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黒閾のダークブレイズ  Re.FIRE  作者: 星住宙希
第十章
14/31

忌み子の姫 弐詞

「ふ……ふざけやがって!」


ガルンはひくつく目元を抑え切れずに、歯ぎしりした。


ここまでしてやられると苛立ちが募る一方だ。


「いいぜ、分かったぜ……。姫はもう一度救い出す!! 貴様らをぶち殺してな。姫を掠った事で、俺をフリーにした事を後悔させてやんよ!」」


ダークブレイズに火が入る。しかし、その炎は普段より勢いが無い。


身体を蝕む虚脱感は継続している。


ガルンは釵を待つ魔神を睨み付けた。

変調を導く魔眼は向こうの能力である。


クロックワードが三度目の刻印を地面に打ち込むのが見えた。


マジックサークルが波紋を拡げるように拡大して、一瞬で大地にシンボルを刻み付ける。


刻印を地面に打ち込むだけで、呪文の構成がほぼ 完了するシンボル・マジックは高速呪術言語並に完成スピードが早い。


そして魔法陣をベースにしているお陰で、召喚魔法円にも転用が可能である。


これは呪文を唱えている隙が最大のデメリットである魔術師の、短所をかなりカバーしていると能力と言えるだろう。


「魔・霊・地・焜・殻……」


クロックワードの呪文が響く。


ガルンは飛び出すのを一瞬躊躇した。


魔道士を潰せる時に潰すのは戦闘のセオリーである。


だが、この魔眼の魔人を先に潰さないと、後々厄介になると直感が囁く。




ガルンの一瞬の躊躇が先手を逃す結果となった。


「避けろ!」


竜人の叫びで咄嗟に後方に跳ぶと、先程までいた眼前の空間が爆発する。


「!!!」


熱波が身体を押し退ける。威力が先程の倍だ。


後退したガルンとは逆に、白き銀嶺は爆発する空間を何とか避けながら前進する。


クロックワードが魔法円に、懐から何か種の様な物を撒いているのが見えるが、ガルンは一先ずクロックワードを後回しにする事にした。


ハルバートの相手を白き銀嶺がするなら、釵の相手をガルンがするのは当然の判断と言える。


(……? 白き銀嶺は爆発の魔眼を見切っていた? どうやった)


魔人に突進しながら考える。


魔人の黒眼が光る。


再び身体を突き抜ける衝撃で、ガルンはたたらを踏んだ。


暗転しそうになる視界を唇を噛み締めて繋ぎ止める。身体の脱力感は倍増だ。


「くっ……そ、だが!

見切った!」


チャクラをフル回転して動き出す。


釵の魔人の瞳がガルンを三度捉えた。しかし、その瞬間、ガルンは横にサイドステップを混ぜる。


「!?」


驚いた表情を魔人は浮かべた。


ガルンは魔剣を振りかぶるとほくそ笑む。


(ビンゴだ!!)


確証と共に炎の魔弾を打ち放った。




魔人はそれを羽根を羽ばたかせて躱すと、上昇に移った。が、広いと言っても地下フロアーである。


高さは八メートル程しか無い。


実際、羽根を広げた魔人は三メートル程あり、天井を考えれば、実質五メートル程の高さにいるようなものだ。


「高さがたらねぇよ!」


チャクラを脚力に集中。

ガルンのジャンプは軽々しくそこに届く。


魔剣一閃。


魔人は身体をひねって躱したつもりだったが、ダークブレイズの焔が羽根を焼く。


落下しながらも魔人はガルンを睨みつけた。

いや、正確には睨みつけようとした。

しかし、魔眼で見つめる先は爆炎のカーテンが埋め尽くしていたのである。


「!!」


魔人は素早く左目をつぶると、ゆっくりと目を見開いた。


赤いオーラが漏れる。


目の前の炎は、何と全て左目に吸い込まれたのである。


床に着地したガルンは、撃ち放った炎が吸い込まれる様を見ても、淡々とそれを眺めただけだった。


「やはりな……。だが……ネタが分かれば対処方はいくらでもある」


ガルンは魔剣をゆっくりと下段に構える。


羽根を負傷した魔人は荒々しく床に着地すると、

ガルンの姿を追う。




しかし、脚力にチャクラを回したガルンの動きに、動体視力が追い付かない。


「ぐぅるウ……!!」


低い唸り声と共に魔人は釵を構えた。


魔人の死角死角へと移動するガルンの動きは、対魔眼持ち相手には基本戦術に近い。


しかし、それを可能とするには人外のスピードが必要であり、相手の動きを先読みするセンスと動体視力が必須である。


業を煮やしたのか魔人は動きを止めた。


口笛のような甲高い声を出し始める。


(……口笛? いや……違う……あれは)


ガルンは好機と判断して背後から切り掛かった。


魔人の体の回りにうすっらと白い靄が現れる。


ガルンの接近に気付いた魔人が振り返るが、その時にはダークブレイズの剣先が振り下ろされた後だ。


釵で受け止めようとしたが、釵ごと右腕を根本から羽根共々切り裂かれる。


「!! 浅い!」


ガルンは舌打ちして、もう一撃を浴びせようとして、魔人の視線に捉えられている事に気付く。


魔人の瞳が力を発揮する前に、仕方なく左へ駆け抜けた。


先程までいた床が軋む音を立てて励起する。


ガルンはそれを目の端で捉えながら、自分の推測が正しいことを再確認した。


(やはり、こいつの魔眼は……吸収!!)




ガルンの予測はあらかた当たっていた。


この魔人は千眼の魔神バロール・フェロスと呼ばれる、魔性の神の一眼を宿している。


能力は“吸奪”。

対象者の生命力を奪い去る力を持つ。

エナジー・ドレイン(生命吸収)に似ているが、この魔眼は目に見える物なら対象を選ばないで力を奪いとる特性を持つ。


霊妙法やチャクラを身につけているガルンだからこそ耐えられているが、チャクラや霊殻防御の無い人間なら一撃で行動不能のレベルだ。


見るだけで発動する魔眼は、かなり高位の能力と言える。


だが、魔眼を見切ることは不可能では無い。

実際、ガルンや白き銀嶺は魔眼の発動を見切っていた。


魔眼は瞳に力を集約するためか、視線の中心に目標を定める。


その事から、視線の中心、対角線上から身体を外せば直撃を受けないのだ。


そして、発動する時には必ず瞳孔が収縮する。

これはガルンだけしか気付いていない事だが、完全に発動タイミングを見切ったと言えよう。


(その口笛!呪文だろうが遅い!)


