表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強傭兵団でこの先生きのこるには  作者: 蛇色の海
フローデ・・・イタリア語で詐欺
23/27

ソシェとレスビカとエリオとルチオとベルと

部屋とYシャツと私

日が暮れたセイジョルニの街で女二人が歩いていた

一人はメイド服を着た女

もう一人は海軍服を着た女

ソシェとレスビカは傭兵団から借りた馬に乗り

セイジョルニの街の迎賓館へ向かっていた


「あーあ今日は疲れたわ、はやく迎賓館に戻りましょうソシェ

帰ったらお風呂に入って、それからマッサージよ」

ソシェも同じように疲れていた

彼女はそれを顔には出さなかった

加えて別の事も考えていた

傭兵団にその副団長、そして突撃隊長

ソシェはコリナポルタ城では退屈していた

付き添うべき相手は海の上で海賊たちをちぎっては投げちぎっては投げしていて

城の中に残されたソシェは他の使用人達と一緒に炊事に洗濯

退屈な噂話で日々を過ごす

やれ、王様には隠し子がいるだの

やれ王女は女の子が好きだの

やれ北の果てに魔王が生まれただのどうでもいい内容ばかりなのだ


そんな中で今回の遠征は彼女にとって刺激的なものだった

初めて訪れる土地、初めて出会う人々、初めて感じる想い

そうした場所で得た刺激は彼女の普段の感覚を若干ながら鈍らせていた


「あらあら、まあまあ、もしかして王女殿下?あらあらなんでこんなところに」


声をかけてきたのは厚化粧ときつい香水の匂いがする老婦人だった

レスビカは先ほどまでのソシェとの会話のような態度を180度変えて

領民と触れ合う時の顔を用意する


「ええ、おっしゃる通りよご婦人

光栄ね、セイジョルニに来るのは初めてなのに、私の事を知っているなんて」


「そりゃあもう、数日前から王女が来る王女が来るって街中はその話ばっかりだったのよ、それに昼間すごかったわ、あの副団長とあんな風に戦えるなんて」


「ふふ、私は遊ばれていただけよ

というか、あれを見ていたの?やだ、恥ずかしいわ」


「謙遜する事ないですよお、王女殿下

久々にいいものを見れましたわ

今日はもうお帰りですか?」


「ええ、これから宿へ戻る所よ、

今日は色々あって疲れたの

よければこの辺で、、、」


「あらあら、ごめんなさい、王女殿下

引き止めてしまったみたいね

、、、よければ最後に握手してくださる?」


老婦人はそういって右手を差し出した

レスビカはにこやかな笑顔で馬から降りると

老婦人の前に降り立って差し出された手を

思い切り弾いた

彼女の顔は海軍提督レスビカに変わっていた


「、、、私と握手がしたいですって?

舐めた事を抜かすなよ下衆が

臭いの、香水の事じゃあないわ

その奥の奥、血の匂い、人殺しの匂い、どぶさらいの匂い」


老婦人はすばやく腰に手を回し隠し持った刃物の柄を握ると

レスビカの首に目がけて鋭く弧を描いた

レスビカはその手を掴んで自分の方向へ引く

そして上体を逸らしつつ老婦人の足を払った

結果老婦人は引き込まれるようにうつ伏せに倒れて顎をしたたかに打ちつけた

レスビカは老婦人を見下ろすと細剣の先を首元に突きつけた


「ロウダオって知ってる?

