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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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14.フワリーなる人物

 とにかく、僕はMr.フワリーなる人物について、より深く調べることにした。

 夕飯を終えて自分の部屋に戻る。つむぎもついてきた。僕のベッドに勝手に横になって自分のスマホを見つめている。いや、いいんだけどね。


「へえー。結構なおじいさんだね。でも若い人より、おじいさんの方が雰囲気出るのかな? 修行を重ねた占い師です、みたいな感じで」


 つむぎが見ているのも、フワリーの動画だ。模布市の夕方の情報番組に出演した時の映像らしい。


 つまり十五年前の映像だ。今から見ると映像が古い。画質も演出も微妙に洗練されていない。


 番組の種類としては澁谷が今出演しているようなのと同じようなものだけど、今から見ればかなり違う感じになるな。


 で、確かにフワリーはおじいさんだった。十五年前にこれなら、そこから十年生きただけでも十分長生きだったのかな。


 動画の中でフワリーは、街ロケに出ていた。初対面の人の素性を当てるんだ。スタジオに呼べる人間なんてテレビ局で働いているか有名じゃない役者くらいだから、街に出たほうがやらせを疑われないし手間もかからない。

 その頃既にフワリーは市内でそれなりに名が知られていたらしく、布栄の繁華街で声をかけられた一般人は快く撮影に応じて、そしてフワリーに素性を当てられて驚いていた。


 注目すべきは、フワリーが当てる時の動き。手のひらを相手にかざしているのだけど。


「手の甲に何か描いてるね」

「うん。魔法陣だ」

「これ、正しいの?」

「正しい……」


 そうとも。ガチで使えるやつだ。


 自分の体に魔法陣を描くとはつまり、自分の体に魔力を流すということだ。まあ、別にそれで体に変な影響が出ることはない。魔法少女たちも似たようなことをしているし。

 あんまり大量の魔力を流せば負荷がかかりすぎるわけだけど、この程度なら問題はないはず。

 ないはずだけど、人間にとっては魔力なんて未知のもので、それが入ってくることに抵抗はなかったのだろうか。フワリーは魔法を使いこなしてるから、抵抗なんか感じてないようだけど。


 ああ。間違いない。この男は魔法を使っている。


「これが東京に出た時の映像かな」


 つむぎが別の動画をタップした。


 彼女はベッドに肩をつけて横に寝転がっているから、僕は彼女の肩に腕を回して背中に寄り添う形になりながら画面を覗き込んでいる。

 つむぎの髪の匂いがする。いい匂いだった。


 いや、今はそれどころじゃないけど。


 東京のテレビ局の、たぶんバラエティだ。今はもう終わった番組だけど、話題のゲストを読んで人物に迫る、みたいな感じの内容だ。今度はスタジオ撮影。

 そしてフワリーは、東京では自分の占いが成功しなかったことに狼狽えているようだった。


 対面している若い女に、おおよその年齢と実は役者の仕事をしているとか、そういう簡単な推測で当てられること以外は、何も言えない様子だった。


「こういうのってさ、だいたいは事前にスタッフでリハーサルやってから本番するものだよね?」

「東京から模布市にスタッフが来て、実験してみて、それで行けるとなったんだろう」

「なるほど……」


 そうでなくても、模布市でこの人の能力は何度も実証されている。だから魔法を使うリハーサルは行われなかったとしても不思議ではない。やったとしても、収録の段取りの確認とかだろう。

 とにかく、フワリーの東京進出は失敗に終わり、彼の芸能人としての短いキャリアも終わった。これ以降、彼はメディアに出ることはなかった。


「まあ、収穫はあった。彼は間違いなく魔法を使っていた。偶然かなにかで、正しい魔法陣を発見したんだろう」

「でも、どうやって?」

「それはわからない」

「フワリーさんの、テレビに出る前の仕事は?」

「ずっと占い師をやってたみたいだね」


 それはさっき、web百科事典で調べた。彼のキャリアの前半は、たくさんいる占い師のひとり。小さな雑誌の星座占いのコーナーに文章を書いたりとか、そんな仕事もしつつ、メインの仕事は都市部にある占いサロンなる施設に所属してお客さんを占うもの。


 それだけでは食っていけないから、アルバイトをしてた時期もあるらしい。どこの世界も世知辛いものだね。


 そうやって生計を立てながら、占いの研究をしている途中で見つけたのだろうなあ。しかし、その過程は不明だ。


「この人、SNSもブログもしてないみたいだね」

「おじいちゃんだからな」


 それも、十五年前の段階ですでに。


 今なら占い師でもSNSで名前を売ったり情報発信するのは当たり前だ。けどこの人の場合はそんな発想もなかった様子。


「あ、ラフィオ見て。研究してるアカウントがあるよ」

「研究?」


 つむぎの肩に顎を乗せる形で身を乗り出す。体が密着してる形になってしまって。


「ちょっと恥ずかしいかも」

「あ。ごめん」


 少し体を離した。というか今更だけど、この体勢はスマホが見づらいな。

 ふたりベッドの縁に並んでくっつき合い、スマホの画面を覗く。これなら見やすい。あとそんなに恥ずかしくない。


 それより、つむぎが見つけたSNSアカウントだ。

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