バランスを崩した魔人にトドメの一撃を放とうして、右側に唸り来る風切り音に気付いた。


「?!」


咄嗟に右腕をガードに回すが、質量が違いすぎて意味を成さない。


ガルンは何かに強烈に弾き飛ばされていた。




濁流に飲まれたような衝撃を受けて、ガルンは壁際まで弾き飛ばされた。


何とか受け身を取るが、直ぐには立ち上がれ無い。

右腕と脇腹に鈍い痛みを感じる。


魔眼の影響でチャクラの回転率が低すぎて、ダメージを相殺しきれなかったのだ。


ガルンは頭を振って吹き飛ばされた先を見た。


そこには――異形の影が立っている。


「……!? 何だアレは」 

ガルンが唖然とするのも当然だ。それは、あまりに無機質な存在だった。


床から生えた樹木が上に向かう程萎んでいき、その頂点に燃え上がる太陽のような球体が浮いている。そして、その回りを星の衛星の様に、光の輪が循環していた。


奇妙なのは、その輪から

樹木の蔦が、まるでタコの足のように八本生えている事だ。


ガルンを襲った一撃はこの一つである。


常に気をはっている、プラーナ探知にも引っ掛からなかった事から、生命体とは言い難い。


「……!! 何だ。そのふざけた物は?」


異形の影に寄り添う人影を睨み付ける。


「このデザインの秀逸さが分からんとは嘆かわしい。貴様らを倒すために、わざわざ貴重な世界樹の種まで投入したのだぞ?光栄に思って貰いたいな」


クロックワードは、クックックッと低く笑う。




ガルン同様、白き銀嶺も横合いから一撃を入れられたのか、同じ方向に倒れている。


クロックワードを野放しにしたのは裏目に出たらしい。


魔人二体に錬金魔術師。


どれも一対一なら打倒可能に思えるが、三対二はパーティープレイと考えれば雲泥の差だ。


(魔眼の魔人は隙がなさすぎる。かと言って、これ以上意味不明な敵を造られても厄介……)


ガルンは立ち上がると竜人を見た。


白き銀嶺もガルンに視線を送る。


この状況で効果的な手段は二つしか無い。


一つはツーマンセルで、相手を各個撃破していく。


もしくは、一人が二人の足止めをして、もう一人が一人一殺を試みる。


二人は視線を合わせて苦笑いした。


戦略を納得したらしい。


どうやら、この竜人とはかなり気が合うようだ。


白き銀嶺の咆哮が辺りに響き渡る。


ハウリング・マジックは異形のクリーチャーを標的にしていたらしく、周辺に吹雪を巻き起こした。


「無駄だな。この炎極の世界樹は高位の炎属性を付加してある。対極の氷結系では同質量以上で無ければダメージは受けない……そして」


ガルンの魔剣の炎が膨れ上がる様を見て、クロックワードは失笑する。


「炎属性の攻撃は、活性化させるだけで意味が無い」




樹木系のクリーチャーは本来、炎が弱点に当たる。その炎が相手の主属性では、ダークブレイズは火に油を注ぐだけのように客観的には見えるだろう。


ガルンは魔剣の炎を高々と上げて――地面にたたき付けたのである。


「?!」


驚く面々の前に粉塵が巻き起こる。


床が融解する程の熱量は、フロアーに大穴を開けるには申し分無い威力だ。


「!! 逃げるきか!

だが、甘い!」


視界を爆煙が遮るが、クロックワードは口の端しを吊り上げた。


炎極の世界樹は、樹木ベースのクリーチャーだ。


“足は無い”がこのフロアーに根を張り巡らせている。


穴など直ぐに根で遮る事が可能だ。


樹木なので移動出来ないと踏んだのが、過ちだとと判断してほくそ笑む。


しかし、ガルン達の狙いは端から脱出ではなかった。


爆煙の中から無数の蝶が飛び出して来た。


「なんだ? 魔術か?」


クロックワードが不審に思うが、先に動いたのは“爆散”眼の魔人だ。


視界に入る蝶を片っ端から焼き払う。


その刹那、爆煙の中から人影が飛び出した。


“爆散”眼の魔人へガルンが。


“吸奪”眼の魔人へ白き銀嶺が向かう。


先程とは逆だ。




未知の“炎極の世界樹”は目くらましで後回しにし、魔人を各個撃破にする戦略を選んだようだ。


ハルバートを向け、爆散眼でガルンを魔人は迎え撃つが、ガルンはヒラヒラと魔眼を躱していく。


一方、片腕の魔人に対して白き銀嶺は、ガルン同様に視界の焦点に入らない様にフェイントを混ぜながら近づいていく。


死角死角と周り込む動きに再び魔人は動きを止めた。


だが、今回は既に魔術が発動しきっている。


魔人の周りの白い霧が、上昇すると天井の風景が揺らぐ。


そこに在られた風景を見て、白き銀嶺は目をむいた。


「蜃気楼か?!」


竜人の叫びはもっともだ。

真上に映し出された風景は、魔人を中心にフロアー全方位が逆さまに映し出されている。


これでは全てまる見えだ。


そして、魔人の視線が、光の屈折した虚像の中に映る竜人に向かう。


ドスンと身体に突き抜ける見えざる衝撃が来た。


竜人の膝が笑う。


(これは……! きつい。)


白き銀嶺は生命力が根こそぎ奪われていく脱力感に苛まれながらも、魔人の失った右腕側――左へと回り込んでいく。


しかし、スピードは先程の半分も無い。


これでは流石に容易に視界に入ってしまう。


魔人は悪鬼の様に唇の両端を吊り上げて微笑した。




吸奪眼が白き銀嶺を捉える。


その瞳孔は縮まらず、逆に大きく見開かられた。


自分の胸を貫いて、水の刃が飛び出しているのに気付いたからである。


背後に目をやると、水の刃は爆煙の中から出ていた。


晴れてきた煙りの中に、人影がうっすらと見える。


それはちょうど、爆散眼でガルンが吹き飛び、その姿が燃え散る紫の蝶に化けた時だった。


動きの止まった魔人に竜人が肉薄する。


「龍勁機甲・鱗透し」


白き銀嶺のとどめの一撃が、魔人を遥か彼方に吹き飛ばした。


受け身も何も無い。

錐揉み回転して落下した魔人は、何か嫌な音を立てて転がった。


発勁の内部破壊と合間ってか、魔人は吐血するとそのまま動かなくなった。


「まず一体」


魔人を刺し貫いた水の刃がするすると縮むと、蝶白夢を握ったガルンが白煙の中から現れる。


ガルンは爆煙の中から一歩も移動していなかったのだ。


飛び出した様に見えたのは妖刀の幻影蝶であり、始めから虎視眈々と煙の中から隙を見つけて一撃を入れる算段であったのである。


ガルンと白き銀嶺は、始めから二人掛かりで一体を倒す戦法を選んでいたのだ。


目くらましから、幻覚での陽動。


ガルンが白き銀嶺と、クロックワードが残した三体の騎士と戦った時に使った戦法である。




「さて……次はどうする」


白き銀嶺は片膝をついて他の標的を見つめる。


吸奪眼の威力は絶大だ。

本人は知らずにチャクラを使っているからこそ耐えられている。だが、身体の脱力感は過去に感じた事が無い、疲労のピークに達していた。


(外気功で体力回復を試みるには、時間がなさすぎるな……)


竜人は薄く自身を嘲笑う。


体力の無さか、力のなさか。


先に数発は吸奪眼を受けている、人間であるガルンの方が平然としている方が驚嘆に値する事だろう。


だが、ガルンも内心は低下しているチャクラの稼働率に舌を巻いていた。


チャクラ全体の回転率が落ちている。


これならチャクラが一、二個使用できない方がマシだ。


「……先に、“戦力を造れる”錬金魔術師を倒したい所だが……。あっちの魔人をいなしながらは難しいか……」


ガルンは妖刀から水泡をポコポコ出しながら呻いた。


だんだんと吐き気が振り返してくる。


姫の側の居心地の良さに、塔の瘴気を忘れかけていた。


「……ならば、先に爆発の魔人か」


白き銀嶺は低い声で唸り出した。


身体の回りに魔法円が形勢される。


回復魔法かとガルンは興味を示したが、回復魔法が得意な竜種と言うのは聞いたことがない。




先天的な防御力と治癒力が備わっているために、回復魔法などを身につける必要性が無いためだ。


魔法円の発光と共に、竜人の姿が薄らいで行く。


ガルンの目が細まる。


精霊の眼が、白き銀嶺の存在が変化している事を伝えてくる。


(なんだ? 存在の光が……凝縮しているのか?)