、、、ソシェ、辺りに仲間がいないか確認して

そして貴様、これから地獄を味わってもらう

ああ、なんで私あの時あんな事しちゃったんだろうなって

思い出しては気絶するそんな地獄だ」


ソシェは言われて舌打ちをする

チッチッチッと三度繰り返された音の反響で視界の外まで把握したソシェは

その様子をレスビカに伝えた


「周りには数人、正確な人数は分かりません

場所が明らかなのはその内2人

場所はお嬢様の正面左上の建物の屋根と右後方の路地」


レスビカは刺客のこめかみを剣の柄の角で殴って

老婦人の意識を失わせる

彼女の顔の皮膚は剥がれて中から別人の顔が覗いていた


それが済むとソシェが伝えた場所の一つ

右後方の路地へ王女自らすさまじい勢いで突っ込んでいく


「ソシェ!フォローしなさい!」


ソシェはレスビカが向かう方向へ巨大な銃を構えた

だが同時に二人の周りでぼんぼんぼんと

何かが弾けて白煙が広がる

同時にソシェの元に黒衣に身を包んだ影が飛び込んできた

ソシェは構えた銃で影の剣戟を受け止めていく


「ソシェ!大丈夫!?」


「お任せください、お嬢様、生きて捕えますか、殺しても?」


「好きにしなさい!」


ソシェに刺客の一人を任せ

レスビカは先ほど向かっていた路地へ向かって

腰の銃を取り出して銃弾を放った

銃弾は白煙を巻き込んで消えていき

どこかへあたったのかキンッと金属音を鳴らした

銃弾の軌道上の先に人影が見える

その人影は一瞬青白く発光して見えた

その光を確認したレスビカはそこへ向かって細剣を投擲する

ぎゃっと言う叫び声を確認した


「呪術使いまで用意するなんて随分と買い被られたものね!」


レスビカは細剣を投げた方向へ近づいて行き

投げた細剣が刺さった相手から引き抜く

ところで彼女はその際に剣が刺さった相手の生死の確認を怠った

それが引き起こす事体はともかく

ソシェの見立てではもう一人刺客がいるはずだ

そう思っていると大きな爆発が先ほどソシェが居たはずの場所で起こった

「そんなまさか!!」


爆発のあった場所へ駆けて行くと中から素早く人影が飛び出した

レスビカはその影に細剣で対応する

が思った以上に早い


「邪魔よ!さっさと退きなさい!」

レスビカは怒涛の連撃で相手を圧倒する

影はいったん後ろへ下がり爆発で生じた白煙の中へ下がった

レスビカは白煙の中で目を凝らしてソシェを探す

その間も刺客への意識は途切れさせない

白煙に紛れてうっすらと倒れている人影がレスビカの目に映った

レスビカはその人影に近づいて行き声をかけた

「ソシェ!ソシェ!ああ、なんてこと!ソシェ返事をして!」


ソシェは胸を真っ赤に染めて倒れていた

目を閉じて仰向けになっておりレスビカの呼びかけにも応えようとしない

二人の足元にからんからんと音を立てて導火線に火の付いた丸い玉が転がってきた

「しまった、、、」

そしてそれは大きく爆発した



―――猫をなで亭から出たエリオとベル―――

俺とベルは、いや、俺はベルをおんぶしてルチオさんの後を追いかけていた

ベルと言えば寝息をたてながら人の肩を涎で汚している

ともかくルチオさんに着かず離れず、距離を保って追跡していると彼女は細い路地へ

入っていった


一体こんな場所で何をしているんだ

俺は慎重に彼女の様子を覗う

ルチオさんは路地の出口付近でひらけた通りに目をやっていた

俺ははるか後方からその通りの様子を確認する


あれは王女殿下?それにソシェだ、、、近くには先ほど酒場にいた老婦人もいる

何やら会話しているようだ、ここは聴力に意識を集中させて、、、

急に耳に柔かく濡れた感触が伝わった

俺は思わず声をあげそうになるのを我慢する


「むにゃむにゃ、この水餃子味がしない、、、」


「やめろ、ベル!耳を噛むな!」

寝ぼけたベルが耳をぴちゃぴちゃ舐めだしている

俺はできるだけ小さな声でベルを制止して頭から離そうとぶんぶん首を振った


耳からじゅるんとベルが離れて一息ついて再びルチオさんのいる方向へ目をやると

事体は一変していた


まず先ほどと違う事はいくらかあったがその一つは

路地の先が、王女達が居た場所が白煙に包まれている事だ

次にルチオさんが青白く発光して何やら呟いている

あれには見覚えがある

チカチーの呪術によく似ていると思った


俺は信じたくなかった


だがこの状況はそれ以外他に何がある?


