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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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19/24

19.そもそもの犬

 悠馬なんかは魔法少女の関係者であることが知られていた。調べたらなんとなく秘匿されてる程度の情報統制しかなく、だから個人を特定しやすい。

 彼らを巻き込むわけにはいかない。


「だから申し訳ないけど、僕は協力できないんだ。……もちろん、君が独自で研究するのをやめろとは言えないけど」


 ここには旅行で来たという。だったら数日で帰るのだろう。その間に魔法について好きなだけ試して、それを良い思い出として地元に持ち帰って、これからの人生を少しは前向きに生きる糧とするなら、別に止めない。

 彼女は魔法があることを、自分の感覚で知ったわけだし。それを悪いとは言えないからね。


「わかりました。自分の力で頑張ってみます。あの、おふたりと出会えて、嬉しかったです。それにお兄さんも」

「ああ。うん。よかったら俺の映画も見てね」

「はい!」


 こちらの話には加われず所在なさげにしていた正治も、声をかけられればしっかり返事をした。


 その映画の撮影が、モフモフ恐怖症のおかげで暗礁に乗り上げているのだけれどね。


「ねえ正治さん。ハムスターさんは平気ですか?」

「あ、ああ。なんとか。……ケージからは出さないでくれ」


 こんなに小さなハムスターを前にして脂汗を浮かべている正治は、なんとか平気には見えなかった。


「あの。もしかして動物が苦手、とか?」

「実はそうなんだ。原因は、君も見たはずだ」

「あ。犬に……」


 気遣わしげに尋ねた陽向に頷く正治。


 そして陽向に、これまでの経緯を説明した。僕の妖精態を使って訓練してることなんかも含めて。


「なるほど……それは、無意味だと思います」

「え?」

「ラフィオさんを相手に慣れる訓練を重ねても、慣れるのはラフィオさんだけです。他の動物への苦手意識は消えない」


 なるほど。だから小さなハムスターも怖がる。


「根本的な所から取り除かないと。この場合は、犬です。あなたは犬に慣れなけばいけませんし、それができれば他の動物も平気になるはずです。……って、この雑誌の別の号に書いているのを読んだことがあります」


 と、最後は少し恥ずかしそうに言った。


 オカルト雑誌の受け売りか。なんかの恐怖症を緩和した海外のケースを紹介した記事とかだろうな。その内容自体、この三流雑誌がでっち上げた嘘かもしれないけど、でも理屈はわからなくはない。


「いい考えだと思います! 正治さん! 犬と仲良くなりましょう!」

「い、犬!?」


 明らかにビビってるなあ。


「それもただの犬ではありません! 正治さんを噛んだ犬と似たような子と仲良くなる必要があります! 正治さん、どんな犬でしたか!?」

「お、覚えてない。それに犬種とかもわからないし。そもそも野良犬だから雑種だろうし……」

「茶色い犬ですね。大きさは柴犬くらい。鼻が高くて耳は垂れている」

「えええっ!?」


 陽向が正治に手を向けて、彼自身も思い出したくない過去の記憶を引きずり出した。


「よしわかりました! ラフィオ、動物園に犬さんっているかな?」

「いないだろうね。街に大勢いる動物を、ここで特別に飼育する意味は薄い」

「確かに! じゃあペットショップとか行こっか!」

「ペットショップには雑種は売ってない。似た犬はいるかもしれないけれど、もっと確実な方法がある」


 というわけで、澁谷に電話した。彼女はこれまでの経緯をよく知ってるからね。そして、今わかった新たな仮説も伝えた。


 澁谷はメディア関係者だ。そしてテレビにはよく動物が出る。犬を出演させる必要が出た時、タレント犬の融通をする業者にも、つてがある。

 陽向からもう少し詳しく話を聞いて、似た犬を用意してもらう約束をとりつけた。そして今から、他のスタッフたちが一足先に来ているはずの牧場へと向かう。犬もそっちに来るという話だから。


「犬さんに慣れて、そのまま馬にも乗れるようになりましょう!」

「ああ。嫌だ……けどやるしかないのか……」


 トラウマを植え付けたボスに対峙することになった正治は、絶望的な顔を見せた。それでも撮影を滞りなくやらなければならないという使命感もあって、抵抗はしなかった。


 ひたすら重い足取りで動物園から出て、電車に乗り込む。


「デストロイ! シャイニーハンター! 闇を射抜く精緻なる狩人! 魔法少女シャイニーハンター!」


 途中でスタッフが用意した車に乗り換えて牧場へと向かう。そのために、つむぎはハンターに変身した。


 陽向もついてきた。楽しそうだとか、魔法少女たちと一緒にいたいとか、そんな理由なんだろうな。まあいいさ。



「わーい! お馬さん! 牛さん! 広い草原!」


 牧場につくなり、ハンターのテンションが上がった。そこかしこから漂ってくるモフモフの気配に心が踊っているのだろう。


「おとなしくしろ。本来の目的を忘れるな」

「忘れてない忘れてない。わたしもお馬さん乗るんだよね!」

「違うからな!」


 柵の向こうに見える馬に駆けだそうとするつむぎを必死に止める。こいつを放っておくことはできない。動物園よりも動物と近い施設だからな。


「あ。ここ、魔法が使える」


 陽向が周りの人たちに手を向けながら静かに言う。


 そうなのか。たしかに地面を見ると、魔力の反応がある。


 ここは市外だけど、模布市とは隣接している市にある。魔法が使える範囲は厳密に模布市の中と決まってるわけじゃないから、はみ出ることもあるか。


「あ! 澁谷さーん! 犬さん用意できましたか!?」


 ハンターが知り合いの姿を見て、そっちに駆け出していく。本当に忙しい奴だ。

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