完全に光が消えると魔法円も跡形なく消え去った。


後には竜人の姿は無くなっていた。


「……はっ?」


珍しくガルンが間の抜けた声を零す。


そこには銀髪の女性が跪いていた。


「……?!」


唖然とするガルンを見て、銀髪の女性は不思議そうに顔色を窺う。


「変化の魔術だ。そんなに下手か? この姿で世界を巡っていたのだがな」


「……いや。お前、雌だったのか……」


「……? 始めから女ではないか?」


白き銀嶺の言葉にガルンは苦笑いを浮かべた。


爬虫類――竜種の外見は判別出来ないと漠然と思う。


存在の光も竜種自体を見たことが無いので、男女の差異が分からなかったのだ。


「そうか……あの爆炎の瞳相手には、ドラゴンニュートの体格では的としてデカすぎる。人間サイズの方がましか……」


ガルンの指摘に白き銀嶺は頷くと立ち上がった。






「物理身体能力と強度、耐久性は落ちるが、体重が減った分スピードは上がる。そして、なにより体力が持つはずだ」


竜人の言葉にガルンは納得した。


そこは、渡り歩いて来た熟練の成せる技だろう。一瞬で自身の状態を考慮し、即座に効果的な手段に移るのに躊躇が無い。


確かに燃費を抑えるのには賛成である。


「流石に同じ手を二回は無理か……。だが、俺が魔人の相手をすれば良かったんじゃないか?」


ガルンの疑問に竜人は首を振った。


「あの魔眼は、芯を外しても爆発の効果範囲が広い……、人の身でも竜人である我の方がダメージは少ないはずだ。それに……。奴は勘違いしているようだが、貴君の剣、ただの炎の剣ではあるまい?」


「……!」


ガルンは白き銀嶺の鋭さに驚嘆した。


白き銀嶺にはダークブレイズの本気に近い一撃は、一度しか見せていない筈である。


ハウリング・マジックを突破する時だけだ。


魔剣ダークブレイズは闇主側の兵装である。


精神力の足らなさから、通常は炎の剣として使用しているが、本来は負の属性を帯びる地獄の業火に近い。


ようやくチャクラを注ぎ込む事で、その領域に近づけるのだ。


ガルンは今の所、極超高熱の蒼い焔までしか出せていないが、本来は闇属性の“黒い焔”なのである。




そして、ガルンには不安定ではあるが、虎の子の滅陽神流剣法もある。


そう考えれば戦う相手も、正鵠を射ていると言えるだろう。


(……問題は、今のチャクラの状態でダークブレイズの真価を発揮出来るかか……)


ガルンは妖刀を鞘に戻して、ダークブレイズを手に取る。


(チャクラを全て費やせば……黒い焔に届くか?)


霊妙法使用に時間が掛かるガルンには、滅陽神流剣法を使うには一抹の不安が残る。


この状況下ではダークブレイズに力を割くのは当然であろう。


「!! まずい!」


竜人の叫びにガルンは反応した。


爆散眼の魔人の周りに白い霧が立ち込め始めたのである。


明らかに吸奪眼の魔人が使ったのと同じ、蜃気楼の魔術であろう。


二人が話している間、様子を窺っていたのでは無く呪文を唱えていたのだ。


うかうかしているとクロックワードも、新たなクリーチャーを錬成しかねない。


「考えている余裕は無いな。魔人は任せる! 」


ガルンが腕を振るうと、空に舞っていた水蝶が敵に向かって羽ばたいた。


それを見届けもせずに、ガルンは腰を据えて魔剣を構える。


炎が爆ぜる音ともに、魔剣から炎が立ち上った。


「クックッ、炎は無駄だといったぞ!」



「そりゃどーも。効くか効かないかは自分で確認するさ」


チャクラを魔剣に総動員で回す。


ダークブレイズからほとばしる炎は、ゆっくりと蒼く色を変えていく。


(油断しているなら、好都合。回せるだけチャクラを回す!)


魔剣の炎の色の変化に、ようやくクロックワードは気が付いた。


しかし、視界に現れた水蝶がその姿を遮る。


「チっ! やれ!」


クロックワードの声で極炎の世界樹の触手が唸った。


次々に水しぶきに変わる蝶に眉を寄せていると、異様な寒気が背筋を通る。


ぞっとしてガルンを見ると、その原因が一目瞭然であった。




小規模な爆発が続く。


眼前に広がる蝶は邪魔らしく、爆散眼の魔人は視界に入る蝶を片っ端から吹き飛ばしていく。


距離を詰めるには持ってこいなので、白き銀嶺にとっては有り難い事である。


だが、魔人の頭上には蜃気楼が出来上がりつつあった。


(……刺し違える覚悟が必要か)


