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第三十一話 交渉成立、作戦開始

「さあ、説明してもらいましょうか」


 一階のフードコートで、俺たちは小島さんに詰められていた。


「利奈、私たちは二人で遊んでただけで……」


「ふーん、仲良く二人でこんな遠くまで来て、そういう関係ではないとでも?」


 澪は『私に任せて』と言っていたが、さすがは小島さんだ。一筋縄ではいかない。


「ほら、白状しなよ。付き合ってんでしょ!」


「いや……」


 明らかに澪が押されてる。もうここまで来たら認めた方が……


「すぐ口を割る気はないみたいね」


 利奈さんが近くのコーヒーショップで買った、アイスコーヒーを口に含む。


「言う気がないんだったら、これ、クラス中に広めるよ?」


 小島さんが俺たちにスマホを突き出す。


 画面には、ニコニコの笑顔の澪と鼻の下が伸び切った俺がバッチリと写真に収められていた。


 俺たちに声をかける前に、しっかり証拠を押さえていたという訳か。抜かりないなぁ。あっぱれだ。


 さぁ、これはさすがに澪も認めざるを得ないか。


「ぐっ……」


 隣で澪が悔しそうに口を結んでいる。本当に負けず嫌いだな。長い付き合いの二人だからでもあるんだろうが、互いが互いを程よく意識していて、側から見ている分には良い関係に見えるけど……


 二人の鋭い眼光に挟まれた俺はどうすれば……?


「で? どうすんの?」


「……ずるい」


 はい、やっぱり澪の負け。


 澪が意を決して口を開いた。


「私たちは付き合ってます。昨日からね」


「昨日!? 私てっきりもっと前から……」


 小島さんでも付き合いたてほやほやだとは見抜けなかったようで。


「まぁ、いいや。交渉成立。約束通りこの写真は私だけの秘密にしてあげる」


 何とか俺がクラスで袋叩きになるのは避けられたようだ。



「ところで、利奈は何しに来たの?」


 澪の問いに急に小島さんが黙る。


 確かに、ここは俺たちが住んでるところからは大分郊外なので、高校生が一人で来るのはなかなかな負担である。相当な理由があると考えるのが普通だが……


「別に、何でもいいでしょ?」


「ダメだよ。私たちも自分たちの秘密をバラしたんだから、利奈も隠し事はなし!」


「はぁ、分かったよ」


 澪の勢いに押され、澪さんが口を開く。


「……誕プレを買いに来たの」


 思っていたよりもありきたりな回答だ。別に誕生日のプレゼントを用意しに来たなら、そこまで隠そうとしなくてもいいんじゃないか?


「へぇー、いいじゃん! 誰にあげるの?」


 澪が更に踏み込む。


 確かに、誰にあげるかによって、この話の重大さが変わってくる。


「……言わなきゃダメ?」


「別に言わなくてもいいけど……、私たちは秘密は守れるよ?」


 なかなか言いたがらない小島さん。ちなみに俺も澪も誕生日は冬なので、俺たちが誰にあげるか聞く分にはなんら問題はないはずだが。


「じゃあ、ヒント。富樫がよく知ってる人だよ」


「えっ、俺が?」


 俺がよく知ってる人?


 人との交友を最小限にしてきた俺が誕生日を知ってる人は限られてくるが……


 誰かいるかな……? 


 今プレゼントを用意するってことは、8月の初めとかに誕生日が来る人か……


 8月……、あっ!


「もしかして、恭介?」


 彼の誕生日は8月3日。ちょうどいい頃合いだし、何より俺が誕生日を知ってるのは彼と澪くらいだ。澪の誕生日を知ったのも文化祭の準備期間中だが。


 小島さんが諦めたように声を発する。


「はい、正解」


「恭介君に? もしかして、利奈……」


「ああ、そうだよ。私は北原恭介君のことが好き――」



 小島さんの顔が一気に赤くなる。相当恥ずかしかったのだろう。


 確かに、恭介は女子人気が高い。文武両道の具現化みたいな奴で、おまけに顔が良い。相当良い。


 でも、小島さんも恭介が気になっていたというのは少し意外だった。俺のイメージ的には恋愛どうこうより、我が道を行くイメージがあったが、彼女にも乙女の一面があったのだろう。まあ、当たり前だが。


「やっぱり恭介君のことが好きだったんだ」


「『やっぱり』って、澪、気づいてたの!?」


「まあ、明らかに恭介君と話す時だけ目がキラキラしてたからね」


 そうだったのか、全然気づかなかった。


「それに、打ち上げでカラオケ行った時。利奈、恭介君が歌い始めたら、一気に乙女の顔になってたよ」


「……っ! だって、カッコよかったんだもん……」


「もう、利奈はかわいいなぁ」


「かわいくないし!」


 小島さんが澪に頭を撫でられて抵抗する。


 あのー、一応公共の場なんで、あんまりイチャイチャしないでもらっても……


「ということで、富樫圭。君には私の作戦に協力してもらうからね」


「へ?」


「当たり前でしょ? あんたが一番恭介君に詳しいんだから」


 確かにそうだけど……


 俺にこんな役が務まるのかな……?


 恭介はなかなかな曲者である。恐らく、小島さんの気持ちには1ミリも気づいていないだろう。アイツはそういう奴だ。今まで数多の女子が彼に見向きもされずに涙を流してきた。


「分かった。引き受けるよ。でも、相当厳しい戦いになるよ、覚悟はあるよね、小島さん?」


「下の名前でいいよ。これからはチームな訳だからね。それに、彼を好きなった時点で覚悟はしてる」


「さすが利奈さん。じゃあ北原恭介振り向かせ作戦、開始だ」


 果たして上手くいくのか……?


 まぁ、最善を尽くそう。利奈さんのためにも、恭介のためにも。

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