表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
38/255

ダンジョンを紹介しよう

「この前は助かったよ、有難う!」


「もうお礼は聞いたんだから気にしなくてもいいのよ?」


「いや、そうはいかない。我々悪魔族は礼を持って礼を返す一族なのだ」


 レンを捕らえてから数日後、悪魔族のディスパイルがアイリの元を訪れていた。

訪れた理由は、レンを捕らえるのに協力してくれたので、そのお礼を言いに……というのが建前。

本当の理由は……、




「堕ちてますね完璧に」


「うむ。また(しゅ)は男を堕としてしまったようだの」


 ディスパイルは17歳の少年でアイリとは年齢が近い。

そのディスパイルがアイリに対して恋心を抱いたのは自然とも言える。

 そう、レン捕縛の礼を建前にアイリに会いに来たというのが本当のところだ。

 勿論、本心から礼を言いに来たというのも間違いではないが、心の比重で言うと、レン捕縛が3割でアイリに会いたかったが7割という感じだろうか。


「この場合はどう表現すればいいのでしょう? 天使の場合は堕天使、では悪魔の場合は……堕悪魔?」


「寧ろあのディスパイルとやらの気持ちが舞い上がっておるから、昇悪や昇魔で良いのではないか?」


 口々に勝手な事をぬかす2人だが、アイリ達には聞こえないように小声で話していた。


「あ、何か上手いこと言って握手してますよ」


「ほう、あの男、中々やるではないか。さて、どこまで攻めるのかのぅ?」


 と、アイカとアンジェラはその後の展開に期待したが、あっさりと終わってしまった。


「あぁ、大人しく帰っていきますね……」


「むぅ、もっとこう【俺に付いて来い】くらいの勢いが出せんものかのぅ」


「まだ2回しか会ってないのに、そんな事言われても付いてく訳ないでしょ?」


「いやいや、そんな事はありません。お姉様は積極性が皆無ですから、相手から……あ」


「そうだの。逢い引きとは男がリードするものであろ……う」




「……で、2人はここで、な・に・を・してたのかしら?」


 アイリとディスパイルの様子を見て……もとい、デバガメしてた2人の正面には、いつの間にかアイリが腕組みをしていた。


「何をとは心外じゃ。(しゅ)を護る事が眷族(けんぞく)たる妾の務めであろう?」


「そうですよお姉様。あの男がお姉様に手を出さないように、見張っていたのです」


「そう。なら仕方ないわ。そのままお昼御飯無しで見張っててちょうだい、もう帰っちゃったけど。」


「「すみませんでした!」」


 アイリに胃袋を管理されてる2人は、華麗なる土下座を決めたのであった。






 それから次の日、また次の日と通い続けるディスパイル。

そろそろ会いに来る理由が苦しくなってきたのではと、様子を見ていた眷族達は思っていた。

 そんなある日……。




「ダンジョンの紹介?」


「ああ。ダンジョン通信では定期的にダンジョン内部を紹介する企画が発生するんだ。」


 何とかそれなりにアイリと親しくなったディスパイルが言うには、ダンジョン通信を利用してダンジョンを紹介する催しがあるらしい。

 だが次に紹介するダンジョンはまだ未定で、幾つかのダンジョンに候補を絞っただけだという。

そしてその候補の1つがアイリのダンジョンであるため、ディスパイルとしてはアイリと一緒に出演して親密度をアピールし、他のダンジョンマスターの男を近付けないようにしようという試みなのである。


