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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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24/24

24.解決

 魔法少女から普段のつむぎに徐々に変わっていって、思っていた力の入り方と違ったから、動こうとしたら変になってしまったんだ。つむぎの段階でもすごい動きができるけど、魔法少女の状態は軽くそれを上回れるからね。感覚は間違いなく違うんだ。


「ほら。変身解除して。もう敵はいないんだから」

「うん! カピバラさんは最初から敵じゃないもんね! モフモフー!」


 素直に変身を解いたつむぎは、すかさずカピバラに抱きついた。カピバラが嫌がってるから、程々にしなさい。


「おーい」


 声が聞こえて後ろを見ると、正治たちが駆け寄ってきた。たちというのは、陽向や犬がついてきているから。


「大丈夫かい!?」

「ああ。見ての通りなんともない。カピバラは元に戻った」

「ああ。良かった」

「モフモフー! モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフー!」

「おいつむぎ。それくらいにしろ」

「あー!」


 僕は獣のサイズのまま、つむぎの服の裾を咥えて引っ張り離させる。


「カピバラさんもっとモフモフしたい!」

「怖がってるだろ! あと体調に変化がないかどうか、飼育員が見なきゃいけないんだから!」

「むー! じゃあラフィオをモフモフさせて!」

「……いいよ」

「やったー! モフモフー!」


 僕に抱きついてくる。うん、これでいいんだ。


「あの。わたしも……モフモフ……」


 陽向が遠慮がちに、僕に触れてきた。こうやって優しく触るならいいんだけどね。


「正治さんもしますか?」

「やってみる」


 モフモフが苦手だった正治もこっちに手を伸ばし、僕を撫でた。

 しっかり触っている。そして、触れることに迷いがなさそうだった。


「心地良いもの、だね」

「うん」

「モフモフって気持ちいいですよね!」

「お前は加減しろ」


 つむぎを睨んで嗜める。まあ、無意味なんだろうな。

 正治はすっかりモフモフ恐怖症を克服したようだった。犬も彼の足元に寄り添っている。仲良くなったのかな。



 その後、カピバラも犬も元の飼育員の手元に戻り、チェックの結果体調に特に問題がないことが判明した。


 正治はリハーサルに合流。乗馬の訓練もこなした。初めてのことで慣れないから少し怖い、以上の拒否反応は起こさず、馬とも仲良くしているようだ。

 撮影スタッフたちも、これなら映画撮影に問題ないと喜んでいる。


 再び変身したハンターと共に、僕はカピバラを巨大化させた魔法陣を改めて見た。


 動物を巨大化させる魔法陣には、どうしても見えなかった。あの時どんな風に草や土がこれを隠したのかは、今となっては確認できない。土も、巨大カピバラが現れた結果擦れてしまって、元の隠れ方とは変わってしまったし。


 とにかく、再び効果を発揮することがあってはならない。魔法陣に大きく罰印をつけて、使えなくした。


「わたし、魔法の研究はやめます。また同じようなことが起こったら大変ですし」


 ノートを閉じながら、陽向がきっぱりと言い切る。


「そうか。……僕としても、その方がいいと思う。けど、陽向はそれでいいのかい? 魔法で得られたこともあったのだろう?」

「はい。でも、やっぱりこの場所でしか使えない魔法だから。わたしには地元があるので、そっちでうまくやらなきゃ駄目だし。それに、魔法が使えるようになっても、それでマロンを危険な目に遭わせるのは嫌だから」


 それはそうだ。どんな魔法が出てくるかわからない魔法陣に、大切なペットを乗せるのは良くない。


「なにより……こっちで友達もできたから」


 陽向がスマホを見せてくれた。正治とのツーショット。


「知らない土地で友達ができたなら、きっと地元でもできるはず。ちょっと勇気があれば、あとは大丈夫。だから、必要なものは手に入れました」

「そうか。それは良かった」




 正治はその日、ちゃんと馬に乗れるようになった。

 そして翌日、いよいよ僕の出演シーンの撮影が行われる。


「お主は……一体」

「僕はラフィオ。南蛮から来た、喋るモフモフさ。困っているようだから、助けようかい? それとも、知らない獣は信頼できない?」

「ふっ。もふもふに悪い者はいない。助太刀感謝いたす」


 みたいな芝居を挟んでから、ちょっとアクションを撮る。相手は黒タイツではなく、悪の忍者集団。中身はもちろん、アクション俳優だ。トンファー仮面のザコ敵の中身とかを演じたりもしているのだろう。

 僕の動きに合わせて完璧にやられる芝居をしてくれるのが面白かった。こっちは攻撃を当ててるように見せてるだけなのにね。


 本気で戦ってないのに勝てるっていうのも新鮮だ。



 そんな感じで撮影は終了。この後正治や撮影スタッフたちは京都へ行き、他のシーンの撮影に入る。そして陽向も旅行を終えて地元の静岡に帰る。

 お別れの時間だ。


 模布駅の新幹線乗り場の改札前。模布市から見て京都と静岡は逆方向にあるから、ホームまで見送るよりはこっちの方がいい。


「お世話になりました。この旅行で、わたし少しは成長できたかなって」

「うん! ハムスターさんと仲良くね! またいつでも来て! ハムスターさんと一緒に!」

「うん。行く!」


 つむぎは最後までハムスター最優先だったな。ケージの中のマロンがちょっと怯えている。陽向はそれも笑って受け流して、つむぎと握手していた。

 強い子だよ。


「僕も、とてもお世話になった。動物嫌いを克服して、役者としての幅が広がったと思う。ありがとう、君たちのおかげだ」

「僕は何もしてないよ。正治が自分で、マロンを助けようとしてカピバラの前に立ったおかげだ」

「でも、きっかけを作ったのは君だ。ありがとう」

「……うん」


 感謝されるのは気持ちがいいな。


 改札を通ったふたりに最後に手を振って、僕とつむぎも去る。帰ろう。


「映画楽しみだねー。ラフィオの出る映画が見れるのいつだろー」

「もう少し先だね。これから撮影の本番だし、さらに編集作業とかあるから」

「まだまだ待たなきゃいけないのか。つまり、楽しみがずっと続くってことだね!」

「そうなるかな」

「よし! じゃあラフィオ! 家に帰ってもふもふ侍のシリーズ全部見よ! 予習は必要だから!」

「リメイクだから必要はない……けど見ておくか」

「あと、キングカピバラシリーズも見直そう!」

「それは全然関係ないからな! お前が見たいだけだろ!」

「あははー!」


 愉快そうに笑うつむぎ。


 ああ。かわいいな。


 仕方ない。付き合ってあげるか。


〈おしまい〉

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