営業マンは取った宿で仲間たちと今後の活動方針について議論をした
前回ぶつ切りになった所です。
それと、更新が思いっきり深夜となりまして申し訳有りません......。
「では改めて、今後の活動プランを考えていこう」
「賛成」
王都の宿屋『止まり木』にて俺のとった部屋に女性の二人を呼び出し、今後のプランの検討会を開く。
先に述べたように、貴族の中でも特に位の高い伯爵家の令嬢であるミシュリア。
話を聞いたところ彼女自身の見た目の麗しさに加え、俺と初めて会った時のリーシュの冒険者に対する振る舞い方から分かる通り、たとえ身分的には下の者に対しても分け隔てなくというのは王都でも同じだったようだ。
くだけた感じでやり取りするようになってからは俺の中で麗しきお嬢様のイメージが崩れつつもあったが、本性は誰に対しても気配りの出来る優しい女性である事は分かっている。
だからこそ、本来貴族様からすれば卑しい存在である『平民』がやるような仕事を彼女がやっていると、この街の住人が気後れしてしまうのではという心配がある。
加えて俺たちは住人や他の貴族諸侯からすれば何処の馬の骨とも知れぬ者。
ミシュリアほどの身分なら召使いを連れゆくにしてももっと品のある者を選んでお共に出来るだろうし、下手をすると怪しい身分という事で街の騎士団に通報されてしまう可能性もあるかもしれない。
一応そういう時のためにギルドカードという物を身分証明書として持ち歩いてる訳だが、平民の俺たちが身分証明書を出して素直に引き下がってくれるかどうか。
貴族様が『権力の前にはそんな物など何の意味も持たない。その冒険者の”ギルドカードによく似た”物など見せられた所で、我が命には逆らえる訳もなかろう』とか仰ったら、その瞬間俺たちはもう終わりである。
そんな事が起きない事を切に願うばかりだが、ここはキスト王国全ての行政府本部がある王都。
当然、日々の政治に頭を悩ませる文官の貴族様や、武官として国を守る事に尽力される貴族出身の方々がわんさかいるだろう。
つまり、ミシュリアと一緒にいるというのは身分の違いにより様々な問題が起きかねないという事だ。
おまけに・・・。
「へ? ちょっと待ってくれ。前に言ってた縁談の相手って、王都に住む『王族に近しく王位継承権も持つ』家柄のご長男だったのか?」
「そう。もし彼の下につく者に見つかったりすると、面倒ごとに巻き込まれるかも……」
「おぅのー……」
なんという問題というかアクシデントというか。
縁談を申し入れてきたお相手・・・『シュミット・”グラム”・レンドル・ジーマニード』様というお方らしいが、この方は今言ったように序列としてはかなり下であるが王位継承権を持つ人。
貴族としての付き合い上何度か顔を合わせたらしいのだが、人柄をそれなりに観察してみたが特に欠点らしい欠点は見当たらないという。
むしろミシュリアと同様、民の事を常に考え、自分の立場をきちんと理解した上で何ができるかを考える事ができたりと内面も器量も良い。
加えて、すれ違えば誰もが一度ならず二度も振り返ると言われるほどのイケメン。
「ミシュリア、今回の縁談を蹴ったのはかなり不味かったんじゃないか?」
「うーん……。私は前から家に舞い込む縁談は片っ端から蹴ってきたから、その辺の事を鑑みて縁談が成立することはハナから期待してなかったって聞くよ」
「そう思いながらも縁談を申し込むっていう時点で、向こうはミシュリアに気があるって事じゃないのか?」
「うーん……???」
「まあ、そんな他人の想いの事で悩んでたって仕方ない。この状況を考慮した上で、俺たちはどう動くかを決めるわけなんだが。ミシュリアとリサにもう一度確認したい」
俺は二人の目を交互に見てから、一呼吸置いて口を開く。
「俺はこの先どのように旅を進めていくかは分からないが、確実にキスト王国を出る事だけは言える。いくら鉄道があると言ったって、一度国外に出てしまったら戻ってくるのは大変になるだろう。家族と連絡を取りにくくもなる。それでも、二人は本当に俺に付いてくるのか?」
最後の確認の意を込めて二人に問う。
俺の気持ちを察したのか、二人も真剣な表情になった上で俺を見返す。
しかし、二人の中では既にこう問われた時の答えは決まっていたようである。
特に考え込む事もなく、二人は交互に言葉を発した。
「そんなの決まってるんだよ? 私は一人の冒険者としてタカヒトに付いてくからね。先輩冒険者として、一人の仲間としてタカヒトと一緒に支えあっていけたらって思う。水くさい事しようとしないでね」
俺と一緒に支えあっていけたらと来たか。
聞く人が聞けば血涙を流しそうな言葉だな。
とはいえ、彼女の心からの信頼が篭った故の言葉でもある。
その想いに応えられるよう、俺も旅人として頑張らないとな。
リサと違ってミシュリアの場合、なぜ俺にここまでしてくれるのかの理由は分からないのだが……。
本当なら彼女の身分を考慮すれば是が非でも止めるべきなんだろうけど、俺は彼女の目を見て早々に諦める事にした。
屋敷に挨拶に行った翌日に、本当に俺と共に旅をしようと準備をして待ち構えてるような女性だ。
伯爵令嬢としての振る舞いはともかく、彼女自信の本来の性格はアクティブタイプである事は分かっている。
