case.018「爆買いプラスアルファ」
ぶんぶん棒を振りまわす。伸ばしては畳み、また振って伸ばす。棘をつけたり外したり。
タンクの方は流石に店内なので試すことが出来ないけれど、振った感じも握った感じも悪くない。
「グリップも気になるんやったら軽くテーピングしたらええで。普通にスポーツショップとかで売ってるやつ」
「なるほど。試してみます!」
「そうしといて」
ぎゅうぎゅうと握っては手の中で取り廻す。
いまはともかく怪異と相対したときには汗やらで手が滑ることも考えられる。たしかにグリップテープは必要かもしれないな。
「ヅキさんが言うてたブレードなんスけど…」
「そうそう。後付けの棘も結構小さいタイプだし、やっぱ難しい?」
「や、出来るんは出来るんスよ。けど、素人が長物ぶん回すのってやっぱ危ないわけやし、ソロで動くんちゃいますよね?やったら最初は棒術の基礎叩きこんで、間合いやらなんやら感覚でしっかりわかるようになってからの方がええっスよ」
「あー、それもそっか」
「っス」
たしかに。
武器なんて生まれてこの方握ったこともないし、護身術だって授業で柔道をかじったくらい。殺傷力の高いものをいきなり持つのは良くないか。
オーナーさんの正論にサカヅキさん共々納得しつつ、とりあえずここで僕のターンは終了。
「で。あとは消耗品類だけど…」
ヒナタくん腕出して、との言葉に少しの疑問も持たずに腕を出す。
「失礼~。ああ、なるほど。ちなみにどのくらいの深さでした?この感じやと3、4日ってとこっスか」
「骨まではいかなかったけど結構パックリ。時間はお前の読み通り」
「…うん。ここまで治っとるんやったら、あとはこっちがええかな。あれからアイツが色々配合見直して、もっと効くん開発したんスよ」
「へえ」
ケースにもろもろをしまって横へ置き、次に取り出したのはいくつかのスプレー缶と軟膏の入った丸い器。小分けにされた粉末にタブレット。
この粉、白かったらいかにもな怪しい粉だな…。なんて透明なジップロックに入れられた青い粉を見ているとそれを敏感に感じ取ったサカヅキさんから意味深な微笑みを向けられる。
「…ふふ」
こわっ。
「ちなみにこの粉はヒナタくんの水鉄砲の中のやつ。これを水に溶かしてんだよ」
「あ、そういう…」
「ああそれ。それもちょっと濃度とか変わってちょい強くなってます。で、これなんスけど」
「ごめんごめん。で、その軟膏はどういうやつ?聞く感じ、治りを早めるっぽいけど」
「そっス。強めなんである程度治ってる傷か、あるいは打撲、擦り傷とかに使ってもらうやつなんですけどね、ヒナっち、ちょっとええ?」
「あ、はい」
腕を取られ、ジェルのような透明なクリームが塗られる。…いかにも軟膏っぽい器なのに中身はそうじゃないんだな、なんて。
「結構伸びいいな。匂いもきつくないし」
「そこなんスわ。アイツもめっちゃこだわってて。なんや成分とかの元案は前からあったらしいんスけど、匂いだのテクスチャだので躓いとったらしくて」
「やっぱり腕イイな。うちに専属で欲しいくらい」
「んはは!また言うときますわ。ありがとおて帰って来るだけやと思いますけどね」
「あはは。いつものやつじゃん。ありがとお、気持ちだけ受け取っときます~ってやつ」
アイツ、というのが誰か知らないけれどオーナーさんとおそらく一緒に働いている人なんだろうな。成分とか開発とか言っているし、ここでの商品はすべてその人が作っているんだろうか。
楽しそうな2人の声を聞きつつ、クリームの塗られた腕を見る。感覚としては少しヒヤッとして、直ぐに吸収されるというところか。すこし触れてみてもべたつく感じもない。
「すご…」
こころなしかちょっと治っている気さえする。流石に勘違いというか思い込みなんだろうけど。
盛り上がっていた2人も何やら商談は済ませた様で、ケースに合わせて机上に用意された商品とあといくつかの追加分を購入して店を出た。
「さて、今日はあとひとつ行くところがあるんだよね」
ということで、新しい装備を手に入れたら次なる目的地へ。
「そういえば…」
「ん?どうかした?」
「いえ、あの外観って、どうしてああなのかなっていうか」
「あ~」
「むしろ外観があそこまで派手なら内装も相応の感じというか、もっとガチャガチャしてるのかなって思ったんですけど…」
「案外普通だった?」
「まあ、はい」
「あれはさ、オーナーの相方のアイツの趣味なんだよ。オーナー、ああもうめんどくさいから名前で呼ぶけど、カギリの嫁のミギリは場を歪ませやすい体質なんだ。んで現世を出てこっちに住んでて」
「へえ」
「こっちって曖昧な場所だからさ、植生とかもめちゃくちゃで。ミギリはそれに興味があって最初は趣味でいろいろやってたんだけど、まあ見ての通り役に立つからさ。いろいろ出資とか契約とか巻いて、趣味兼仕事でやってんの」
「すごい人なんですね」
「そ。で、利用価値もあるし体質もあるしで不要な目を避けるべくいろいろした結果があの外観。見た目は馬鹿みたいに派手だし一見むしろ目立ちそうだけど、目くらましの効果は強い」
「僕のこのピアスの強化版ってことなんですね」
「あの看板のデザイン自体は好きなキャラクターらしいけど」
「…なるほど」
「そのうちヒナタくんにおつかいとか頼むかもしれないから、頭の片隅くらいに置いておいて」
「わかりました」




