獣人族領④
「ん? おい危ねぇ! そこどいてくれ!!」
四人組の冒険者が一体の魔物に追われ、俺達に近づく。
だが俺が気になるのは、冒険者の方よりそれを追いかける魔物の方だな。
「なぁメイト。あの魔物は?」
「あれはタイガーレックス。二級の魔物だよ」
「二級か……。人もいるし、ここは……」
俺達は目を合わせると、クルっと振り向いた。
「逃げるか」
俺達は走りだし、冒険者達が後ろを走り、更にその後をタイガーレックスが追う。
木々の間を抜けて抜けて撒こうとするが、タイガーレックスは木をへし折りながら追いかける。
結構力強いな、タイガーレックスって。
その後もしつこく追いかけ続け、追いつかれそうになると、タイガーレックスは二本の大木の間に挟まり、動きが止まった。
その隙に俺達は走り続けて距離を取った。
「はぁ……撒いたか」
「悪かったな、撒き込んで」
タイガーレックスが追いかけてこないのを確認すると、逃げていた冒険者達と顔を合わせる。
この冒険者達は、エルフの少年、魚人族と鬼人族の男、ドワーフの少女の四人パーティーみたいだ。
「はぁ……。キルカ、ちゃんとルブの実持ってる?」
「ああ。大丈夫だ」
キルカと呼ばれたエルフの少年は、手に持っている青い実をドワーフの少女に見せる。
「ルブの実……薬の材料に使われる実だね。依頼で集めてるの?」
「いや……仲間の為だ」
「仲間……大事な仲間か?」
「ああ」
キルカの真剣な表情を見ると、俺はアスレル達に目を向けて頷いた。
「俺等も手伝っていいか?」
「え? 何で?」
「まぁここで会ったのも何かの縁って事で。……まぁ本音言っちまえば、俺達は只、仲間思いの奴が好きだってだけさ」
「う~~ん……」
やっぱ会ったばかりの奴は信用しづらいか。
すると、キルカの仲間の鬼人族の男が腕を組んでキルカに話す。
「なぁキルカ。折角だし手伝ってもらわねぇか?」
「アルバーギル」
「最近は二級以上の魔物が活発になってきてる。さっきのタイガーレックスの時の様になるかも知れねぇし、早くユアーナに届ける為にも、手を借りたらどうだ?」
「……」
「悩んでる暇は無ぇだろ? 早くユアーナの病気を治したいんだろ?」
「はぁ……分かった。確かに、今は一秒でも早く届けないとな」
キルカは頷くと、俺達に顔を向ける。
「じゃあ、手伝ってもらって良いか?」
「ああ」
俺達はキルカのパーティーと共に、材料となるルブの実を探しに行く。
ルブの実がもう少し必要らしく、俺達も探す。
ちなみにキルカの他の仲間は、ドワーフの少女はリミス。魚人族の男はジャルト。
コイツ等のランクはCからDらしい。それなら二級のタイガーレックスから逃げるな。
「仲間の一人が病気にかかって、それで医師ともう一人の仲間に任せて、俺達は薬の材料のルブの実を探しに来たんだ」
宿で見た医者っぽい男はやっぱ医師か。
ルブの実の木は日当たりの良い場所に生るらしい。
となると、日差しの当たる場所にありそうだな。
「どのぐらい必要なんだ? ルブの実は」
「五個ほど必要だって医師に言われた。あと二つなんだけど、今時期外れだからあんまり実って無いんだ。それにルブの実を食べる魔物もいるから余計に見つからない」
「もう四時間も探してやっと三個だからな」
随分苦戦してるみてぇだな。
それと、さっきから襲ってくる魔物と戦って思ったが、キルカかなり強いぞ。
剣を二本背負ってるくせに、さっきから一本しか使ってねぇ。一体二本目使ったらどれ程になるんだ?
「ねぇ。あっちに大きく日が射してる場所がある」
「ん~……?」
アルバーギルが目を細めてフォクサーが指差した先を見ると、望遠鏡を取り出して見た。
「あんな遠い所、よく見えたな」
「目が良いんだよ。行ってみようぜ」
「ああ」
俺達は進むと、フォクサーが言った通り、日当たりの良い開けた場所に出た。
そこで俺達は、青い実が生ってる一本の木を見つけた。
「あれは……間違いない。ルブの実だ」
「丁度二つ生ってる。これはラッキーね」
「良かったな。……まぁそれより俺は、あの木の下で寝てる奴が気になるんだが」
俺達は木の下で寝ている、全身に無数の棘が生えている緑色の大きな蜥蜴の魔物に目を向ける。
「あれはイバラトカゲ。口からは毒素のある炎を吐き、体の棘に毒がある二級の魔物だ」
「二級か……面倒なのが厄介な所で寝てるな」
「どうにか起こさずにルブの実を手に入れたいな」
CランクとDランクのコイツ等だとキツそうだな。
俺等だけなら大丈夫だが……正直コイツ等に見られるのはなぁ。
特にキルカは実力も高いだけじゃなく知能も高いっぽい。
また変に怪しまれるのは御免だな。