蝶を全て消し飛ばし、とうとう視線が竜人を映す。


その瞬間、白き銀嶺は床に踵をたたき付けた。


「竜勁機甲・波濤亢華!」


空間爆発。


白き銀嶺は爆散眼の一撃に一瞬で巻き込まれた。


だが、爆発に巻き込まれたのは竜人だけではない。




魔人も足元から噴き出した気柱に飲み込まれたのだ。


地面を媒介に気を伝わせる奥義。


完全に盲点だったらしく、魔人は綺麗に吹き飛んだ。


逆に爆発に飲み込まれたはずの白き銀嶺は、その場に踏み止まっていた。


始めから一撃を受ける覚悟で、気を体中に張り巡らせていたのである。


「耐え切った。この勝負、貰う!」


その言葉と共に、白き銀嶺が弾けるように前に飛び出す。


着地する前に視線が竜人に向く。だが、スピード重視の白き銀嶺の動きを捉えきれない。


二度程、空間が爆散する頃には完全に死角に滑り込んでいた。


「龍勁機甲・鱗透し!」


落下してきた魔人の後方から、心臓目掛けての一撃が入る。


魔人は着地も出来ずに、再び吹き飛んだ。


白き銀嶺は技の構えを解く前に片膝を地につけた。

爆散眼の一撃は完全に防御しきれなかったのである。


「くっ……人に変化したのが仇になったか」


スピードで撹乱して戦うつもりが、蜃気楼の魔術のせいで短期決戦を強いられたと言える。


どいらにしろ、蜃気楼の魔術が完成していたら爆散眼から逃げるのは不可能に近い。


白き銀嶺の選択は正しかったと言える。


しかし――


吹き飛んだ先で、魔人がゆっくりと立ち上がる姿があった。




魔人は緩慢な動きながら竜人に顔を向ける。


力を使い尽くしたのか、竜人は片膝で座り込んだままだ。


魔人の魔眼が光る。


――瞬間だった。


視界が真っ赤に染まったのは。


五感全てに倦怠感が纏わり付く。


「悪いな。元同僚だからこそ。きっちり滅ぼしてやんよ」


愕然とする魔人の耳元に囁く声が聞こえる。


それが魔人の聞いた、最後の言葉だった。




立ち上る黒い炎。


背筋を凍らせる異質なプレッシャーに、クロックワードの顔色が変わる。


「なっ……? 何だあれは!! 」


光の反射がない、濃淡な黒い濁流。


炎と言うより、黒い渦の塊のようにしか見えない。


ガルンの顔に悪童のような笑みが張り付いている。


「チャクラ六つの全力攻撃だ。炎が効くかどうか試させてもらう!」


振り下ろすダークブレイズから、漆黒の炎刃が解き放たれた。


クロックワードは慌てて飛びすさる。


迎え撃つように、炎極の世界樹の触手が伸びた。


黒い炎は触手に触れるとその勢いが削がれていき、残り全ては中心の炎球にあっさりと飲み込まれてしまった。


「……」


ガルンの目が細まる。


クロックワードは慌てて飛びのいた為、床の上だ。




「たいした威力ではなかったようだな」


錬金魔術師は顔を引き攣らせながら立ち上がる。


すると、いきなり異様な破砕音がクリーチャーの内部から発生し始めた。触手の所々から黒い炎が溢れ出す。


そして、炎の球すら、色が黒く変色し――まるで皆既日蝕のように黒ずみ燃えちりだしたのだ。


「馬鹿な?! 炎属性が耐えられない炎だと?!」


「残念だが……効いたようだな」


目を剥くクロックワードを、ガルンは嘲笑気味に笑い飛ばす。


極炎の世界樹がゆっくりと黒く炭化していく。


まるで薄紙が燃え散るように、木片も落ちずに全て灰に帰す。


クロックワードは舌打ちすると床に杖を叩きつけた。


「定、予、気、木、断、剪、離!」


シンボル・マジックにより魔法円が広がっていく。


それは極炎の世界樹を飲み込むと、根元からいとも簡単にへし折ってしまったのだ。


「……?」


ガルンは息が上がるのを平静で装いながら、落ちた松明のように転がる極炎の世界樹を見た。


後には切り株だけが残された様に見える。


「自ら伐採とは踏ん切りがいいな? 降伏して姫さんをとっとと返したらどうだ?」


ガルンはわざとらしく軽口をたたくと、悪びれないで胸を張った。




実際、チャクラを全力で同時展開したため、回転率が下がりきっている。


その回復を待つための時間稼ぎでの軽口であったのだ。

本来なら今がクロックワードを畳み掛ける、絶好の機会である。


クロックワードはそれに気付いているのか、いないのか、ゆっくりと切り株に近づくと懐から小瓶を取り出した。


軽く手で握りしめると発光が起こる。


それを切り株に降りかけると、幹に杖を叩き付けた。


「臨、気、水、命、増 、光、輪、活、生!」


クロックワードの声と共にフロアー全体が軋み始めた。


まるで直下型地震にあったような振動。


「なんだ?!」


違和感にやっとガルンは気がついた。


魔術のためか精霊の眼に、フロアーの床に張り巡らされた蜘蛛の巣のような根を、ようやく捉える事ができた。


その根っこのあちこちが光を放ち始めていく。


「い出よ! 極寒の世界樹!」


叫びと共に床を突き破って、樹木のクリーチャーが再び姿を現した。今度は四体である。




「……!!」


ガルンの顔が強張る。


現れたのは極炎の世界樹と瓜二つであった。


違いと言えば中心に在った炎の球体が、うごめく水の球体に変わっている所か。


それが、切り株を中心に東西南北に姿を現したのだ。


「くっくっく! “世界樹の虚像”はあらゆる元素を吸収して幾らでも甦る。炎が駄目なら、次は水だ」


クロックワードの嘲笑う声がフロアーに響き渡る。


ガルンは舌打ちして魔剣を構え直す。


(……根っこか。あれが再生の根幹)


クロックワードが幹を切り倒したのは、根まで焼き尽くされないようにとの配慮だったのだろう。


それが分かれば黒炎のダークブレイズで、根を焼き尽くせば済む話ではある。


だが、現状のチャクラの状態では、黒炎のダークブレイズまで精神を練り込むのには時間が必要だ。


新たな四体にクロックワードの相手となると、難しいと言わざるおえない。


「やれ!」


ガルンの出方を窺わずに、動いたのはクロックワードだった。


声に釣られるように、近場の極寒の世界樹の触手が唸る。


ガルンは計八本の枝を魔剣で弾き払う。


しかし、本来なら魔炎も合間って一撃で切断出来る所だ。


だが、それが出来ない。


(火力が落ちている!)


触手に燃え移った炎は、一瞬で水属性の加護で鎮火してしまう。





ガルンに追い討ちをかけるように、右方向の極寒の世界樹の水の球体に変化が起こる。


無数の波紋が拡がると、“波紋”がそのまま浮き上がったのだ。


それに気付いてガルンは距離をとろうとするが、今度は左方向の魔樹から触手が伸びる。


死角に回り込むように触手が回り込む。


(退路を塞がれた!)