「中々面白そうな企画ね」


「そうとも! これを機にアピール出来ればダンマスルーキーとしても箔がつくし、出演料としてDPも支払われる。そして悪い虫も寄り付かなくなる!」


 アイリの感触が良さそうなので、心の中でガッツポーズしたディスパイルだが、最後に余計な事を言ってしまう。


「悪い虫?」


「い、いやぁ何でもない、こっちの事だ」


 つい口が滑ったディスパイルは慌てて誤魔化した。

アイリは深くは気にしなかったので何とか落ち着いたようだ。


「……コホン、兎に角どうだろう、今決めてくれれば高い確率でアイリのダンジョンに決定すると思うんだが?」


「うーーん、そうねぇ……」


 考え出したアイリを前にディスパイルは内心ハラハラしていた。

それというのもディスパイルがアイリのダンジョンに訪れる理由がほぼ無い為で、これを逃すと完全に動機が無くなってしまうのである。

故に、心の中では是非決断してほしいと願っているのである。

 するとそこへ、思わぬ援護射撃が発生した。


「良いではありませんかお姉様。この素晴らしいダンジョンを、ほかのダンジョンマスターに知らしめてやるのも一興ですよ」


「そうだのぅ。ここらで大々的に存在感を出してやるのもいいのではないか?」


「そうですぜ姉御、他人(ほか)のチンケなダンジョンとの格の違いを見せてやりやしょうぜ!」


 アイカ、アンジェラ、モフモフと、眷族達による賛成一色の声にディスパイルの内心は空高く舞い上がる。

後はアイリの了承だけだ!




「うん、分かった。別に拒否する理由はないし、紹介してもらいましょ」


「ありがとう! 日時が決まったらまた連絡するよ!」


 こうしては居られない。

ディスパイルは後押ししてくれた眷族達に内心感謝し、善は急げの如くアイリのダンジョンを後にした。


「さて、出演するって決めたし、みんなで街をもう一度チェックしてみましょ」


「ほぅ、(しゅ)も乗り気じゃのう」


「まぁね。折角ダンジョンの中に街を作ったんだし、見てもらわないと損かなって」


 どうやら案外乗り気らしいアイリは眷族達を集めて街のチェックに取り掛かった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 それから10日後。

 ディスパイルの気迫に圧された運営はアイリのダンジョンを紹介する事に決定し、ついにその当日となった。




「皆さーん、こーんにーちはー! 突撃、隣の()ダンジョンの時間でーす! リポーターはわたくし、天使族のアズラでっす! 宜しくお願いしまーす!」



 以前ダンジョン通信の運営……というかディスパイルからの取材の打診があって、今日はその取材日。

 なんでも、ダンジョン通信でダンジョンを紹介するコーナーがあり、そこで紹介されるのだとか。

 ダンジョンを知らしめる良い機会だって事で、眷族の後押しもあり出演を了承したのよ。



「それではですね、まずは今回ご紹介するダンジョンのダンジョンマスターを紹介したいと思います…………はい、こちらがダンジョンマスターのアイリちゃんでーす!」


「ど、どうも、アイリです」


「う~~ん! 黒髪にポニーテール、それにちっこくて可愛いですね~っ! 頬っぺたツンツン♪」


「ちょ、ちょっと、頬っぺたじゃなくて、ダンジョンの紹介でしょ!」


「おおっと、そうでしたそうでした、こいつはうっかりだ♪ それじゃあダンジョン内部の紹介に移りましょ~ぉGOGO!」


「ちょ、ちょっと引っ張らないで……」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



アイリのダンジョン(仮)


1階層:洞窟エリア

2階層:森林エリア

3階層:沼地エリア

4階層:鉱山エリア

5階層:街

6階層:闘技場エリア

7階層:海エリア

8階層:遺跡エリア

9階層:雪原エリア

10階層:???

