犯罪者と呪いの笛③
脚に風を纏い空を飛んでいる魔風団の頭は、ドワザート王国の王都がある砂漠内に差し掛かると、遠目に王都が写った。
「もうすぐだ。待ってろドワーフの王。最初はお前だ」
不敵な笑みを浮かべる頭の頭上に、一人の人影が背後から跳んできた。
「追いついたぞコラァァァ!!」
「あ?」
頭が頭上を見上げると、ガクラが風の属性力を纏わせた大剣を振り下ろし、大剣から放たれた風で頭は砂漠に叩きつけられた。
「ぶわっ!?」
ガクラは砂漠に着地すると、魔風団の頭は砂の中から出てきて口に入った砂を吐き出す。
「ぶへっ! 何だテメェ!?」
「お前等をぶっ飛ばしに来た冒険者で~す」
「っ!? テメェは……光族の!? よりにもよって……」
「ちなみに俺達の他に来たのはSSランクのパーティーだ。もう諦めて自首しな」
「ここまで来て、諦めるかよぉ!!」
頭は長剣に風の魔力を乗せてガクラに向けると、小さな竜巻を起こした。
「諦めが悪い奴は嫌いじゃねぇが、それが悪事となれば話は別だ」
ガクラは火の属性力を大剣に纏わせて火球を放つと、火球は竜巻を打ち消しながら突き進む。
「ぐっ!」
頭は火球が命中する直前に風の魔法で空を飛んで避けると、ガクラを見下ろした。
「やっぱり力じゃ敵う訳ねぇか。……『これ』使うしかねぇな」
そう言って魔風団の頭が懐からある物を取り出した。
それは、先端に髑髏の顔が付いた不気味な笛だった。
「それが死の笛か」
「ああ。これでくたばれ!」
「させっかよ!」
今度は氷の属性力を大剣に纏わせて振り、無数の氷の刃を放つ。
頭は氷の刃を避けながら耳栓を付ける。
ガクラは狙いを定めて再び氷の刃を放とうとすると、足が砂に取られてバランスを崩す。
「やべっ!」
(今だ)
チャンスと捕らえた頭は笑みを浮かべ、笛の唱口に口を近づける。
間に合うかどうかの僅かな瞬間。ガクラは大剣を構えたその時。
一発の魔力弾が魔風団の頭に向かって飛び、頭の背中に命中した。
「どわぁぁぁ!?」
魔力弾が飛んできたガクラは見ると、その先には魔法銃を構えたダンガンが目に映った。
「咄嗟に狙いを定めたが……上手く当たったようだな」
ダンガンは安堵の息交じりに煙管の煙を吐く。
死の笛を手放してしまった頭は笛に向かって手を伸ばすと、跳び出してきたメイトが剣で死の笛を真っ二つに斬った。
「なっ!?」
仰天する頭の胴体にアスレルが鞭を巻き付けると、砂漠に向かって叩きつけ、続けてウルファーが腹に向かって蹴りを入れ、魔風団の頭は砂の中に埋もれて気を失った。
「ありゃ? 終わったか?」
ブラーク、カゲキリ、サシェも合流し、遅れてダンガンも合流した。
「ああ。とりあえず、依頼は完了だな」
「完了だな、じゃないわよ。一人で突っ走って」
「良いじゃねぇか。どうせコイツが死の笛持ってたんだし。急いだ方が良かっただろ」
ガクラは縄で縛られている魔風団の頭を指差すと、メイトは真っ二つになった死の笛を拾う。
「笛から感じた嫌な気配は消えたし、もう大丈夫だね」
「あの結界も消えてるだろうし、戻って廃屋敷の犯罪者共も捕らえておくか」
「あ~、それもあんだったな」
ガクラはダルそうな顔で頭を掻き、廃屋敷へ戻る。
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廃屋敷にいる魔風団を全員縛り上げた後、ドワザート王国の王都へ行き、衛兵に魔風団を引き渡し依頼を今度こそ完了した。
魔風団は全員地下牢へ投獄され、真っ二つに斬られた死の笛は研究材料にしたいからと、王立研究院に渡した。
そして報酬を貰った俺達だが……。
「んじゃあ、人数が多い俺達が七。お前等が三な」
「何言ってんだ。俺達は今あんまり金が無ぇの知ってるだろ。だからここは均等に五:五にしろ」
「俺等だって土地やら屋敷やら買ったりで金が結構減ったんだ。人数も考えると七:三の方が割に合う」
報酬の分け前をどうするかで言い合って30分。
結局じゃんけんをしてブラークが勝ち五:五で分ける事になった。




