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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
年末祭編

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3-1.対峙


この国は、建国時から精霊と共に歩んできた。

『精霊の国』と呼ばれるほど精霊からの加護が強く、精霊の数も他国と比べて桁違いであった。

他国にも精霊は存在するが、契約者が国に数人いるかという希少さである。ルンベリー王国の初代国王が当時の精霊王と契約したというのが、精霊の国とよばれるようになった最大の要因であると言われている。


周辺諸国が武力衝突しても、侵略戦争が起きようとも、この精霊の国に手を出すことだけは躊躇され常に平和を守ってきた国である。日々の生活に精霊も溶け込んでいるため、国民が精霊に敬意をもって接することが当たり前のように根付いている。


そうして育まれてきた人間と精霊の絆が壊れかけたのは、約十年前に起きたあの事件が最初であったといえる。王国民は悲しみに包まれ、精霊の中でも人間に裁きをと怒りをあらわにしたものが多数いた。

その精霊たちを抑えたのは前精霊王であり、どうにか怒りを堪えたのは現精霊王である。





『この場にいる者たちには、精霊との契約有無に関わらず今だけ精霊が見えるようにしてやろう。』



大樹の彫刻に続く階段に横になるように座っている精霊王は、その言葉と共に息を吐き出した。その途端、契約者でない者たちにも精霊が目に見えるようになり、中には泣き出す者までいた。



『では、事件のあらましからお願いしよう。この中には知らない者もいるだろうからな。』


「……では。」



国王は精霊王に一礼すると、背を向けホールに集まる者たちに声をかける。



「精霊王からお言葉があったように、今この場で、過去の忌まわしき事件の解明を行う。」



国王にとってもあの事は思い出すだけで胸が苦しくなる。出来れば思い出すこともしたくないが、そうして目を背けていては解決させることはできない。

一度、深呼吸をすると、緊張の面持ちで国王を見つめる貴族たちの目を見つめ話し続ける。



「……約十年前。当時の王女……私の妹であるエリザ・ルンベリーがこの城の中でディカエに襲われ命を落とした。」



年長者たちは、あの辛く苦しい過去を思い出して目を伏せる。



「……王女と共にいた当時のゴルドー伯爵夫人も重傷を負い、後に亡くなっている。伯爵夫人は原因不明の病と言われていたが、実際にはこの襲撃での傷が原因だと判明している。

当時、原因不明として発表されたが、実際には王宮側では犯人の目処がついていた。しかし、その証拠は巧妙に隠され、未だに詳細はわかっていない。」



犯人はわかっている、という国王の発言に一部を除いた全員が驚きに目を見開く。そしてその驚かなかった者の中には犯人も含まれていた。

その人物にゆっくりと国王が視線を合わせると、犯人は何事もないかのように同じく見つめ返す。



「……いくら妹が殺されたとはいえ、証拠なしに断罪することはできない。このような立場でなければ無理矢理にでも口を割らせたかったが、今後二度と同じ被害を出させないために事件の解明を優先させた。そのために、とある人物が隣国で研究を続けてきた。」



初めて知る事実に片眉をあげる犯人に、国王もニヤりとしながら続ける。



「その人物も狙われていたようだが、巧妙に姿を隠し、今日まで研究を続けてくれた。目処がたったと言って近日中に戻るとの伝言も預かっている。それまで、こちらは今まで同様に次の被害者を出さないように注力してきた。……しかし、年末祭である今日、その犯人は罪なき我が国民を再び陥れた。」


「「「 ……。 」」」


「精霊王がいらっしゃるこの場で、その者を王として断罪する。……騎士団長、件の者たちを前へ。」



国王の呼びかけに応じ、控えていた騎士団長をはじめとする騎士たちがとある人物たち二人を前方へと誘導をはじめる。

男性はそのまま静かに前へと歩き出すが、玉座から後方に控えていた女性は落ち着いた騎士の対応にも騒ぎ立てている。



「無礼な、私に触らないで!! 私は関係ないわ、冤罪です!!」


「それはご自身で釈明なさってください。国王陛下がお呼びですので、前方へ……」


「嫌だと言っているでしょう!! 触れたら許さないわよ!!!」


「……よい、力づくで前へ。」



痺れを切らした国王が周りの騎士たちへ指示を出す。許可を得た騎士たちの動きは早く、後ろ手に捕まえると無理矢理前方へと歩かせる。



「……では、ナイクル侯爵、並びにナイクル侯爵令嬢。そなたらの……」


「国王陛下!! これは冤罪です、父も私も何も……」


『騒がしい奴だな。』


「なっ……!」



明らかに嫌そうに顔を歪める精霊王に、ナイクル侯爵令嬢は更に突っかかろうとする。その様子に流石の国王たちも止めようとするが、その隣の父であるナイクル侯爵は我関せずといった姿勢を崩さない。



「精霊王だかなんだか知らないけど、こんな……」


『あー、煩い煩い。先に進まないから黙っていてくれ。』



精霊王がそう呟いた途端、ナイクル侯爵令嬢の声がピタリと止まった。口は動いているが、声が全く出なくなっている。

驚きにナイクル侯爵令嬢も目を見開き、また精霊王に向かって何かを叫んでいるが何も聞こえない。全員が恐怖に動けなくなる中で、変わらずナイクル侯爵は表情の変化すらない。実の娘であるナイクル侯爵令嬢の変化にも心配をみせる様子すらなく、ただただ前を向いている。

その様子に、国王だけでなく公爵たちも不気味さを感じずにはいられなかった。



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