「ルチオさんは王女を狙う刺客だったんだ、、、」


俺は抱えていたベルを置いてきぼりにするように両手を自由にして駈け出す

路地の先の白煙の中から

ルチオさんを狙ったであろう

銃弾がこちらへ飛び込んできたので剣を使ってそれを弾いた

そうしてルチオさんの目の前へと俺は飛び出ると彼女へ問いかけた


「なんで!なんであなたが王女を狙っているんですか!ルチオさん!」


ルチオさんは俺の姿を見るとひどく驚いているようだった

そんな事はどうでもいい、彼女を止めないと!

確かに俺はひどいミスを犯した!


だけど!


おれはまだ傭兵団の一員だ!


だったら!


王女殿下を狙う輩から彼女を守らなきゃならない!


「ぎゃ!」


俺は固い決意を心の中でした後、するどい尻の痛みに思わず声を挙げた

見れば尻に細い剣が深々と刺さっている

その直後後ろで爆発音がして尻に感じる異物感は引き抜かれるように無くなった

じんじんと痛みが残る中ルチオさんが口を開いた


「フロメルの突撃隊長エリオ君ですね

邪魔ですそして勘違いです説明の時間はありません」


小柄なルチオさんはそういうと俺を無視してぶつぶつと何かを唱え続けた


「何を言っているんだ!」


俺はルチオさんに異議を唱えたが彼女は意に反さず唱え続ける

俺は意を決して彼女へ剣を振ろうと振りかぶった

すると一度後ろで爆発音が聞こえた


ここからはあまりにも色々起きすぎたので端的に説明したい

まず俺はベルに体当たりされた

私をおいて行くなとか言ってた気がする

結果俺はルチオさんに剣を振る事はできなかった

その上剣は落してしまった

次に後方でもう一度爆発が起こった

近くにいればただでは済まないレベルだ

俺の記憶が正しければ爆発が起きた場所は通りの真ん中で

さっきまで王女とソシェと老婦人が居た場所だ

爆発の影響で白煙が晴れていき凄惨な現場が見えてくると思った

だけどそのあたり一帯はまるで透明な壁で覆われたように守られていて

その中にレスビカ王女

胸の辺りを赤く染めて倒れているソシェ、倒れている老婦人

よく見ると婦人の顔は剥がれて中から別人の顔が出てきている

大体この一瞬で俺が確認できた事柄このくらいだった

そうしてベルに抱きつかれている俺にルチオさんは歩み寄り、話しかけてきた


「エリオ君、手伝いなさい

王女殿下は刺客に狙われています

今は何とか100ミリ術式防御壁が間に合ったからよかった

だけどまだ近くに刺客がいます

今から私は別の術式を発動させます

それまで王女と、私、ついでにベルも守ってください」


こいつ!王女を殺しそびれたからって言い訳しやがって!

偶然だかよくわからない透明な壁のおかげで王女達が助かった事を利用したんだ!

もう躊躇ってはいられない

俺はベルを払いのけると

ルチオさんの顎に鋭く右フックを放った

彼女はぐるんと白目を向いて倒れる

そうして王女達を覆っていた透明な壁はふっと消えた


おや?

そういえば誰があの壁を作ったんだ?

ルチオさんが倒れたら消えたけど?

王女の周りに1人、全身に黒衣を纏った人物が現れた


「レスビカ・パゾシコジリオ・コリナポルタ、、、

恨みは無いが死んでもらう、、、

そこのお前、、、

誰だかしらんが防御癖を破ってくれたな、、、

お前の命だけは助けてやろう、、、」



ああ、やっぱりルチオさんがあの壁を作ったんだ!