チャクラの回転率はガルンの戦闘力に直結する。


今のガルンには触手をすり抜けて脱出するスピードが無い。


身動き出来ないガルンに向けて、中空にある波紋は水刃に姿を変えて襲い掛かった。


「……!!」


ガルンはなけなしのチャクラを全て防御に回す。

それで防ぎきる保証は皆無だが、ガルンには選択肢か無い。


衝撃に耐えるために歯を食いしばる。


「やれやれだな」


唐突に近場から声が聞こえた。


聞いた覚えのある女性の声が。


驚くガルンの足元から銀色のケープが飛び出した。


それが円状に開くと、水の刃を全て弾き返す。


「なっ?!」


ガルンの驚きも最もだ。


そのケープはガルンの足元、影から出ていたのだ。


そこから人影が飛び出す。銀色のシルエットはまるで翼を広げたスワンのようだ。


姫を掠った敵を思い出して、ガルンは身構える。




しかし、そこから現れたのはつい数刻前に出会った人物だった。


銀髪緋眼の少女。


王宮近衛騎士団の吸血鬼。


自らをゼロと名乗り、パリキスがアズマリアと呼んだ少女だ。


「貴様には期待していたのだからな。もう少し頑張って貰おうか」


影から現れた少女は事無げにそう告げると、先程広げた銀のケープを手首のスナップ一つでマントの下に仕舞う。


「王宮近衛のアズマリア……」


ガルンの呟きに少女はピクリと反応した。


何か珍妙なモノを見つけたように、ひどく驚いた表情を浮かべている。


突然の闖入者にクロックワードは目を見開いた。


「1番槍の切り込みとしては、よくやってると思うがな? この女は誰だ?」


新しい声に目を向ける。


全身赤ずくめの男が、地面に倒れ伏した魔人の真横に立っていた。


ガルンは転移ゲートであった男を思い出す。


黒鍵騎士団の数少ないチャクラ開放者――ユウスケ・アカイだ。


クロックワードは倒れ伏した魔人を見て歯軋りした。


「……!! よりによって貴様か。 魔眼封じ……視覚封じの“レッド・インパルス”のアカイ!!」


視覚封じ。


ガルンは多節鞭使いのハオロンに、因縁を吹っ掛けられた時を思い出した。


網膜を完全に“赤い色”で覆われた事を。


あの能力は正しく魔眼殺しでは無いだろうかと、うっすら考える。


視力ゼロで対象が見えなければ、普通に考えれば眼力なぞ使いようが無い。



「間に合ったようだな」


声と共に唸る轟音。


触手を粉砕して、光り輝く円盤が通りすぎた。


出来上がった退避路から、ガルンは素早く触手の囲みから飛び出す。


そこには、戻って来たシールドを受け取めるライザックの姿があった。


「何だこの化け物は? トレントか」


「……錬金魔術師の生み出したクリーチャーだ」


ガルンは周りを見回す。助っ人の存在が三人しかいない事に気がついた。


「……? 他の奴らはどうしたんだ?」


「あいつらは上を目指したままだ。流石にこれ以上時間をかけるのは得策ではなかったからな」


近づいてきたライザックを見てガルンの目付きが変わる。


「あんた……戦律神の手の者じゃないな?」


唐突な言葉にライザックは目を丸くした。


ガルンの精霊の眼には、動揺するように揺らぐ存在の光が手に取るように分かる。


どう考えてもネーブル達を呼ぶ方が、ゼロ達を呼ぶより早いのは自明の理だ。


「まあ、良しとしろ。それは任務を忠実に遂行しているだけだ」


答えたのはライザックではなく、触手の中心で今だ突っ立っている少女だ。


「そいつは“内の手の者”だ。姫への手掛かりを見つけたら、第一に私に報告するようにいってある」




「……なるほど」


ガルンは納得した。

王宮近衛騎士団の潜伏者でも合点はいく話だ。

戦律神の出と言うのも本当の事かもしれない。


二重スパイの可能性も考えられる。


ただ、この男の本命が王宮近衛騎士団だったと言うだけの話だ。


そのためゼロへの報告を優先させたのだろう。


その事を語ったゼロは、一瞬で周りの触手に絡めとられてしまった。


触手の包囲網の中に居っぱなしなのだから、当然と言えば当然の結果だ。


直ぐさまガルンとライザックは武器で触手を斬ろうとしたが、ゼロは涼し気に手でそれを制した。


パキパキと枝が砕けて行く音が木霊する。


触手は枯れ木のように変質していき、ゼロを包んでいた枝は全て砕け散ってしまった。


まるで氷細工をハンマーで砕くようなお手軽さ。


「……」


ガルンは極寒の世界樹に宿る水気が、一瞬で枯渇するのがプラーナの流れで分かった。後は枯木を力まかせでへし折っただけだろう。


(エナジー・ドレインか……)


ガルンは先程の『吸奪眼』の魔人を思い出す。


エナジー・ドレイン〈精力吸収〉と呼称される能力は数多にある。


吸奪眼もその一つだ。


高位の吸血鬼は触れただけで、熱を奪うように相手の生命力を吸収していく能力を持つ。




だが、ゼロのエナジー・ドレインは常軌を逸しているレベルだ。まるで触れたものから命を根こそぎ奪うかのような勢いである。


(違うな……あれはエナジー・ドレインじゃない。生命を減衰……枯渇させる何かの能力だな)


ガルンはそれを茫洋と眺めた。


チャクラを主力に使うガルンにとって、生命力を吸収する能力は天敵と言える。


それが今回の戦いで身に染みて分かったばかりだ。


「ライザック! そいつに回復魔法をかけてやれ。そいつは“まだ”行けるはずだ」


「……」


ゼロの言葉で、ライザックはガルンのもとに駆け寄ると、直ぐに呪文を唱え始めた。


シールドに魔法防御の呪印を使っていたのを考えれば、ライザックは神官戦士の可能性は高い。


呪文を唱え終わると、手をガルンの胸に当てた。


ゆっくりと疲労感が払拭されていく。


しかし、パリキスの回復魔法とは月とスッポンの差がある。


「姫の元へはまだ届かないのか?」


ライザックの言葉に、ガルンは歯ぎしりして拳を握りこんだ。


「一度助け出したが……また掠われた。下の下層に逃げた筈だ。影を渡る能力持ちがいる。先を急がないと……まずい予感がする」


右前方でつまらなそうに、触手を朽ち砕くゼロの姿が見える。


影から現れた事から、この少女は影側の領域に足を踏み込めるはずだ。




「影渡りの能力持ち相手じゃ、逃げられる可能性が高い……あいつの能力がいる」


ガルンはゼロを凝視したままだ。


その視線に気付いてライザックもゼロを見る。


「彼女無しでは……ここを切り抜けるのは難しいぞ」


「……ここは、俺一人で何とかする。あんたらは先に行っててくれ」


そう言うとガルンはダークブレイズを構え直す。


いくら体力を少し回復させたと言っても、一人で相手にするには土台無理な話に見える。


「うわっ、何だ? あの化け物?」


「あっ! ガルン発見!」


「おい、あれで一体にカウントするのか? 面倒くせえ~な」


新しい声が聞こえて来た。渡に船とはこの事だろう。


現れたのはネーブル、グレイ、ハオロンだ。


それを見てゼロはニヤリと笑う。


「露払いが出来たな。ライザック。貴様はあいつらとこいつらを黙らせろ。アカイ、それに小僧!お前達は私に付いてこい」


ゼロの視線はガルンに注がれている。まるで射ぬくような力強さだ。


「やれやれ、人使いが荒いことだ」


アカイは頭をボリボリ掻きながら、仕方なさそうに返事をする。


ガルンは冷ややかな視線を返した。


「……何故、疲弊している俺を選ぶ」



ガルンの言葉でゼロの表情が変わる。


不機嫌そうにクリーチャーを無視してガルンに向かって歩き出した。


それを狙うように背後から触手が襲い掛かる。

それを見てライザックはぎょっとして、慌てて割って入って盾で受け止めた。


「どっ、どうしたんですか?!」


驚くライザックに一瞥もせずに、無言でゼロはガルンの元まで歩み寄る。そして、おもむろに胸倉を掴んで顔を近づけると、小声で話し出した。


「お前が我が真名を知っていると言う事は、姫様と接触したと言う事だろう? 救出された安堵感から姫様が口を滑らせたと言ったところか。だが、救出した姫様をまた掠われるとは嘆かわしい! 万死に値するが、今一度チャンスをやる。次は姫様の信頼を裏切るなよ?」


