魚人族領④
「……んで、一応明日には王都までの船が出せそうらしいんだ」
王都への発着所で一夜を過ごす事にした俺達は、クレン達と連絡を取っていた。
『思ったより足止め食らってるみたいだな』
「そうなんだよ~。もうマジで勘弁してもらいてぇよ」
「そうよね。そっちはどう? 今何処?」
『こっちは明後日には人間の王都に着きそうだ』
「明後日!? そんなに差が出来ちまったのか」
「……しょうがない。列車で行こう」
メイトが言い放った案に俺は「は?」と声を漏らす。
「魚人族領の王都から人間の王都までなら、列車で二日程で着くらしいから、明日王都へ行けたら列車に乗ろう」
「列車か。速くて便利そうだし良いな」
「意外と列車賃は安いみたいだから金の方も問題無いね」
「おーい。列車だと俺酔っちま――」
『じゃあ二日後に人間の国、ヒュルマノ王国の王都で』
『そこで合流して情報共有。アスタラードの問題はどうするか考えるか』
「うん。それじゃあ二日後」
『おおっ』
「おい! いい加減俺の話を聞け!!」
――――――――――――――――――――
「次の列車は一時間後だって」
何事も無く王都に俺達は無事着いた。魚人族領の王都って、人口の島の上にあるんだな。
王都の駅に入り時刻表を確かめると、丁度二分程前に出発したばかりで、次に出るのは一時間後だ。
「出発したばかりみたいだからね。どうする?」
「なら飯でも食ってこうぜ。朝はあんまり食ってねぇし」
エグラルの言う通り、朝はあまり食わずに王都に向かった俺達は、少し食事を取るために城下の食堂へ向かった。
「相変わらず魚料理が多いな」
魚人族の町は魚や貝など海鮮料理が多い。
俺は魚より肉の方が好きだな。
注文を終えて待ってると、俺が頼んだ料理が来た。
「お、来た来た」
俺の料理が来てフォークを手に持つと、俺の右腕が右隣りに座ってる奴の左腕にぶつかった。
「あ、悪ぃ」
「ああ、大丈夫だ」
隣に座ってる長い黒髪の人間の男に頭を下げる。
左手に食器持ってるから左利きか。
改めて料理を口にしようとすると、今度はソイツの左腕が俺の右腕にぶつかった。
「悪ぃ」
「ああ」
今度こそ口にして味わっていると、また腕がぶつかり、今度は軽く頭を下げた。
その後も食べてる最中によく腕がぶつかりだんだん苛立って来た。
そんな様子をアスレル達は食べながら呆れた様な表情で見ていると、また腕がぶつかった。
「「おい、いい加減にしろテメェ!!」」
「オメー等もう離れて座れ!」
俺とソイツは立ち上がり睨み合うと、エグラルがツッコむ。
「ほらお兄ちゃん。言う通り離れて座ろう」
俺と逆の方に座っていた、男の妹らしき薄紫髪の女が男の肩に手を乗せる。
なだめられた男は不服そうな顔で俺と一つ席を空けた椅子に座る。
「クソ。何で食事でこんなにイラつかなきゃいけねぇんだ?」
「アンタが勝手に怒ってたんでしょうが」
「……あ。そろそろ列車が出る時間だよ」
「何? じゃあ急がねぇと」
アスレル達は食事を終えて店を出ようとするが、俺はまだ食べ終えてねぇ。
「ちょっと待ってくれ。俺まだ食って……ぐえっ!?」
「何してんのよ。さっさと行くわよ、ガクラ」
メイトが勘定を済ませると、アスレルが鞭を俺の首に巻き付けて引っ張り出し、店の外まで引きずり出された。
「ったく。騒がしい奴だっ……ん?」
ガクラ達が店を出た後、男は店のドアの方を振り向く。
「ガクラ……? まさか!?」
「ちょっ、お客さん、勘定!」
男は立ち上がり店を出ようとすると、店長に呼び止められ、金を投げて渡すと店を出た。
「……いねぇ」
「列車って言ってたから駅じゃない?」
「駅は……こっちか!」
男は妹と共に駅の方へ走った。
駅に着き構内を通ってホームに着いたが、丁度列車が出発した。
「間に合わなかったか」
「そうだね。お兄ちゃん」
「ああ。……まさか、アイツ等が来てるなんてな」
――――――――――――――――――――
「おお、やっぱ速いわね列車」
「うおっ、ううっ……」
「これなら合流に間に合いそうだね」
「うぇぇぇ……」
列車の時間に間に合い、俺達は人間の国、ヒュルマノ王国の王都へ向かう。
アスレル達が窓から景色を眺めている中、俺は乗り物酔いで景色なんか楽しむ暇が無い。
「ガクラ。二日の辛抱だ。我慢しろ」
「酷い酔い方だな。大丈夫か?」
「いつもの事だから気にしねぇよ。……ん?」
エグラル達は声が聞こえた、通路を挟んだ向こう側の席に目を向けると、ドワーフ領の王都で見かけたブラーク、カゲキリ、ダンガン、サシェのSSランクパーティーが座っていた。
「よっ。ちゃんと会うのは初めてだな」
「ああ……そうだな」
エグラル達は少し気まずくなっていた。
ドワーフ領でガクラ達は一級の魔物、アイアンドラゴンを倒したのだが、それをブラークの仲間、サシェに見られていたからだ。
まだ中級冒険者のガクラ達が一級を倒した事を、変に思われているかもしれないからだ。
「二日って事は、お前等もヒュルマノ王国に向かってるのか?」
「う、うん。まぁね。『も』って事は、君達も?」
「ああ。まぁ、着くまでの間仲良くしようや」
少し気まずさがありながらも、エグラル達は「はは……」と笑う。
そんな中ガクラだけは、乗り物酔いでそれどころでは無かった。




