118話「変身」
~ ミルシェラ視点 ~
私の衣装だと言って、魔法陣の描かれた大きめの風呂敷みたいな魔法の布から着替えを取り出した神官ヒーロー様。
これは……どう見ても巫女服です。
「何故女性ものの巫女服をあなたが持っているのですか?」
「借りてきました」
「どなたから?」
と、おもわず突っ込まずにいられませんでした。
「神官衣装の予備を置いている部屋からです。巫女の誰かの着替えを盗んできた訳ではないのでご安心を」
宝物庫から魔法の飴を盗んできたり、大胆なことをする人だから油断できない。
「どの道無断で借りた事がバレたら怒られるのでは?」
「聖女様に衣装無しでは格好がつきませんから、それより宿に到着したら飴を食べて大人になってこれに着替えてくださいね」
「うぐ……」
聖女を騙ることに多大なるプレッシャーを感じる私に対して、彼はやけに落ち着いてみえる。
「ジェダイト様はやけに落ち着いて見えますが、我々はこれから死ぬかもしれない危険なことをするんですよね?」
「そうですね……今更怖気づきましたか? ところで様付け呼びはやめてください、見習い神官より公爵令嬢の方が身分が上なので」
第一王子と実は双子だから……思わず様をつけていました。素性を隠されてますが呼び捨ては難しいので……心理的に。
「はぁ、いえ……ただ、ジェダイト……さんは何故かやけに落ち着いて見えますので」
様を禁じられたので「さん」呼びにしました。
「ははっ、実は緊張していますよ」
と、言う割にかなりクール雰囲気だ。彼が私と目を合わせるとふっと笑い、私の片方の手をとった。
「どうです?」
「冷んやりしてて……なるほど、緊張されているようですね」
人間が緊張すると手のひらの温度が下がるのは、マンガで知った知識です。
というか、女の子の手を握るのになんの躊躇もないんですね、この神官様は。
宿の車寄せに、この場合は馬を休ませる場所に到着。
宿に寄る為に彼が先に馬車から降りた。
私も次いで馬車から降りようとすると、風がうなりを上げていた。
強風に煽られてバランスを崩したところへ、彼がサッと手を伸ばし、倒れそうな私を……支えてくれた。
こういうシーンを、令嬢系の漫画で幾度も見たけれど、自分の身に起こるとは……。
「も、申しわけありません」
「いいえ、ところで宿の部屋では飴を口にする前に服を脱いでくださいね」
彼は急に私の耳もとでそう囁いた。
服を脱げと。
「な、何故ですか?」
「服が破けるといけないので」
あ、そうか、大人になると今の服だと小さいのか。急に何を言い出すのかと思ってしまった。
◆ ◆ ◆
宿の個室で私はジェダイト様に言われたとおり、服を脱ぎ、それから飴を口に入れました。
口の中で蜂蜜の飴のような甘味がひろがり、そして、私の体が一瞬発光すると、十六歳くらいの姿になりました。
「すごい……本当に大人の姿になっています」
手足がすっと長く成長していて、胸もある。
でもゆっくり感動してる場合でもなかったので
急いで巫女服に着替える。
◆◆◆
「巫女服もお似合いですね」
「どうも」
「お嬢様!? そ、その姿は!?」
当然護衛騎士が私の成長した姿を見て驚きます。
「ジェダイトさん、うちの護衛騎士達にも説明が必要ですね」
「そうですね」
護衛騎士には洗いざらい話した。全てはお父様を目覚めさせる為なので、しぶしぶ納得はしてくれた。
「しかし、公爵様のお為とはいえ何もお嬢様がそんな危険な役割りを……」
「全く関係ない人にさせるよりはマシです」
「お嬢様の献身がケーネスト様に届きますように……」
エルシードの護衛騎士のその言葉に私は、
「ありがとう」と、お礼を言ってから、かの土地、リカータへ向かう事になりました。
諸々バレるといけないので、別の神殿の転移ゲートからです。




