エリオの作戦
―――レスビカ王女が副団長と戦う日より三日前―――
「パターンを作ろう」
「パターン?」
俺とベルとフロメルの傭兵とアルメルの傭兵がペイシュパルデ平原にいた
そこで俺は王女殿下の視察に備えてベルやチカチーと作戦を練っていた
「殺陣を使うんだ」
「たて?」
「たてのパターンを作って傭兵団にそれをやってもらう
その中でベルとかチカチーには普通に戦ってもらう」
「たてのパターン」
「そして今回の王女に傭兵団の秘密をバレナイようにしよう作戦
の秘密兵器 トマトチョッキだ」
「トマトチョッキ」
「トマトチョッキの材料は
トマトと豚の腸そして薄手の布」
見た目は凸凹しているタンクトップのようだった
黙って聞いていたチカチーがようやく作戦会議に参加する
「チカチー全然意味が分かんないんだけど(゜ヘ゜)?」
「よしチカチー俺の体を切り付けろ」
言葉より行動で示した方が早いだろう
俺がそういうとチカチーは予備動作0で頭をかちわりに来たので
半歩後ろに下がり首から下の胴体に棘付き星球を掠らせた
すると間合いを計り間違えたか、スプラッタ映画のように
赤い液体が噴出した
「いやあああああああエリオ!!しっかりして!大丈夫私が絶対助けるから!チカチー!貴様!四肢を切断して豚の餌にしてやる!!」
「ベル、落ち着け俺は何ともない、チカチーお前殺そうとしただろ
そこまでしなくていいんだ、そしてもう切り付けなくていい」
ベルは鬼のような形相で剣を抜き、チカチーは手を休めずに切り付けてくるので、急いで諭す
「その豚を焼いて食ってそれからえーと
あれエリオ!?何ともないの?」
ああ何ともないよといいながらチカチーの星球を抑え込む
観念したか、動きを止めるチカチー
「切り付けろって言ったのはエリオお兄ちゃんだよ!
けど止めろと言われたから止めるよ!
チカチーは言う事聞くんだよ(@`▽´@)/!」
二人が落ち着いた所で俺は説明を再開する
「いいかベル、俺はチカチーの攻撃に当たっていない
実はトマトチョッキをすでに着ていたんだ
トマトチョッキに少しでも掠れば
今見たように大怪我に見える
だがもし間違って本当に攻撃に当たれば怪我をするだろう
ベルやチカチーならともかく一般の傭兵達に戦場で紙一重で
攻撃に当たる技術なんてそうそうない
だからパターンを組んで、ある程度したら倒れたり、退却してもらう」
想像以上に勢いよくトマト製の血のりが飛び出て
俺も驚いたが、この見た目であれば
戦場を偽装するには十分な迫力があるだろう
「そのパターンって何種類ぐらいあるの?」
「攻撃と防御、各3つもあれば十分だろ
攻撃は突き、袈裟切り、逆袈裟 横切り
防御は盾で受ける、 小手で受ける 横に避ける 後ろに避ける 剣で受ける 切られた振り、倒れる振り
こららを組み合わせて流れるような動きを作る」
「なんか面倒じゃない?遠方からの視察だったら普通にやっててもなんとか
なるんじゃあ、、、」
「ベル、お前普段から周りの様子をちゃんと見てるか?ロランと、、、そこ背の高い男!名前は?
、、、コレンか、ロランとコレン、ちょっと適当に戦ってくれ」
急に声をかけられたロランはええ?と言う顔をしながらもしぶしぶ前に出てきて構える
背の高い男コレンも前に出てくる見るからにやる気がなさそうだが
一応構えはとっていた
「よしはじめっ!」
俺が声をかけると二人はそれなりに戦って見える勝負を演じだした
あれ、、、以外としっかりしてるな、、、近場で見ているのに
まるで本気の殺し合いだ、、、普段あんなにやる気ない癖に、、、
どうやってベルを納得させよう
「あんまり問題なさそうだけど」
「ああ、うん、えー、、、まあ、ほら、よく見ると
どちらも決定打がない
だからこのトマトチョッキが役に立つ」
「そのチョッキはともかく、殺陣だのパターンだのはいるの?」
いらないかも、、、と思ったが認めるのは面白くない
「いいや、ベル、もし戦場で頭が真っ白になった時
パターンを組んでおけば棒立ちにならずすぐに戦闘に戻れるだろ?