朱く光る瞳には殺意に近いものが窺える。


それは雪原で凍り付く湖の下で、マグマが煮えたぎっているような異質な怒りが放たれていた。


ガルンは瞳を睨み返すと、ぞんざいに胸倉を掴んでいた手を打ち払った。


「そんなもん、言われなくとも分かっているさ! 目の前で助けたい人間を助けられない憤りは、もう、懲り懲り何だよ!!」


ガルンの瞳に黒い焔が宿り始めた。


沸々と今までの記憶が甦って来る。


姉を……、

グラハトを……、

カナンを助ける事が出来なかった純粋な怒り。


自分の力のなさが、救いの手にならない現実。




何か、寂しそうな佇まいの姫君の姿が思い出される。


国の重圧を一身で受けている孤独な少女。


半身を呪われながらも、気高く生きようとしている孤高の魂。


パリキスは一度も自分の身を案じていなかった。


想うは国の事だけだった気がする。


「……治療して貰った借りは、きっちり返す。俺の命に賭けてもな」


ガルンの瞳に活力が戻ったのを察して、ゼロはニヤリと笑った。


「その心意気、忘れるな。貴様の信念見せて貰うぞ」


ゼロは何か楽しげにネーブル達に顔を向ける。


「お前達は、このデクの棒の相手をしろ! 我らは先を進む!」


極寒の世界樹を親指で示すと、ゼロは銀色の風の様に走り出した。


ガルンもそれに続く。


「何だよそれ?!」


ネーブルは不機嫌そうに呟く。


横でハオロンが唾を吐き捨てているのを見て、グレイは肩を竦めた。


「全く。ネーブルが追い付いて来ないガルンを心配して、わざわざ戻って来たらこれか」


「だっ、誰が心配してだ! あいつは妙に感が鋭いから気になっただけだ!」


喚くネーブルを、手で制してグレイは双剣を抜く。


「まあ~、そう言う事にして置いて……うげっ!」


ネーブルの肘が鳩尾に入って、グレイはよろりとぐらついた。




「まったく! 損な役割じゃないか。 後でガルンにしこたま奢らせてやる!」


癇癪気味にネーブルはカトラスを手にする。


相手は明らかに上官職なのだから、文句を言いたくとも言えはしない。


「そういえば、あんたは何で付いて来たんだ?」


チラリとネーブルはハオロンを見詰める。


ハオロンは多節鞭を握りながら舌打ちした。


「いくら俺様でも、一人でこの塔を踏破するのは無理だ。貴様らに付いていくしかなかったんだよ! くそ!」


愚痴る姿は、仲間外れにされた子供のようである。


「んまあ~、お喋りはその辺で。さっさと援護しないと後が怖いぜ?」


グレイは話しに割って入ると、双剣を交差させて呪文を唱え出した。


「そんなのは分かってるって!」


ネーブルは叫ぶと、弾丸の様に飛び出した。


ハオロンがそれに続く。


「元気なこって!」


刀身の回りに見えざる力が宿る。


耳障りな風の音は、剣につむじ風が纏わり付いているためだ。


魔法剣。


風属性の力を宿した剣は、風を自在に操り敵を駆逐する。


「さあ~、行きますか!

エア・ストライド!」


放たれた真空の刃が、新たな戦いの火ぶたを切って降ろした。




フロアーを抜けるのは至極簡単であった。


クロックワードの視界をアカイがレッド・インパルスで塞いだのだ。


命令を受けない極寒の世界樹は、手近な攻撃対象に目標を移すらしく、今ではライザック達に矛先が向いている。


ガルン達はその間にフロアーから回廊に抜け出したのだ。


「姫を拉致した奴は下に向かっているのか?」


ゼロの言葉にガルンは頷く。


姫を影に飲み込んだ存在は、明らかに下に向かって姿をくらました。


シャドウサイドの世界は、こちらとは物理法則が違うのが、精霊の眼でも探知出来ない。


「顔色が悪いぞ? 大丈夫か?」


アカイの言葉は最もだ。

ガルンの顔色は見るからに悪い。


(くそっ! 下から昇る幽気が濃くなっている。また、ぞろぞろ殺してやがるな)


今の疲弊したガルンでは、死者の放ついびつな悍気を我慢出来ない。


仕方なくチャクラの一つを状態維持に回す。


こう何度も同じような状態に晒されても、一向に馴れる気配は無い。


生者が死に馴染むには土台無理があるのだろう。


それが可能な生者は、何かが壊れているか、別の何処かに足を突っ込んだとしか言いようが無い。


「地下から怨嗟の呻きが聞こえる。下で何かしているな……」


「分かるのか?」




「贄に関しては我らは敏感なのでな」


ガルンの疑問にゼロは微笑した。


その口からはチラリと乱杭歯が見えている。


吸血鬼の直感と言うやつらしい。


「先に言っておくが、姫を掠った奴は影を操る力を持っている。シャドウサイドに入られたら……」


「任せておけ、伊達に千年は生きていない。そいつの相手は我がしよう」


「千……年?!」


ゼロの言葉にガルンは二の句が繋げられなかった。


冗談を言うタイプには見えないので、真実の可能性は高い。


「闇の眷属には、闇の眷属なりの戦い方がある。

まあ、心配するな」


千年も生きている事にガルンは絶句したのだが、当の本人は戦闘が可能なのかと心配していると、考え違いをしたようだ。


「しかし……お前からは、何故か我らと同じ匂いがする。表現しにくいが ……命を取り込み糧とする何か別の異質な気配が」


ゼロの言葉に、ガルンは内心ドキリとした。


見透かされている。


星狼の血によってガルンは“幽体喰い”が可能だ。


よく考えれば、吸血鬼や吸収能力のある化け物に近いのかも知れない。


滅陽神の剣も合間って、限りなく闇側の住人に近いと言える。


既に存在は変質しているのだ。


ただの人間とは言い難い。





沈黙するガルンを見て、ゼロは視線を外した。


「まあいい。姫の役に立つのなら、人間だろうが化け物だろうが、こだわりはしない」


きっぱり言い切るのを確認してから、


「談話中、申し訳ないが、お出迎えだ」


とアカイが呟いた。


「分かっている!」


と二人が同時に答える。意外と息は合っているようだ。


二人とも新たな敵の出現には気付いていたらしく、直ぐに足を止める。


正面通路の影から、にょっと人影が生えてきた。


黒い人型の靄の顔に、爛々と輝く黄色い光る瞳がスペクターを連想する。


それが三体。


黒い人型がゆっくり動き出す。


気も魔力も意思すらも感じない。


生命の息吹が何も存在しないリビングデッドのようだ。


「なんだコイツは? レッド・インパルスを使ったが、微弱なリアクションもないぞ?」


アカイはいつの間にか能力を使っていたらしい。だが、対人用の能力もこの不気味なモンスターには効果がなかったようだ。


ガルンが無造作にダークブレイズを振りかぶる。


陽炎のように炎が立ち上がると、躊躇無く魔炎弾を撃ち放った。


しかし、魔炎は黒い人型に当たると、あっさりとその身体を擦り抜けてしまう。


魔弾はそのまま通路の奥に飛んで行き、闇の奥で花火の用に散る光を放って消え去った。




(なんだ……こいつは?!)


