第十話:最強の生徒たちと、守られた放課後
第10話です!
追い詰められた黒幕が放つ、地下タワー全体を消し飛ばす広域殲滅魔法。
絶体絶命のカウントダウンの中、セナが導き出した唯一の活路とは――?
規格外の生徒たちによる痛快な蹂躙劇と、平和な学園の日常へ戻る第1章完結編。
ぜひ最後までお楽しみください!
咆哮とともに床を砕き、4方向から超音速で飛びかかる異形兵士「キマイラ部隊」。
セナは壁際で頭を抱えてしゃがみ込んでいる、
「ひぃぃぃっ! 散開して! 真正面から受けたら肉塊にされちゃうってばぁぁ!!」
その絶叫の最中、前衛に立つタクトがヘラヘラと笑いながら両手を広
「あーあ、息合ってないっすね〜。――『幻惑転移・同士討ち』」
タクトの魔力が走った瞬間、キマイラたちの視界が歪み、お互いを「生徒会長」と誤認する。
巨体同士が正面衝突し、すさまじい衝撃波と轟音がドーム内に響き渡る。
そこへ、セリアが優雅にスカートを揺らしながら歩み寄り、足元に魔方陣を展開する。
「身体を無理に繋ぎ止めている強化薬物……成分は『第3種合成魔導筋繊維』ね。――『強制脱水・成分中和』」
パチンと指を鳴らすと、キマイラたちの筋組織に流れていた強化薬物が一瞬で「ただの生理食塩水」へと分解・変質する。
すると筋肉が一気にしぼみ、巨漢たちが激痛に呻きながら膝をつく。
弱体化しながらも立ち上がろうとするキマイラたちの頭上へ、ノアが淡々と黒革のノートから魔力コードを射出。
「神経系の生体パルス、直結で書き換えました。運動機能、オールシャットダウンです」
キマイラ部隊の動きが完全にフリーズする。
「仕上げです。――『氷葬六連華』」
床から瞬時に伸びた氷の結晶が4体を首から下まで完全凍結した。
国家最高峰の研究成果である生体兵器が、戦闘開始からわずか「12秒」で全滅・無力化された。
キャットウォークのバルトロメウス局長が、手すりを掴みながら目玉が飛び出さんばかりに見開く。
「ば、バカな……ッ!? 我がキマイラ部隊が……手も足も出ずに……!? き、貴様ら本当にただの学生なのか……!?」
私はゆっくりと顔を上げ、手すりの上の局長を真っ直ぐに見据える。仕上げといこうじゃないか。
「前座は片付いたよ。降りてきなよ、局長さん。生徒会室より広い場所で、じっくり生徒指導といこうじゃない」
恐怖で顔を青ざめさせた局長の狂気が暴発しそうになる。
手すりを掴むバルトロメウスの指が、恐怖と屈辱で白くなるほど軋む。
「あり得ん……! 我が生涯の研究が、こんな名もなきガキどもの悪ふざけで潰されてたまるかぁぁっ!」
懐から取り出したのは、通常の強化アンプルの数十倍の濃度を誇る、ドス黒い紫色に発光する巨大な試作注射器『オメガ・エリクシル』。
それを見たセナは慌てたように言う。
「ちょ……っ! あれ理論上、人間が打ったら心臓破裂して即死する劇薬中の劇薬だよ!? 正気!?」
……なんだって?アイツ、自らをも投げ出す気か!?
バルトロメウスは耳障りな高笑いを上げながら、自らの太い頸動脈へ注射器を深々と突き刺す。
「ガ……ッ、アアアァァァァッ!!」
血管が全身を這う木の根のように浮き上がり、肉体がミシミシと音を立てて2倍、3倍へと膨張していく。
すると背中から禍々しい紫色の魔導翼が生え、頭部にはねじれた角が形成されていく。
地下プラントのドーム全体を揺るがすほどの重力波と暴風が吹き荒れ、床のコンクリートがめくれ上がる。
異形の魔獣へと変貌したバルトロメウスの周囲に、何層もの幾何学模様を描く紫色の魔力障壁が展開される。
その障壁の硬度は、国家要塞の主砲をも防ぎきるレベルだ。
「クハハハハッ! みなぎるぞ……! これぞ神の力だ!!」
その声は重なり合う怪物のような声だ。
巨腕を振り下ろすだけで、キャットウォークの鉄骨が飴細工のようにへし折れ、破片が弾丸のように生徒会メンバーへ降り注ぐ。
「危ないッ!!」
リサが即座に氷壁を展開して防ぐが、その氷壁にビキビキと亀裂が入るほどの威力だ。なんてパワーなんだ。
バルトロメウスの胸部にある魔導核が、地下タワー全体を消し飛ばす規模の極太レーザーを放つべく赤黒く収縮を始める。
「跡形もなく消し飛べぇぇ!! 貴様らも、この研究室もろとも灰にしてくれるわ!!」
天井から瓦礫がガラガラと崩れ落ち、プラント全体が崩壊寸前の警告アラームを鳴らし始める。
セナが叫ぶ。
「まずい、チャージ完了まであと5秒! あの魔力障壁を破らないと全員消し炭だよ!!」
……流石にまずいか、でも……
瓦礫が降り注ぎ、赤黒い光がドーム全体を焼き尽くそうとする中、セナが猛スピードで携帯端末を叩く。
画面には膨大な魔力波形のエラーログが走る。
セナの脳内はフルスロットルしている。
(無理やり薬物で膨張させた魔力障壁なら、必ず回路の継ぎ目に循環ラグがあるはず……! アタシは監査局首席だ、見落とすわけないでしょ!!)
