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「助けてください! 誰か、助けて! 」
少女は必死に叫び続けた。
それが少女の出来る最大限の事だったからだ。
「ははは、残念だったな。そんな大声を出せば俺にだって聞こえちまうよ」
魔王軍ミケロが少女の前に立ちふさがる。
少女の顔は恐怖に歪み、そして全てを諦めたかのように天を仰いだ。
「いい顔だ。力ない者はそうやって死んでいくんだ」
ミケロが斧を振りかぶる。
「君かい、呼んだのは? 」
いつの間にかその場にkb2914が現れた。
「誰だお前は! いつからそこに居た! 」
ミケロは突然現れたそいつに警戒レベルを上げる。
そしてすぐに今の状況を確認して、少女を人質にした。
「おや、そんなに怯えなくてもいいのに。すぐ済むよ」
少女は自分を縛っていた物が外れた事に気づくと、すぐに走り出した。
「もう大丈夫だよ、怖かったね」
優しく抱きしめられ、その言葉を聞くと少女は意識を失う。
「やれやれ、こんな所まで来ているとは。熱心だね彼らも」
kb2914は少女を抱えたまま歩き出した。
森から帰ってきた少女は自分の村の異変にすぐに気がついた。
いつもと違い、何かがおかしい。
そう思った少女の目の前で、誰かが倒れていた。
それは隣の家のおじさんだった。
おじさんは血まみれになって倒れている。
そして少女のに気づくと口を動かす。
「に・げ・ろ」
少女は確かにおじさんの声が聞こえ、そして森へと走り出した。
取ってきた山菜の入った籠を投げ捨てて、
ただひたすらに走った。
隣の村までは一体どれくらいの距離があるのだろうか?
逃げながら、そんな事が頭に浮かぶ。
そして、両親や妹の事を思い出すともう我慢できなくなっていた。
「助けてください! 誰か、助けて! 」
無意識に少女は叫んでいた。