それに彼女のこの目。
自分が本気でやるぞという事を決めたやつの、成し遂げるまでテコでも動かない感情がメラメラと瞳の奥に見られた。
理由はともかく、そこまで想ってくれるというのなら。
それを無下にするような性格はしていないからな。
「わ、私だって! タカヒトさんと一緒に付いてきますよ! 旅の仲間に私がいなければダメだって思ってもらえる様に振り向かせて見せるんですから。その前にここで切り離されるなんてされちゃ堪りません!!」
俺に恋の想いを寄せてくれているリサは、こちらもブレずに付いてくる気満々という様子だ。
彼女もミシュリアと同じようにテコでも動かないオーラがメラメラと、こちらは瞳の奥で燃えてるのではなく体から滾っている。
もともと彼女からしてみれば駆け落ちに近い形でここまで来てるわけで、今更ここで戻る意味もないだろうからな。
リーシュの街に戻った時に、リサの家族・・・特に親父さんにはボコボコにされそうな気がするが。
「……、後悔しないな?」
「もちろん」
「当たり前です」
「分かった。じゃあ、その上で。これからの筋道を立てていこう」
「はい」
「ほーい」
ということで、俺たちの活動プランを話し合った。
まず第一前提として、ミシュリアが王都に来ていることは隠していく方針とする。
上記のような面倒なトラブルを避ける為というのと、街の住人に対する心理的な配慮の二つが主な理由だ。
その上で、俺とミシュリアが主に活動資金を集める役割となる。
リサは現状ギルドの監査官という立ち位置にいるので、この街のギルドに詰めながら監査の仕事もしつつ給料も稼ぐという形をとる。
というか、監査官という立ち位置になると、俺と旅するってことは俺の目的地ってどんどん決まっていかないか?
プラプラ遊びながらその辺の街のギルドで監査官やってますー、じゃあダメだろうから。
それを聞くと、彼女からはこんな返事が返ってきた。
「監査官の仕事も、あくまで臨時雇いと言いますか。ぶっちゃけ辞めたかったらいつでも辞めてイイよっていう、体の良い事実上の追放ですから。確かに受付嬢としての仕事もやりがいはあったんですけど、特に男の人たちから感じるねちっこい視線が嫌だったんです。なので、ギルドを辞めてほしいっていうなら、いつでも監査官の辞職願も出しますよ? すぐに受理してもらえると思いますので」
「えぇっ、そんなあっさりと決めちゃって良いのか??」
「はい。それよりも、稼ぐ為のあては生きてれば幾らでもあります。職員としての籍は消されても、ギルドのメンバーとしての籍を消されるわけではないですし」
「そ、それはそうなんだろうけど……」
女子にいうのもなんだが、なんとも逞しいというか潔いというか。
あんまり受付嬢の仕事に対しては特にこだわりを持っていないようだ。
なんだかとことん俺の都合に合わせてもらってる気がして、常々申し訳なさが募るばかりである。
ともかく、そんなわけでだ。
主軸は俺とミシュリアでの冒険者としての依頼の遂行、サブでリサのギルド職員の職務遂行による銭稼ぎを行うことで、意見は一致した。
一応言っておくが、みんなで自分の口座の金を共有しようと言ったのは俺じゃないからな?
旅の仲間として、パーティーの資金は全員分のやつでまとめるべきじゃないか?と、女性陣二人が仰られたからそう従っただけである。
会費というか部費というか、そうした形で月々のパーティーの予算を捻出し、個人で使える金も持っておいた方が良いんじゃないか?と、俺なりに意見も出したのだが……。
基本的にパーティーを組み、かつメンバーが信用できる者ならばこうした形で資金を管理するのが一般的らしい。
もちろん、その場で作られた即席パーティーとか、仲があまりよろしくない所は話は別のようだが。
疑うようで悪いが、万一自分の金を持ち逃げされた場合には、彼女たちに付けた『マーク』の力がある。
最悪の場合はそれの信号を辿って取り返せば良いわけだし、安全策は取れているな。
全員分の資金をとりあえずその場に出し、現時点でパーティーの資金がどのくらいあるのかを確かめる。
金貨68枚、銀貨45枚、銅貨65枚。
この宿屋で泊まって稼ぎながら生活するのなら特に問題はないが、遠い異国の地へいずれ赴くことを考えると、どうしても少々心許なさを感じる額であった。
金貨1枚は銀貨20枚と等価、銀貨1枚は銅貨20枚と等価。
そんなこと言われてもよく分からないのが日本人の感覚だ。
何度も言うが、金は無いと困るがあっても困ることは無い。
この世界は信用貨幣ではなく本位貨幣なので、この貨幣自体に”金属”としての価値がある。
だからこそ他国でも他国のギルドでも”貨幣”として使えるのだが、うーむ。
やっぱりもう少し稼いでおかないと不安になってしまうな。
「タカヒトがそう言うのならそうしようよ。冒険者の先輩として、所々実戦の稽古を付ける時間も欲しいしさ。もちろんリサにも同じように稽古は付けるつもりだよ? 回復役も戦わなきゃいけない時はあるからさ」
「ありがとうミシュリア。明日から、よろしく頼む」
「よろしくお願いします。タカヒトさん、ミシュリア」
これにて、第一回パーティー会議は終了した。




