小さな光の出会い
「ようこそ、アステリア魔法学園へ」
歓迎の言葉とは裏腹に、校門をくぐった瞬間、肌を刺すような冷たい視線がすずらんを射抜いた。Aランクの重厚な扉を開くと、教室内は一瞬にして静まり返る。その直後、まるで波が押し寄せるようなひそひそ話が耳に届いた。
「……見ろよ。噂の『光』だぞ」
「希少な能力を持つ新入生が、いきなりAランク入りだって?」
「あいつが、あの力を……」
教壇に立つ教官の冷ややかな視線、そして教室内を支配する張り詰めた緊張感。窓際で足を組んでいたレンは、面白がるようにすずらんを見つめている。
そこへ、ひょいと軽快な足取りで一人の少年が歩み寄ってきた。赤い髪を揺らし、彼はすずらんの顔をまじまじと覗き込む。
「おっ、噂の光の魔法使いってこいつか! へぇ、聞いてた通り……それにしたってきれーな髪色だな!」
レンは屈託のない笑顔で、すずらんの肩にポンと手を置く。その人懐っこい温度に、教室内を覆っていた鋭い視線が少しだけ和らいだ。
「わあ……! 君の髪色も、とっても綺麗な色をしてるね! 太陽みたいで、すごく素敵だよ!」
きらきらと純粋な瞳で見つめられ、心の底からの濁りのない称賛を浴びせられたレンは、一瞬きょとんとした表情を浮かべた。やがて、自分の言葉がそのまま返ってきたことに気づいたのか、耳まで真っ赤にしてバツが悪そうに頭を掻く。
「たい、太陽みたいだなんて……言われたの初めてだな。……ははっ、ありがとな!」
レンは照れ隠しのようにすずらんの背中をポンと叩いて笑った。
その豪快で裏表のない笑い声が教室に響き渡り、張り詰めていた空気がほんの少しだけ緩んだ。すずらんは、今の自分の言葉がどう受け取られたのかもよく分かっていない様子で、ただニコニコとレンを見上げている。教室のあちらこちらで、小さな失笑や呆れたような息が漏れた。張り詰めていた教室の空気は、いつの間にか少しだけ和らいでいる。
……騒がしいな。
低く、しかしよく通る声が教室の入口から響いた。長い青髪を一つに束ねた少年が、開いた教室のドアに肩を預けるようにして立っている。
「レン、朝から教室でナンパか。相変わらず品がない。」
「はぁ!? ナンパじゃねーし! 新入りに挨拶してただけだろ!」
冷めた目でレンを一瞥した後、すずらんへと視線を移す。数秒、無言で観察するように見つめた。
「……光属性。治療と精神領域に特性を持つ希少種か。」
淡々と情報を並べる口調は、まるで魔導書を読み上げるかのようだった。そしてすっと目を細め、独り言のように呟く。
——随分と厄介な能力だ。
カイの声には嘲りも敵意もなかった。ただ、深い洞察の底に沈んだ、かすかな憂いのようなものが滲んでいた。しかしそれを汲み取れる者は、この場にはまだ誰もいない。