なるほどね合点がいったよ!


それどころじゃない

黒衣の人物は女性の声でとんでもない言葉を言い放った

その言葉で王女殿下はこちらの存在に気付く


「あなたフロメルの、、、

ふふっ全然気づかなかったわ

まさかあなたが暗殺団の一員だなんて

血の匂いまで完全に消して、、、

だけどこれで終わりと思うな下衆

今から貴様ら全員血祭りにあげてやる

死んだ方がマシと思うまで痛めつける」


まずい、完全に誤解された

、、、俺が何をしたんだ

思えばここ数日は最悪な毎日だった

確かに今回の視察で俺は何も役に立たなかった

傭兵に訓練は必要なかったし

血のりチョッキのせいで

王女殿下にフロメルのやっている事に気付かれた

王女のパンツを脱がしてアルメルの副団長を殴って気絶させて


今度こそだ

今度こそ俺は、、、


状況を分析する

王女がいる

ソシェは倒れている

ルチオさんは倒れている

ベルは酔っぱらっている

刺客は1人

俺は動ける

酒による体の火照りは若干だ


俺は全力でその場から跳ねた

ベルは丁寧に体から引き離した

俺の全力に反応できたのは刺客だけだ

王女殿下でさえ俺が居た場所を見据えたままだ

俺の動きに反応した刺客はやっと腰にある短刀を手につかんだ

俺はその時すでに刺客の間合いにいた

刺客を近くで見ると随分華奢に見えた

だが髪は男のように短く

胸は男のように平たかった

まあどうでもいいか

そろそろ短刀を俺に向けてきそうだ

俺は太ももに蹴りをいれた

ただの蹴りじゃあない

威力65535のローキックだ

刺客の体は浮き上がり

空中浮遊しているようだ

俺は太ももを蹴った足を天高く上げて

未だに宙に浮く刺客に向かってかかとを打ち降ろした

どごんと音を立てて地面に刺客は叩きつけられる

かはっと嗚咽を漏らして刺客は動きを止めた

俺は周囲に意識を集中させる

よし他にこの場で王女を狙う奴はいない

刺客は、、、白目を向いている

俺は一拍おいて普通の速度で振り向いて

王女殿下に呼びかけた


「王女、誤解です俺は味方です

大丈夫です!刺客は俺が倒しました!」


そうして振り向くと王女は銃をこちらに構えていた

ソシェもいつの間にか馬鹿でかい銃をこちらに構えていた

ああ、あれは血のりチョッキだ

傭兵団の、耐衝撃使用の、、、

って事はソシェは無事なんだ

よかったよかった

そしてルチオさんも目覚めていた

そして体を青白く発光させてぶつぶつと何かを唱えている

彼女の頭の上には触れたら即蒸発してしまいそうな

赤くめらめらと燃えたぎる火球があった


「術式四尺火球、相手は死ぬ」


「いや、あの今刺客倒したんですけど」


「だから何なの、あなたはとても信用できない」


ああ、ダメだ、王女も副団長もみんな完全に警戒している

そりゃそうだ、散々アホやらかしたんだから

今更どうにかなるもんじゃあないんだ


俺は静かに目を閉じた



ルチオさんが唱えている内容1


「めっちゃ王女の守る壁めっちゃ王女守る壁めった王女守る壁壁壁壁すごく強い壁めっちゃ王女まもる」


「めちゃくちゃでかい火の玉 相手は死ぬ死ぬ死ぬ死ぬでかい火の玉で相手は死ぬ」


術式四尺火球

新潟県片貝祭りでは日本最大の花火4尺玉が上がります

あまりに大きさに空に広がる火も歪です

もはや花火と言うより大爆発です

その結果爆音と共に爆風が全身を襲います

そんな感じの火の玉です


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