ドワーフ領①
「おーいお前等。これ見てみろ」
ドワーフ領を目指している俺達は、獣人族領を出てエルフ領に戻った。
そんなある日の朝、町の宿で朝食を取っていると、エグラルが手に持った新聞を俺達に見せた。
「んーっと……『冒険者ユール 王の病気を治し称賛される』。……ユールって、ネイトラーで会った奴だよな?」
「うん。僕達とほぼ同じタイミングで冒険者になってた人間の男の子だね。鬼人族に行くって言ってたけど……そう言えば、エンジェ達も鬼人族領にいるはず。今晩の定期連絡の時に聞いてみよっか」
新聞にもう一度目を通して詳細を見てみた。
病に罹った鬼人族の王。王の病気を治すのに必要なある実が生っている木に住み着いている凶悪な魔物をユールが倒し、無事に王の病気が治り称賛された。
「王に称賛されるか……。結構凄い事成し遂げたんじゃねぇか、アイツ」
「新聞に載る程だからね。記事を読む限り、あれから力を付けたみたいだね」
魔族に攫われた妹を助ける為に頑張ってるみたいだな。
これなら、万が一の時にアイツなら魔王を倒してくれそうだな。
「じゃあ、僕達も負けずに頑張ろうか」
「ったりめぇだ」
朝食を終えた俺達は宿を出て……。
「うぅぅぅぅぅぅぅ~……」
馬車に乗って町を出た。
そして俺は乗り物酔いに襲われた。
「つ……次の町まで……どのくらい……だ?」
「三日で着くよ」
「三日も……この状た……うぇ」
ヤバい……前は二日だったが……三日もこの状態が続くのは……。
途中、エチケット袋に吐きながら一日を乗り切ると、二日目の午前中、ドワーフ領の境界に差し掛かった。
「身分証をお願いします」
関所にいるドワーフの兵士に身分証を見せると通してもらい、俺達はドワーフ領に入った。
「ガクラ。ドワーフ領に入ったわよ」
「は……入ったからって、すぐに馬車が止まる訳じゃ無いだ……うっ……」
「我慢しろよ、二、三日ぐらい」
どうにか耐え続けた俺は、ドワーフ領の最初の町に着いた。
大きな谷の中にある町は、至る所から鉄を打つ音が聞こえる。
「町中からカンカン聞こえるな」
「ドワーフらしく、何か作ってるんだと思うよ。この辺りは色んな鉱石が採れるみたいだし。折角だから色々見てみよっか」
宿の部屋を取ってから、俺達は町を見て歩き回った。
流石ドワーフの町だな。品揃えが良い。
「ん? アレ、前に見たフローボートだよな?」
エグラルが指差した先には、前にエルフ領の王都で見かけた、この世界特有の乗り物、フローボートを売ってる店があった。
覗いてみると、前に見た店より種類がある。
バイクっぽい形にスケボーみたいな形がある。
……値段は相変わらず高いが。
「興味はあるがやめとこうぜ。高い」
「そうね。別に無くても問題無いし。今の所」
店を後にし町を見渡していくと、前方に町のギルドが見えた。
折角だから入るか、って事でギルドに入った俺達は依頼ボードを見る。
「これどうかな? 『ロックリザードの討伐』」
「何だ? ロックリザードって」
「体が岩で出来た三級の魔物だね。確か、鉱石を食べる魔物だから、この町にとっては迷惑だろうね」
「通りで他の三級に比べて報酬が多いわけね」
この依頼に決めた俺達は、受付に行って依頼を受理し、早速討伐に向かった。




