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もふもふ侍vsキングカピバラ~姉魔法少女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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12.オカルトは無い

 僕はそれを止めるべきか、それとも一緒に追いかけるべきか悩んだ。

 別に、ハンターにハムスターをモフモフさせたいからじゃない。あの女の子のことが気になっただけだ。


 ちらりと足元を見る。チョークで描かれたガタガタの魔法陣は、しかし僕の知っている魔法の理論に沿っている。

 僕があの家のリビングに描いた魔法陣ともよく似ている。


 このままでは、魔法陣の範囲内の中にある石に魔力が集中して、新しい魔法石が生まれることになるかも。


 けど、その効果はわからない。魔法陣が不完全だからね。ガタガタなのもあるし、描く途中だし。


 とりあえずこれは消しておこう。ハンターの腕から抜け出して少年の姿になり、少女を追いかけようとしているハンターの裾を掴んで引き止めながら足で石を転がして魔法陣の形にならないようにした。

 少女の方を見る。マロンちゃんは無事に捕まえられたようだ。


 そして反対側を見ると。


「ハンターさん! 移動しますから来てください!」


 撮影スタッフが駆け寄ってくるところだった。そうか。ここでの撮影は終わったか。


 あちこち移動するなあ。それだけ、模布市のいろんな風景をカメラに収めてくれるということで、ありがたいのだけど。この街のアピールにもなる。怪物に襲われても美しいままの、強い街だと。

 スタッフたちの方へ戻っていくハンターは、ハムスターのことを気にしていた。僕も同じだ。


 あの少女は一体何者なんだ。




 この世界において、魔法が使える唯一の街が模布市だ。

 正確には、魔力が土地に根付いていると言うべきかな。そして多くの人はその詳細を知らないから、魔法を使えない。

 故にこの世界では、魔法なんて物語の中だけの存在でしかない。


 しかし本当のことは、少し違う。


 この街に魔力が存在する理由は、僕たちとキエラの戦いが起こるずっと前にある。正確な年はわからないけれど、二十年も前のことだと聞いた。


 魔法が当たり前である異世界からの侵略と、かつて聖装戦姫と呼ばれていた少女の戦いがあった。

 その異世界から打ち込まれた最初の攻撃は、この地に魔法の霊脈を作り出すというもの。これで敵は魔法が使えるようになって、この街を足がかりにして勢力範囲を広めようとした。


 結局は聖装戦姫の活躍によって侵攻は押しと止められて、この土地以外に魔法が広まることはなかった。そして、戦いの記憶は魔法によって人々から消し去られて、それを知っているのは当の聖装戦姫だった女とその妖精、そして彼女たちから話を聞いた僕とつむぎだけとなってしまった。


 彼女は僕たちに話をした後、行方を眩ませた。戦いの結果見えなくなった目で、それでも平和な街を静かに見たいと考えて、この街のどこかにいるのだろう。しかし僕たちに彼女を探す術はない。

 だから、より詳しい話を聞くことはできない。


 しかし事実として、この街には魔力がある。それも僕が戦いを始めるずっと前から。


 魔力があるなら、何かの拍子にそれを使ってしまった者だっているかも。あの少女がそうだとは限らないけれど。

 もっと前に、この土地で不可思議な現象に遭遇してしまった人がいて、それを記録に残した。そしてあの少女は魔法少女の熱烈なファンだから、わざわざ隣県からやってきて何かを試そうとした。

 そういうことかも。


 確証はないけどね。調べてみないと。


「あの子、また会えるかな?」

「かもしれないね。向こうは僕たちに興味があるみたいだし。魔法についてもね」

「魔法を悪用するかもしれない?」

「わからない」


 ハンターに尋ねられても、はっきりした答えは言えなかった。


「あの人、悪い人ではないと思うよ」

「それは僕も同意見だ」

「モフモフを飼ってるし」

「それは関係あるのかい? ……いや、あるかもね」


 小動物が懐いているならば、普段から大切に扱っているということだ。

 あの少女の人柄を表していると考えても間違いではないだろう。


「また会いたいなー」

「うん」


 僕は魔法陣で何をするつもりなのか尋ねたいのだけど、つむぎは別のようだな。ハムスターをモフモフしたいだけだ。



 その日の撮影も無事に終わり、僕たちは帰宅した。

 僕は勉強もそこそこに、調べ物に入ることにした。この街で過去に起きた奇妙な事件についてだ。

 僕はスマホを持っているからね。調べものも得意なんだ。


 ところが、うまく行かなかった。


「古い年代の話ばかりヒットする……」


 六十年代のUFO目撃情報とか、妖怪が出てくる江戸時代の民話とか。そういうのばかりだ。


 まあ仕方ない。時代が新しくなるにつれて、オカルトの存在する余地はなくなっている。

 奇妙な現象があったと言うなら、なんでスマホのカメラで撮らなかったと言われる時代だ。そのカメラの性能も上がっていて、仮にインチキなんかしたら即座にバレてしまうもの。


 そもそも夜を照らす灯りが多すぎて、この世の闇とか不可解な存在はどこかに追いやられてしまった。


 わかっているとも。この世界に、魔法少女やフィアイーター以外のオカルトはない。幽霊もUFOも超能力も存在しないし、過去に報告されたものはインチキばかり。

 それは模布市でも同じ。吸血鬼モフミドロの正体は人間だった。


 魔力が存在するとはいえ、それを偶然に使うのは不可能。魔力の存在を知らない市民たちは特にそうだ。

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