転生した直後…
ある屋敷で悲痛な嘆きが聞こえていた。
「なんで、なんでよぉ…」
その女性は肌色が白く、死んでいると思われる赤ん坊を抱いていた。近くにいる女性も目には涙を浮かべていた。
「奥様、誠に残念な事です。私にはかける言葉が見つかりません…」
どうやらこのメイド服の女性もショックを受けていた。
「うっ、ひぐっうわぁぁぁぁん…!」
大泣きをし始めた。それもそうだろう。初めて産んだ赤ん坊が死産だったのだから。しかし、泣いているとふわふわと光が窓から現れた。メイドはその光を怪しく思い、剣を構え斬ろうとしたが、質量は無く、斬れなかった。そしてそれは、赤ん坊の額に入っていった。すると、赤ん坊の頰の色は赤くなり、体温を感じるようになった。
そして、目を開けた。
母親は先程とは別の意味で泣き始めた。我が子を抱き締め、離さないと決めたかのようだった。
「アルヴ…良かった…ぐすっ」
〜〜〜
転生して目を開けた直後見知らぬ女性に抱き締められ驚いてるよ。うん。泣きながら抱きしめられてるから驚き二倍だよ。それにしても赤ん坊の体ってこんなんなのな。動きにくいし、言葉が話せない。耳もまともに聞こえないよ。目はかすれてる感じだな。慣れてきたからもうないけど。とりあえず、なんて言ったのかが聞こえないな。
「あう、あ、うぁ〜ん」
無理だ、喋れん。どうしても泣いた声にしか聞こえん。
「だ…う……よ。アル…、よし……」
女性が喋るがまだ聞こえない。耳にまだ何か詰まっている感じだが、メイドさんが近くに来て赤い光を当てると耳に詰まっていたのがき…えた?今の何ですかねー。僕気になるなー。
「これで、聞こえるはずです。内容は理解できないでしょうが…」
苦笑しながらメイドさんは自分の母に話しかける。
「愛してるわ、アルヴ。あなたが生き返って良かったわ。呪いをかけられたからかしらね?後で探して、カティ。」
「わかりました、奥様。探して後悔させてあげましょう」
メイドさんは背後に般若が見える勢いだった。母の方も笑顔に見えて相当怖い。
「あう…あーう。だぁ〜。キャッキャ」
母の服を掴みながら(というか掴むのがそれしかない)必死に動いていた。
「おや?これは「加護の証」ではありませんか」
自分の手の甲についているのを見ていた。そこはゼウスにピターっと手をくっつけられ、熱を感じたところだった。そうか、加護を渡していたのか、と納得する。
「そうね、加護持ちは祝福された証でもあるらしいわね」
「ですがその加護の証は見たことがありませんね」
「きっと特別なのよ。生き返ったのだし、神が祝福したのでしょう。そこまで神は信じていないのだけど、信じざるを得ないわね。不死の神鳥フェニックスに感謝を」
ふむ、中々に信仰があるのかな。そして問題が起きる。
…腹減った。うん、赤ん坊のご飯は知ってるよ。おぱーいからでるミルクでしょ?そこはどうでもいいんだ。問題は、この母、途轍も無く綺麗なのだ。だが、食欲に勝てるわけも無く赤ん坊の体は泣き出す。止めようとしても無理だった。
「う…うわあぁぁぁん!」
「え、ちょっと、どうしたらいいの?」
「おそらくお腹が空いただけです。お乳をあげれば泣き止みますよ」
そのまま自分の口近くに胸が近寄ったが、一瞬躊躇してそのまま吸い付いた。食欲には勝てなかったよ…。
「んっ…ちょっとくすぐったいわね。吸い付き方が…んっ…」
ひたすら、ちうー、と吸い、お腹がいっぱいになると眠気が襲ってきた。
「う、うー。……」
寝落ちする中見たのは母の優しい笑顔だった。