11階層:墓地エリア及びモンスターハウス

12階層:火山エリア

13階層:砂漠エリア

14階層:深海エリア

15階層:平原エリア

コアルーム


1階層:洞窟エリア

 オーソドックスなタイプの洞窟ダンジョンで、横に洞穴を掘った感じの通路が奥へ続いています。

 当然そのままだと真っ暗なので、所々に松明が灯されています。

 途中で分岐点も有り、ただの行き止まりだったり、宝箱が置いてあったりします。

宝箱の中身は開けるまで不明。

 最初のエリアという事もあって、罠の類は無し、モンスターもGランクしか出ません。

冒険者に対して、かなり安全に配慮されています。

 ボス部屋に配置されてるのは、Gランクのジャイアントラットが10匹です。

 これを撃破すれば2階層への下り階段と、ボス撃破の報酬として宝箱が出現します。


2階層:森林エリア

 緑豊かな森林が広がってます。

 このエリアのモンスターもGランクしか出現せず罠も無いため、初心者でも安心安全であると言えます。

 茂みや木の根元に宝箱が設置されてる事もあり、ちょっとした探検気分を味わえる仕様。

それら以外の場所にも宝箱が有ったりする……らしいです。

 かなり広いので、迷子にならないように注意が必要です。

 昼夜があり、夜になると真っ暗になります。

 ボス部屋に配置されてるのは、Gランクのブッシュラビットが30匹です。

 これを撃破すれば3階層への下り階段と、ボス撃破の報酬として宝箱が出現します。


3階層:沼地エリア

 草原と森林と所々に沼地があるエリアです。

 ここにはGランクとFランクのモンスターが出現します。

 ここも昼夜があり、足場が悪い場所では足下に注意した方がいいでしょう。

 それから、Eランクのリザードマンも出現しますが、こちらから手を出さない限り襲ってきません。

ですが手を出してしまうと、地獄の果てまで集団で追いかけてくるので、ある意味最大の罠です。

 その代わり、通常の罠はありません。

 ボス部屋に配置されてるのはEランクのダートヘッジホッグが1匹です。

 これを撃破すれば4階層への下り階段とボス撃破の報酬として宝箱が、沼地のど真ん中に出現します。

少々意地悪です。


4階層:鉱山エリア

 石とか鉄とか更には金とかが出る可能性がある山がいっぱいあるエリアです。

出現モンスターはGランクからEランクまで幅広く出現します。

 罠は有りませんが昼夜があるので、視界の悪い夜に崖から転落するとかなり危険です。

ボス部屋に配置されてるのは、ゴブリンファイター5匹、ゴブリンアーチャー3匹、ゴブリンナイト1匹、ゴブリンウォーリア1匹のゴブリンパーティです。

 これを撃破すれば5階層への下り階段と、ボス撃破の報酬として宝箱が出現します。


5階層:街

 この階層は全体がセーフティーエリアになっており、モンスターも罠も無いエリアです。

 色んな店があり、自由に買い物や飲食が出来ます。

 勿論昼夜もあります。

ただし、間違って警備中の自動人形(オートマタ)を攻撃してしまうと大変な事になります。

 ボス部屋は存在しており、Cランクのクレイゴーレムが1体配置されてます。

 これを撃破すれば6階層への下り階段と、ボス撃破の報酬として宝箱が出現します。

 尚、街に関しては、別のレポートで詳しくまとめさせていただきます。


6階層:闘技場エリア

 ここからが本場です。

これより先の階層は、侵入者を拒む造りになってるので、まさに命懸けです。

なので、このエリアに侵入しようとした際に、これより先は命の保障はしないと警告を出すようになってます。

 さて、肝心の中身の紹介です。

 このエリアは他のエリアとは少々仕様が異なっており、罠や雑魚モンスターは一切出現しません。

昼夜もありません。

 その代わり対戦相手を5回撃破すると、7階層への階段が出現します。

宝箱は出現しません。

 対戦相手は割と強いらしいです。


7階層:海エリア

 大海原が広がる海のエリアです。

出現するモンスターもDランク中心のEランク以上となっており、完全に殺しに来てます。

 昼夜は有りで、海底や砂浜に宝箱が埋まってることがありますが、間違ってモンスターを掘り起こしても、当ダンジョンでは一切の責任を負わないものとします……だそうです。

 海のどこかにボス部屋があるらしく、ボス部屋に辿り着き、ボスを撃破すると、8階層への下り階段とボス撃破の報酬として宝箱が出現します。