すると、モニターの波形が一瞬だけ途切れるポイントをキャッチ。(ここだ!)
セナはインカムに向かって絶叫する。
「会長! 喉元の魔導コア! 障壁の再展開に『コンマ0.1秒』の死角がある! そこしか通らない!!」
ノアが「座標固定完了です」と伝え、タクトが「足場、行けます!」と空中に不可視の足場を展開。リサが「会長、障害物はすべて排除しました。行ってください」と、最後の背中をおす。
________やっぱり信じられるメンバーだ。
私は不敵に笑い、思い切り地面を蹴る。
ドォォォンッ! という衝撃波を残し、私ははタクトの作った光のステップを音速で駆け上がり、怪獣化した局長の眼前へと一瞬で肉薄する。
バルトロメウスの胸部から極太の殲滅レーザーが放たれる、まさにその「コンマ0.1秒前」。
私は右拳に、周囲の空気と魔導分子をすべて一点へ凍りつかせる超高密度の魔力を凝縮させる。
生徒の……街のみんなの命を脅かした責任、きっちり取ってもらう。
「――『絶対凝固・全校集会指導』」
振り抜かれた右拳が、喉元の魔導コアへ完璧に直撃する。
パリィィィンッ!!
巨大な魔力障壁が硝子のように粉々に砕け散り、凝固の衝撃波が局長の全身を駆け巡る。
「ぐ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
ドスゥゥゥンッ!!
薬効が完全に砕かれ、元の情けない中年男の姿に戻ったバルトロメウスが、天井から床の瓦礫へと叩きつけられて白目を剥いて気絶した。
暴走していたプラントの魔力反応が完全に停止し、地下ドームに静寂が戻る。
着地したアイラが、ブレザーの埃をパパッと払って息を吐く。
「ふぅ……これで校則違反の役人の指導、完了だね」
固唾を飲んで見守るしかなかったセナは(本当に拳一つで国家級のバケモノを叩き伏せちゃったよ……!)と、呆然としている。
生徒会メンバーは涼しい顔をして片づけに入るのであった。
翌週、魔法省は大混乱の渦に包まれる。
ノアが完璧に抜いたバックアップデータと、セナの監査局ルートからの正規告発により、バルトロメウス局長の収賄・人体実験・私兵組織結成の全貌が公表。
研究開発局は即時解体、局長および幹部連中は全員終身刑の地下牢行きが決定。
なんと監査局内では「潜入捜査で国家反逆の証拠を単独確保した超エリート特務員」としてセナへの特進・特別ボーナスが内定した。
日常を取り戻した学園の放課後、生徒会室。
セナはソファにふんぞり返り、特進の内示書をヒラヒラさせながら調子に乗る。
「ふふん! 見なさいよアンタたち! 今回の事件の最大の功労者として、監査局長直々に特別昇給の推薦が出たんだから! これでアタシも国家の重鎮、もうパシリ扱いなんてさせないんだからね!」
と、勝ち誇った顔で胸を張る。
しかし、生徒会メンバーは誰1人として話を聞いてないのであった。
リサは書類に優雅にサインしながら眼鏡を押し上げる。
「ええ、セナ。その手柄の元になったデータの抽出、誰の術式でしたっけ?」
ノアは携帯ゲームをポチポチしながら
「サーバーのセキュリティ突破、全部僕の仕事ですね」
と興味なさげに答える。
セリアは新作の紅茶をポットに注ぎながら
「薬品の成分分析と解毒剤の調合レシピ、誰が渡したかしら〜?」
と微笑む。
「逃走ルートの監視カメラ改ざんも全部俺っすね〜」
とタクトも続ける。
私?私は机に足を乗せて焼きそばパンを頬張りながら
「で、最後のデカブツをワンパンで沈めたのは誰だっけ?」
と笑う。
「うぐっ……! それは……そうだけど……!」
何も言い返せないセナ。こいつ本当に最初の印象とガラッと変わったな……
リサがスッと千円札をセナの胸ポケットに差し込む。
「では特進が決まった優秀なスパイさん。今日の購買のタイムセール、限定のプレミアム苺大福を人数分お願いできますか? あと1分で売り切れますよ」
「ちょ……っ、購買まで階段3フロアあるんだけど!?」
私はふふっと笑いながら
「走った走った! 買ってこれたら一口分けてやるからさ!」
とセナに手をフリフリ。
「アタシは国家の特務スパイなんだぞぉぉぉぉ!!」
涙目で生徒会室のドアを蹴破り、廊下を全力疾走していくセナの絶叫が夕暮れの校舎に響き渡る。
平和の戻った生徒会室。色々あったけど万事解決ってことで!
このメンバーなら国家転覆だってできるんだ、何もできないことはない!
……この時まではそう思ってた。
そう、この時までは……
お疲れ様でした!第1章完結です!
走り切りすぎやろ(真顔)
飽きない限りまだ続きますがここで一旦休憩させてください……




