第37話 [いってきます]
[それじゃ、みんな……急にごめんなさい]
早朝、少ない荷物を詰めたバックパックを背負うリンナを見送る人は少ない。
ここに集まってくれたのは、昨夜何かを察した人達だけだ。
「リンナちゃん……生きててね。そして、また腕相撲しようねっ!」
[タカさん、腕相撲に負けるの、なんか癖になってません?]
「リンナちゃん。この村に居着いてたとはいえ、これでも記者だ。君の活躍は追いかけさせてもらうからねっ!」
[キドさん……危ないことしちゃダメですよ?]
「リンナさん。あの日助けてもらった命、決して無駄にはしませんが……この村の人達は、命に代えても守ります!」
[……スズキさん、思い出せなくて、ごめんなさい。自分の命も大切にしてくださいね]
「リンナ。前にも言ったが……ここはアンタの『故郷』だ。いつでも戻ってきな。歓迎するよ」
[アネゴ……本当に、お世話になりました……]
「行っちゃうのかよ、リンナ……」
「僕らに黙って行くなんて〜……」
[ウィン、ウォート……名前、やっと覚えたのに、ごめんね]
「それ本名じゃねーけどな」
「今度会う時は、ちゃんと本名覚えてよね」
「それと……これ! やる!」
[うん? これは……]
子ども達に押し付けられた物は、ベルメタルフラワーの花。花が咲いた日の夜の間だけ、金属のように硬化するという特性があり、その間に摘めば硬化は永続的に維持される。
「加工する暇がなくて、花だけでごめんな? リンナと知り合って1年の記念に贈りたかったんだけどさ。せんべつ、になっちまったなー」
「リンナ、これ振ると鳴るんだよ? たまにはこれ振って、僕たちを思い出してね」
[ウィン、ウォート……ありがとう……本当に、本当に大切にするねっ!!]
リンナは胸が熱くなるのを感じた。しかし涙は流れない。
そしてリンナは、村に来た当時に着ていたマントを身に纏い、深々とフードを被る。
[じゃあ、みんな……いってきます!]
「アンタたち。もう泣いてもいいんだよ。これだけ離れれば、声は届かない」
リンナが去った村に。
子ども達の泣き声が響き渡る。
いつまでも。
いつまでも。