ボスモンスターは秘密だそうです。


8階層:遺跡エリア

 アンティークが発掘されそうな古代遺跡のエリアです。

 モンスターはEランク以上が出現し罠も大量に有ります。

 昼夜は有りません。

 遺跡の奥深くにボス部屋が有り、ボスを撃破すると、9階層への下り階段と宝箱が出現しますが、この宝箱は実は罠だったりします。

ボスを撃破させておいて、油断したところに宝箱の罠とはかなり鬼畜です。

 ここもボスモンスターは秘密です。


9階層:雪原エリア

 雪景色が広がる雪原です。

 出現するモンスターはGランクからDランクまで出ますが数は少数のようです。

 その代わり、虎ばさみや落とし穴の罠が有る上に、気温が常に氷点下を下回っているので、長時間の滞在は大変危険です。

 昼夜は有りますが、夜になると吹雪が発生します。

 ボス部屋にいるボスを撃破すると、10階層への下り階段と宝箱の代わりに落とし穴が出現します。

 ボスは案の定秘密です。


10階層:???エリア

 ここに関しては一切が秘密との事です。

 いったい何が存在するのか興味がありますが、教える事は出来ないようなので何も伝えられません。

 唯一言えるのは、ここを素通りして11階層へ進む事が出来るという点ですね。


11階層:墓地エリア及びモンスターハウス

 禍々(まがまが)しさを感じる墓地のエリアです。

 有りとあらゆるアンデッドモンスターが侵入者に群がります。

 所々に建物が有り、この中の(いず)れかがボス部屋となってますが、他のエリアと異なり、ボス部屋以外の建物に入った場合、モンスターハウスとして起動します。

 モンスターハウスとは、大量に発生したモンスターを全て排除しないと出られない大部屋です。

 昼がなく、常に夜の状態です。

 ボス部屋のボスを撃破すると、12階層への下り階段と宝箱が出現します。

 今度の宝箱は本物です。


12階層:火山エリア

 あちこちで火山が噴火してるエリアです。

 気温が何度なのか不明ですが、とても暑くて長時間居られません。

 ここでは竜種のモンスターが襲ってきますので、生きた心地はしないでしょう。

 昼夜は有りで、罠は無しです。

 どこかの火口の中に、ボス部屋があるそうです。

 それって絶対に辿り着けないと思うんですが……コホン、で、ボスを撃破すると、13階層への下り階段と宝箱が出現します。

 ボスは秘密ですが、ボス部屋に辿り着ける存在はいないと思うので、気にしなくてもいいでしょう。


13階層:砂漠エリア

 見渡す限り砂漠です。

 毒を持った蛇や(さそり)、大型のサンドワーム、更にグリフォンが襲って来ます。

 昼夜は有りで、昼は暑く夜は寒いので、とても長時間いられないでしょう。

 更に蟻地獄の罠も有ります。

 この砂漠のどこかにオアシスが有り、そこがボス部屋となってます。

 ボスを撃破すると、14階層への下り階段と宝箱が出現します。

 ちなみに、オアシスに見える蜃気楼の罠も有ります。


14階層:深海エリア

 深い海の中です。

 人魚とかじゃない限り突破出来ないと思うので、説明は省きますが、多数の凶暴な魚類と、魚雷?と呼ばれる罠が有るらしいです。

 昼夜は無く、宝箱も有りません。

 どこかにあるボス部屋のボスを撃破すると、15階層への下り階段のみが出現します。


15階層:平原エリア

 見晴らしの良い平原が広がるエリアです。

 ここまで来ると総力戦です。全てのモンスターと眷族(けんぞく)達が、ダンジョンマスターとダンジョンコアを護るために立ちはだかります。

 ミサイル?や地雷?という罠が有るらしいです。

 昼夜は有りますが、気にしてる余裕はないでしょう。

 ここのボス部屋に居るボスは不明で……え?いいんですか!?

 ……えーと、ここのボス部屋に居るのはSSS(トリプル)ランクのバハムート……え、マジですか!?

 これ絶対無理でしょ!

 あ、いや、確かにコアルームまで来られないようにする必要はあるでしょうけど。

 ……で、バハムートを万が一撃破すると、コアルームへと繋がる扉が出現します。



「という事で、後半は街の中を中心にレポートしまーす!」


ディスパイル「ここから先は俺も同行しよう」

アズラ「……えーと、貴方は?」

ディスパイル「アイリと親しい者だ」

アズラ「そ、そうですか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