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転生しても一緒に…エンド


 全員の求婚を断った俺は城から出て、中庭に出ると、小石を拾って姫さまがいる部屋の窓にコツンとぶつけた。

 それに気づいたリーフィア姫が窓から姿を見せる。俺は手を振り、勇者特有の身体能力で壁を登って窓の近くに行く。彼女は窓を開けた。


「イッキ!」

「迎えにきたよリーフィア。話がある」

「はいっ」


 俺が手を差し出すとリーフィアはそれを掴んだ。俺は即座に彼女をお姫様抱っこするとそのまま地面にジャンプして降り立った。


「び、びっくりしましたわ」

「はは、ごめんごめん」


 俺はそのままリーフィアを連れて歩き始めた。俺は周りの人に存在を感知されなくなる魔法を使って街を出た。


「あ、あのイッキ。どこまで行くんですの?」

「もう少しさ」


 俺は街から少し外れた丘の上に来た。


「ここだよ。あれを見てごらん」

「ここ? ここに何か……まぁ!」


 丘の上から見た先には一面に小さな光が灯っていた。それはまるでおとぎ話のように幻想的で美しい光景。


「この時期はここに蛍光虫が集まるんだ。そいつらが一匹一匹集まるとこんなに綺麗なんだよ」

「凄い、凄いですわ! とっても綺麗……!」


 リーフィアはとても喜んでくれたみたいだ。俺はそこで今までの想い出などを話した。長い長い想い出を。


「イッキの旅は面白いことばかりですわ」

「辛いこともたくさんあったんだぜ?」

「でも、私も一緒について行きたかった」

「これからずっと一緒にいればいいだろ?」

「えっ?」


 さて、ここからが本番だ。

 俺は片膝をつき、姫を見つめる。


「イッキ……?」

「結婚してくれ、リーフィア」


 リーフィアは涙を流した。それを恥ずかしそうに手で覆った。少しして涙の跡が残っているまま彼女は俺を見据えて笑った。


「はいっ……!」



 ♦︎



 リーフィアへのプロポーズから一ヶ月が経った。今日は国を挙げての結婚式だ。俺とリーフィアの。

 勇者と姫様の結婚式ということでとんでもない人数の人々がここに集まっているらしい。


 あれから、ルリたちは今までどおり俺と話してくれていた。みんな俺がリーフィアと結婚することになったと言ったらおめでとうと祝福してくれた。

 何だかんだ言ってもあいつらは良い仲間だ。あいつらにもいつか大切な人ができるだろう。俺はその時精一杯祝ってやろう。


「な、なんだか緊張するな」


 俺は今リーフィアが扉から入場するのを待っている形だ。ドキドキが止まらん。

 ふと来賓席を見たが、ルリとセレナとユーナの姿がどこにもない。どこに行ったんだろうか?


 そんな事を考えていると、アナウンスがかかり花嫁が入場してきた。

 純白のドレスを身に纏った彼女は一国の姫に相応しい美しさだった。一瞬、この式に参観している全ての人が目を奪われたのだ。


 そのまま式は進んでいき、そして誓いの言葉を宣言する番になった。

 この国一の神父が俺たちに向かって言う。


「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、 悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、 これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、 真心を尽くすことを誓いますか」


 俺は不意に横にいるリーフィアを見つめた。同じタイミングで彼女も俺を見ていた。

 俺たちはそれが少しおかしくて微笑んだ。そし同じタイミングで、


「誓います」


 そう言った。


「では、誓いの口づけを」


 その言葉を受け、俺はリーフィアのヴェールをめくり、彼女に口づけをするために顔を近づけた。


 ――その時だった。


「危ないっ!」

「きゃあっ」


 どこからか姫に向かって投げナイフが投げつけられたのだ。

 曲がりなりにも勇者の俺はそれを察知すると投げナイフを手で掴んだ。手からは少し血が滲む。

 馬鹿な、全然殺気を感じなかったぞ。このレベルの潜伏術を使えるとなると……!

 嫌な予感がしていた。


「テラファイア!」

「なっ!?」


 横の壁が破壊されて姫に向かって炎の塊が豪速で迫って来ていた。俺は姫を押し倒し、回避させ持っていた投げナイフを敵がいる方向へ投げた。だが炎は俺に直撃。肩に直撃し、肉を焦がし抉りながら貫いていった。

 圧縮された弾丸のような炎。確実に暗殺するために放った一撃だ。


 この魔法は確実に――


「ユーナ! どういうことだ……!」


 魔法を放った方向にいたのはユーナだった。

 俺が投げた投げナイフはユーナの腕に刺さっている。


「痛いよイッキ。なんでこんな事するの。イッキがユーナの事を見てない世界なんていらない。そいつを殺してユーナと暮らそう。今からでも間に合う。さぁイッキ」


 ユーナは腕に刺さった投げナイフを抜くと、その刃についた血をなめとった。


「騎士団ーっ!! あいつを捕らえろ! ユーナは錯乱してる! 早くつかまえるんだっ!」


 俺は大声で周りを守っていた騎士団に命令を下した。その命令で周りをぼーっと見ていた団員たちが目を覚まし、武器を持ってユーナの元へ駆け寄った。

 ユーナと言えどあの人数のを相手ならしばらく動けないはずだ。


 問題はあの投げナイフを投げたのは別の誰か(、、、、)って事だ。投げられた方向が明らかに違う。だが状況から察するにおそらくそれは、セレナだ。


 瞬間、倒れたままのリーフィア姫の方に強烈な殺気を感じた。これは、俺が昨日使っていた認知されなくなる魔法だ!