ガルンは舌打ちした。


今までに感じた事の無い異様な気配。


生命の待つ気配が全てこそげ落ちている。


なのに“生きている”と本能がつげた。


精霊の眼から見ると、限りなく薄黒い存在の光が

明滅している感じである。


緩慢な動きに驚異を感じにくいが、不気味な化け物には間違いない。


「幽境の迷い人か……。面倒な連中を呼ばれたな」


ボソリとゼロが呟く。


「知ってる口ぶりだな。何なんだこいつらは?」


「狭間の住人だ。幽界や霊界、現世の“世界と世界の間にあるとされる世界”に落ち込んだ人間。一つの体で平行世界に同時存在する、多重存在だ。物理攻撃は効かないぞ」


ガルンの疑問にゼロは即答したが、ガルンはますます理解不能になった。


もう一度剣を振るう。


横凪にした魔剣からは、三日月の様な形の炎波を放出した。


通路いっぱいに広がった炎熱波は、黒い人型を飲み込み……やはり擦り抜けてしまった。


「これはマズそうだな……。言っとくが俺は気功しか使えんぞ。相性が悪い。ルートの回避案を提案する」


アカイはさっさっと戦うのを諦めたようだ。

方針転換が早い。


目は泳いでいるが、状況認識の早さは隊長格ならではだろう。




「アレを倒す方法はあるのか……」


ガルンはチャクラを共鳴させて、なんとか回転率を上げていく。


「幽境の迷い人自身を倒すのは簡単だ。奴に触れればいい。アレに触れた生物は“同じ世界”に引きずり込まれる。そこなら短刀の一刺しで事が足りる。ただし、アレと同じ存在となって、二度とこの世界に帰って来れないがな」


詰まらなそうにゼロは答える。が、目には苛立ちがはっきりと出ていた。


姫を救いたいと言う焦りからだろう。


「やはり逃げるが勝ちだな。 この世界では無敵で、そちら側に行って倒せても、結果負けるのでは意味が無い。それにアレの動きはとろそうだ」


アカイの意見は正鵠を射ている。


黒い人型の動きはあからさまに緩慢だ。


「アレはどうやって現れたんだ?」


ガルンは率直な感想で指摘した。


そんな、あやふやで危険な存在が三体も同時に現れるとは考えにくい。


「なるほど。使役されていると言う事か。 召喚した術者がどこかにいる。それを倒せば消える可能性は確かにあるな」


アカイも回りに気を配る。


チャクラ開放者で、気功使いだ。索敵能力は高い。


しかし、探査ならガルンの方が上である。


(チッ……距離があるな。“使った後”の俺じゃ間に合わない)




「か~、気配を感じたぞ。弐ブロック先だ。 数は三人。各々一人一体使役しているな」


アカイの報告に二人は押し黙ったままだ。


ただ、何故かゼロは黒い人型ではなく、ガルンを凝視している。


「奴らを無視して、通路を摺り抜けるのもありだが、触れたらアウトはリスクが高い。あんたは影を行き来出来るんだろ?そこには行けそうにないのか?」


ガルンの指摘をゼロが即座に答える。


「我の能力は影渡りでは無く、“影になる能力”だ。移動自体は影になって移動してるに過ぎない。通路を移動している時に触れられればどうなるか分からん……それより、貴様“何をしている”?」


鋭い視線を感じてガルンは苦笑いを浮かべた。


(この女、敵に回したら厄介だな……)


