレットも俺の言うこともなんだかわからないって顔だ。
「わかんない」
「うん、今はまだ分かんなくていいから、取り敢えず笑ってくれ」
「うん」
にこっとエンジェルスマイルをいただいたのでシャッターを押した!
可愛い!!
「よし、ありがとう。あとは……仕事だな」
そろそろ書類に向き合うか。現実が迫ってくる。
と、おれは執務室へ向かった。
書類仕事は好きではないが、昼はまたナスの料理を料理人にリクエストしてあるのでそれをご褒美に頑張る。
今度は焼きナスの胡麻醤油かけではなく、ナスのグラタンだ。それとバゲットとスープとフルーツはリンゴ。
ナスのグラタンの材料はナス、玉ねぎ、熟したトマト、バター、玉ねぎ入りホワイトソース。
そして卵黄に、おろしチーズ、パン粉、塩コショウ、揚げ油などだ。
「ソースは煮すぎたら硬くなり、なめらかさが無くなるので、煮立ったらすぐ火を止める」
と、コツをも料理人に伝授しておいた。
そしてしばし紙の仕事を真面目に頑張っていたら、ランチタイムになり、執務室まで料理を届けてもらって食べてみたが、バターとチーズの旨味がたっぷりで美味しい出来上がりだった。
デザートのリンゴはシャクシャクとして食感がよく、瑞々しく香りもよく美味しいし、うちの果樹園で採れたものらしいので、感動もする。
食事を終えてお茶を飲んでいると、文官が地図を持って話しかけてきた。
「公爵様、例の新規発生ダンジョン近くの別邸はこちらの林の中でよろしいのですね?」
俺はテーブルの上に広げられた地図の、ある箇所を指し示して語る。
「ああ、ここに別邸、隣に倉庫を作る」
「かしこまりました」
食材や調味料はこちらのダンジョンから日本まで移動し、入手できるから、拠点が近くにあった方が助かる。
ただ、買い物をするなら資金がいるから、屋敷の写真など撮って、小銭稼ぎをしようという訳だ。
俺の元の体は意識不明のまま病院で寝たきりで、国からなんか金は出てるだろうが、無職なので。