 俺はすぐさま目にそれを打ち消す魔法をかけた。するとそこには剣で姫を突き刺そうとするセレナの姿があった。


「させるかぁあああ!」

「なっ!」


 俺はセレナを蹴り飛ばした。だが姫には既に剣が少し刺さってしまっていた。深い傷ではないようだがかなり血が流れてしまっている。

 俺は激怒し、セレナの方を向く。


「何してやがるセレナァアアア!」

「ふ、は、はははははは。イッキ、お前は間違えてるぞ。そんな女お前には相応しくない。私だ、お前には私が必要なんだ。わかってるだろう? お前と私は結ばれる運命なんだ決まってるんだこの前無理やりしようとした事を怒ってるのか? あれは悪かったと思ってるけどお前が悪いんだぞ私に――」

「黙れっ! 騎士団! あいつも拘束しろっ!」


 俺は騎士団にそう命令した。その掛け声で控えていた騎士団が俺を通り抜けてセレナに向かっていく。


 くそっ! この様子だとルリも絶対どこかに潜んで狙ってるはずだ。どこだ、どこにいるんだ。

 いや、それよりもリーフィアを医務室に運ばないと!


「おいっ誰かリーフィアを医務室に運ぶのを手伝ってくれ!」

「は、はいっ」


 呼ばれて来た騎士団の数人が俺の方へ向かってくる。この事態のせいで騎士団は頭を甲冑の兜で覆ってしまっているため男か女かはわからない。


 俺は彼らの手を借り、リーフィアを担架に乗せようとした。横たわるリーフィアの手を握り、励まそうとする。俺は焦っていた。だから気づかなかったのだ。


「……イッキ……! うしろ!」


 リーフィアの必死な形相で俺は後ろを見ようとした。だがその時、俺の背中に何かが突き刺さる感覚が俺の体内を駆け巡った。

 ふと下を向いて胸を確認すると、そこには血で染まった刀身が俺の胸を突き抜けて出現していた。


「ごほっ……!」


 俺は吐血した。何が起きた?

 俺は後ろを振り返る。そこには甲冑を身に纏った団員の一人が立っていた。

 そいつは、おもむろに兜を脱ぎ捨てた。


「くそっ……やっぱりお前かよ……ルリ……!」


 ルリは俺の顔を見て何も言わずにただただ微笑んだ。

 まずい、身体が寒くなってきた。これは死ぬってやつじゃないのか?


「お兄ちゃん……私、試練の意味を一ヶ月考え続けたんだよ」

「し、試練……?」


 何を言ってるんだこいつは。

 だが俺はもう質問をするほどの体力は残っていなかった。


「で、わかったの。答えが。今からそれを見せるね」

「何を……がっ!」


 ルリは俺に刺さった剣を抜き取った。ここでルリの異常な行動に恐れをなした騎士団員たちはリーフィアを置いてどこかに逃げていった。

 そしてルリはその血まみれの剣をリーフィア姫に渡した。そして手に握らせる。リーフィアの手はカタカタと震えていた。


「ねえお姫様。悔しい? 悔しいよね。大事なイッキが殺されそうなんだもん。今ならね、その仇を取れるよ。ほら、ここ、ここを刺せば私は死ぬ」

「……な、何を言ってるのですかあなたは」


 ルリは刀身を掴むとそれを自らの胸まで持って来て、そこを刺せと言わんばかりに押し付けた。


「いいの? 私が憎くないの? あなたのこれから起きる幸せを全部私が奪ったんだよ? ねえ、憎くないの? ほら、殺しなよ。ほらほらほらほらほらほらほらほらぁ!」

「う、うわあああああああああ!」


 リーフィアは目をつぶり剣をぐっと押し込んだ。瞬間、ルリの胸は貫かれ、鮮血が俺の頬に飛んだ。


 ルリは貫かれると恐怖で何が起きてるのかわからなかなっているリーフィアを手で押し飛ばし、自らに刺さった剣を抜き取った。血が溢れ出る。

 そしてルリは今までに見た事のないような恍惚とした表情で俺の元へとふらふらと歩いてくると、俺に覆いかぶさるように倒れた。


「こ、これがね……私の“答え”だよ。お兄ちゃん、当たりでしょう? ユーナやセレナは姫様を殺そうとしてたけどそれじゃだめだよね。そしたらお兄ちゃんの中で姫様が神格化しちゃうもの。だからお兄ちゃんを殺して私も死ぬ。そしたら私たちはずっと二人でいられるもんね。これがお兄ちゃんのくれた試練の答えなんでしょう」

「……ぐ……」


 もはや俺は声も出すことができなくなっていた。

 くそ、俺はどこで道を間違えたんだ。やっぱり断り方が良くなかったのか? いやそんなことじゃないな。

 どうやっていたところでこいつらの誰かにどっちかは殺されていただろう。


 次に生まれ変わるなら、こんな悲劇じゃなくて普通に平民として生まれて普通に結婚して死にたいな……。



「……お、お兄ちゃん。生まれ変わっても一緒だからね……」




 あ、無理そうです。




ただただ魔王を倒した後の勇者の結婚相手を決める話が書きたかったのにどうしてこうなった…

余談ですがこの後イッキは転生して新たな世界で新しい人生を歩みますが、最後に言った通り妹含め全員再びイッキの周りに転生してきます

彼にハッピーエンドはくるのか…?

読んでくださりありがとうございました、よろしければブックマークと評価お願いします!

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