心の中で警戒する。


何故なら、ガルンは魔炎が効かなかった時点で戦闘手段を変えていたのだ。


三つのチャクラを使っての思念の霊的変換……そして、霊子融合。すなわち――霊妙法による『霊威力』生成。


ガルンは攻撃手段を霊威力攻撃に移行しようとしていたのだ。


あらゆる存在に届く、不可侵突破の超常能力。


ただ、今のガルンでは霊威力を生むのに時間がかかる。


今だ霊妙法の使用途中だ。


それにゼロは気がついたのだろう。




「今から俺が取って置きを使う。それで、あの黒い人型は根こそぎ倒す」


ガルンの呟きに二人は目を見開いた。


当然である。相手は物理攻撃は効かないのだ。


「倒すだと? 貴様、魔法でも使えるのか? それともパティキュラー・マスターか?」


「まあ、それは見れば分かる。ただ、奴らを倒したら速攻で召還師を倒しに行ってくれ。また同じような奴らを喚ばれたら……流石に次は迂回しかなくなる」


アカイの疑問を後回しにして用件だけ述べる。


だが現状ではそれがベストとガルンは判断した。


霊威力は完成しつつある。逆に霊妙法をそのまま維持する方が難解だ。


決めるなら速攻しかない。


「いいだろう。アカイ、正面通路の奥の壁……抜けるか?」


ゼロは納得したのか、アカイに視線を移す。


アカイは片手をプラプラ振ってから、


「了解だ。クライアントの意向には賛同する。今回はお手並み拝見させてもらうぜ少年?」


そう言うと腰を落とし、身体を半身に構えた。


左手は斜め前方下に出して、右腕を引く。


ガルンはそれが何時でも仕掛けていいと言う、合図とすんなり受け取る。


ゼロも身体を斜に構える。


「いくぞ!」


ガルンはダークブレイズに霊威力を流し込む。




ダークブレイズの炎が白銀の澄んだ焔に変わる。


「滅陽神流剣法……参の裁ち・業紡 (ごうほう)!!」


降り抜かれた魔剣から、霊威力を練り込んだ銀炎がほとばしる。


まるで白い風となって炎は回廊を駆け抜けた。


炎なのに熱を感じさせない、清浄な凍てつく熱波。


ゾクリと背筋を凍らせる、常識外れの力を感じてアカイは顔を強張らせた。


それに抗う様に体内の気を練り上げる。


ゼロも目を細めてから、自分の右手首に噛み付く。


銀白の炎熱波を受けた黒い人型は、ノイズのように姿が歪んで一瞬でその存在を掻き消した。


この奥義が、因果律を使った概念時空を忘却浸蝕する、必ず“敵を斬った”事象結果だけを引き出す技だとは、ガルン以外理解出来ないだろう。


神に届く剣技は伊達では無いのだ。


「やるな少年!」


アカイは軽い息吹と共に右拳を繰り出す。


「心意象合拳・空鎖功」


見えざる気功波が空気を伝播する。


距離が二十メートルはある前方の壁が綺麗に吹き飛んだ。


そこ目掛けて直ぐさまゼロは右手を振るう。


噛み切った手首の動脈から血流が噴き出した。


血飛沫は空中で蝙蝠に姿を変えると、開いた穴に殺到した。


壁の奥から悲鳴が上がる。何故か狼の咆哮が聞こえる。


「さて、私の分身でも綺麗に“平らげる”かもしれんが、用心のためにトドメをさしに行くぞ」


サラリと言葉にするとゼロは走り出した。アカイも続く。ガルンだけは荒らい息を整えてから、『了解』と 呟いた。




フロアーには寒波が吹き荒れていた。


風と雪のワルツはその場にいる人間の体温を、体力ごと容赦なく奪って行く。


「なんだ……コイツら」


乱れる息を整えながら、グレイは数メートル後退した。


ネーブルも同じラインまで下がる。


目の前のクリーチャーは“六体”に増えていた。


ライザックの神聖魔法によって白き銀嶺を回復させて、四人での戦いによって極寒の世界樹を二体まで撃破。


しかし、クロックワードの錬金魔術により、新たに四体“極颶の世界樹”(きょくぐのせかいじゅ)が生まれていたのである。


疲弊してきた四人の様子を見て、クロックワードは高笑いを始めた。


「先に行った奴らより、貴様らの方がレベルが低いようだな。貴様らを皆殺しにしてから後を追わせて貰おう」


アカイがいなくなった事でレッドインパルスの効果も消えている。


クロックワードにしてみれば、組み敷い連中が残ったと言う判断のようだ。


「嫌な余裕だぜ。しかし……」


それを見てグレイは愚痴を零してから、ネーブルに視線を移す。


ネーブルが薄く笑っている事に気がついた。


「どうしたネーブル? いつものお前なら、やばくなったら直ぐに逃げるように言う癖に、やけに余裕だな?」


グレイは疑問を口にした。




長年の付き合いから、グレイはネーブルの危機回避の感は飛び抜けていると、勝手に思い込んでいたからだ。


実際は、ネーブルは不安定ながらも未来予測の能力を駆使して、危険ごとから常に逃げるようにしていたに過ぎない。


しかし、どちらにしろネーブルは死ぬ危険性のある戦場には残らないのだ。


それが笑みを浮かべていると言う事は結果が出ていると言える。


「貴様ら何をやっている! どう言う事だクロックワード!!」


唐突に上がった声は後からだった。


フロアーに入って来た新たな三人の人間。先頭の人間――ラインフォートが大声を張り上げたのだ。

左右にフィン・アビスと、無名が続く。


「裏切った見たいですよボス!」


ネーブルがニヤニヤしながら応対する。


ラインフォートは値踏みするようにクロックワードを見つめてから、


「フン、いい根性だ。ギアスが無いからと過信したか。いいだろう。全員に命令だ。奴を駆逐しろ!」


と、宣言がフロアーに響く。


「ハハハ。馬鹿だな~。後衛能力者一人で裏切るなんてね」


フィン・アビスはニコニコと笑みを浮かべる。


しかし、目には冷たい光が宿っていた。


「死に急ぐとはな。残念だよ」


無名もスラリと大剣を抜く。




「陽動部隊はクロックワードまでの最短ルートの進路を確保しろ。 支援攻撃だ。 アビスと無名は中央突破で奴を殲滅しろ!」


ラインフォートの指示が飛ぶ。


正面突破はかなり無茶なようだが、再生能力の高い世界樹シリーズ相手に短期決戦は正しい選択と言えよう。


フィン・アビスは走り出しながら両手を叩く。


耳に重く響く妙な音がフロアー中に反響する。


ラインフォートと無名以外の全員が顔をしかめた。


しかし、白き銀嶺だけは直ぐにその効果に気付く。


(なるほど……音使いか)


竜人の咆哮がそれに続く。


口元辺りから放たれた雷撃が、一直線にクロックワードに向かった。


それを塞ぐように触手が行く手を阻むが、呆気なく焼き切れ爆散する。


「あっ?」


それを見て、直ぐに他の面子も異常に気がついた。


ライザックのシールドソーサーが宙を走る。


迎え撃つ触手は簡単に砕け散った。


「なっ? 何だ」


その違和感に流石にクロックワードも気がついた。


「ストームワインダー!!」


グレイの風の魔法剣が、白き銀嶺が空けた道をさらに切り崩す。


その中心をフィン・アビスと無名が駆け抜ける。


「馬鹿な?! 属性防御が効いていないのか!」


クロックロックワードの顔に焦りの色が出始めた。




次々に砕かれる世界樹は、まるで乾燥しきった枯枝のような脆さだ。


「属性防御は効いているよ。無くなったのは物理防御さ」


フィン・アビスはそう言うと襲い来る枝に軽く触れた。


まるで風船のように、裏側から破裂するように砕け散る。


「……!! そうか共振」


「正解。僕の“共鳴崩壊”は対象の防御能力を著しく低下させる。生命活動が活発だと固有振動を合わせるのは難しいが……」


次々に襲いかかる枝も、掌が触れるといともたやすく砕け散った。


「触れる距離なら結合崩壊なんておてのものだし、離れた距離でも分子結合を緩めるのは可能さ」


フィン・アビスは悪童のように笑みを浮かべ続ける。


超音波による共振攻撃。


生命循環の躍動が少ない樹木などは一たまりもない。


そして……


「グラウンド・バインド」


ラインフォートの神聖魔法が世界樹全てに降りかかる。


遅延効果の呪縛魔法。


急速に動きが鈍くなった世界樹の森を、フィン・アビスと無名は一息に駆け抜ける。


「くそ!」


クロックワードは地面に素早く杖を叩き付け、新たな刻印から魔術を起動させる。


「即・体・硬・精・サイイイ・えェ…あぶぁああ?!」


発音出来ない現実に気がついて、愕然と口を押さえた。




「馬鹿だな~。忘れたのかい? “音使いは魔法使いの天敵”だと言う事を?」


最後の発動呪文が、共鳴音波により相殺された事にようやくクロックワードは気が付いた。


クロックワードの最後の砦となる世界樹も、無名の大剣ムーンライトが一刀両断する。


月の加護を受けたされる宝剣の前では、今の世界樹では薄紙に等しい。


クロックワードは慌ててその場から駆け出した。


だが、目の前に一瞬でフィン・アビスが回りこむ。


「創造喚起のクリエイト・アート(創造魔術)か構成魔術以外の魔法は、音が伝播する限りキャンセルされる」


そう囁きながら、クロックワードの額を鷲掴みにした。


生唾を飲み込んでクロックワードは硬直する。


「隊長格が一人消えるのは非常に残念だよ」


そう言いながらも、フィン・アビスの顔は笑っている。


まるで蟻を潰して笑う、無邪気な子供のようであった。


「まっ、待ってくれ! もう邪魔はしない! 命は助けてくれ」


酷く血相を変えて錬金魔術師は哀願した。


フィン・アビスの表情は変わらないが、額にかかる握力が上がった事が返答のようだ。


クロックワードは顔を引き攣らせて、訪れる死を予想した。


「まあ~待て。条件を飲んだら命は助けてやろう」


後方から声がかかる。ゆっくり近づくラインフォートに、ようやくクロックワードは気がついた。


それが悪魔の囁きでも、クロックワードには選択の余地は残されていない。


ラインフォートは蛇のような狡猾な笑顔を、ゆっくりと浮かべたのだった。


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