やっぱり必要だよ」
「頭が真っ白になったらパターンも忘れちゃうんじゃあ」
俺は頭が真っ白だった
傭兵団を集めて訓練して戦場を劇場に見立て
傭兵を舞台俳優に仕立てようと言う作戦は必要ないのか?
苦し紛れに俺は全員での予行演習を提案し実行したが
これがまたどの傭兵もハリウッドのファンタジー映画びっくりの動きで
特にチカチーとベルの勝負は見ているだけでアドレナリンが出そうだった
「隊長さんよ、このままだとあちこち新しい戦場探さなきゃいけないんだろ?そりゃ俺らも真剣になるってもんよ、まあいつもは体力温存していたって事で大目に見てくれやひゃっひゃっひゃ!!」
「今いる連中もみんな付き合い長いからね
新人でも動きが悪い奴はいないし、やっぱりパターンはいらないわよ」
「正直覚えるのめんどくさいよお兄ちゃん( ̄。 ̄)」
なるほど、うんなるほど、そういう事ね
ここで俺が現代知識を駆使して
うまい事活躍すると思ったらそうじゃないのね
いや、まだだ
まだトマトチョッキが残っている
これだけで大分迫力が違うはずだ
「あとそのトマトチョッキだけど、ようするに血のりよね?
普段はあんまり使わないんだけど陣営地の倉庫に似たような物があるわよ
せっかくのトマトなんだからちゃんと食べて消費しましょうよ」
あるのかよ!血のりもあるのかよ!
・
・・
・・・
俺はそれから3日間特に目立った活躍はしなかった
やる事と言えば 朝の朝礼ぐらいで
普段遊んでいるのにこういう時だけ真面目な傭兵団に
特に指摘する部分もなく、パターンだの殺陣だのは心の中にしまう事にした
、、、傭兵団が元から持っていた血のりはとてもリアルでトマトより迫力があった
なので王女がやって来る前日にトラットリアさんに発注した大量の豚の腸とセイジョルニで採れたたくさんのトマトを使ってトマトソースのモツ煮込みを作った
これが大好評で、さすが突撃隊長だとかやっぱり突撃隊長の仕事にぬかりはねぇやだとかたくさんの賛辞を受けた
そこかよ!料理が褒められるのかよ!だったら今度から何かあったらひたすら飯でも作ってるよ!
そうしてふてくされながらも
俺は次の日何事もなかったかのように会食に出向いたのだった
―――副団長と王女の勝負の最中、ペイシュパルデ平原―――
ペイシュパルデの平原に集まっているフロメルとアルメルは不満だった
今フロメルの陣営地では王女とフロメルの副団長の勝負が行われている
他の連中は露店でぽっぽ焼きを買い、酒を飲みながらその一大イベントを観賞しているのだ
「なあ視察が来るまでまだ時間はあるんだろ?
一杯やっちまおうぜバレやしねぇよ」
そんな声が上がるのは時間の問題だったし事実声は上がった
そうして実際に飲み始めてしまうのが傭兵という生き物の習性だったのだ
だが間が悪い事に一杯やっている場所へアルメル団長ジュリィと突撃隊長チカチーロがやってきた
「ばかやろう!こんな日に飲む奴がいるかよ!
、、、、俺にも一杯くれぎゃははは!」
ジュリィは受け取ったグラスを一気に空にする
「ふぅー酒は何時飲んでもうまいねぇー
、、、おまえらぁ!傭兵だろう!ちったぁやる気だせぼけぇ!」
ジュリィの空気をつんざく大号令にへらへら笑っていた傭兵達は
まるで背中に一本鉄の棒を通したかのように起立した
「よぅし!これから王女殿下がやってくる!
オメーは丘に立って合図を出せ
合図が来たらいつも通り仕事のふりよ
今日は俺も戦場に出る!
ちんたらやってる奴がいたら本当にぶっ殺す!
わかったら準備だ!ゴーゴーゴー!!!」
「チカチーもがんばるよ!ゴーゴーゴー(゜∇^*)ノ!」
ジュリィはいそいそと持ち場に着いていく傭兵達を見つめながら
腰に隠し持っていた水筒の酒を一口飲んだ
「さあて俺もたまには運動するかい」
ジュリィは肩慣らしとばかりに
背中にしょった大槌を片手でぶんぶんと振り回す
しばらく後に丘に配備した傭兵から合図が出た




