将来は皇帝になるんでしょう? それを認めさせようとは思わないの?
登場人物紹介
オビト(皇族だから姓はない。ヘヴン姓?)
一応、この物語の主人公。将来は聖武天皇となる予定だが、かなり頼りない人物。チート級に歴史に詳しい。ファミレスに行くと、メニューが多すぎて、なかなか注文を決められないタイプ。
アスカ=ウィスタプラン
われわれの歴史では聖武天皇と結ばれて光明皇后になるはず。実は聖武天皇と同い年(史実ではともに701年生まれ)。ファミレスでは、なかなか決められないオビトの注文まで勝手に決めてしまう。
ヒロミ=ドグブリード
史実では聖武天皇に嫁いで3人の子を産む。つまり、この物語はリアルハーレムものになる筈だった。未成年だからそういうシーンを描けないのが残念。ファミレスでは、まわりが全員ハンバーグでも、一人ナポリタンを貫き通す。
皇族貴族の子女が通うキヨミハラ学院の教室の一角。
休み時間の男子たちが、噂話をしている。
学院の東にある小高い丘が、古墳なのだと言うのである。
「これは絶対秘密だからな」と言いながら、声高に話をするのが12歳の少年である。
その輪に加わろうと、学院の生徒であるオビト皇子が近づいていく。
オビト
「なになに? 何の話をしているの?」
少年ら
「なんでもないよ。 これは、君のようなコーキな人が聞くような話じゃないんだ」
オビトが近づくと、2、3人で話をしていた彼らは、サッと教室の別の隅へと移動してしまった。
オビト
「何だい、アイツら。 いつもコソコソと。 今度、お尚父様に言い付けてやる!」
アスカ
「アンタ、まだそんなことを言っているの?」
アスカ=ウィスタプランは、オビトの同級生である。オビトの母親がウィスタプラン家縁の者だったので、オビトはウィスタプラン家で養育されている。だから、アスカは、オビトの同居人でもある。
先帝長男のオビトであるけれども、同級生からは嫌われていた。そのことに気付かずに、かえって皇族であることを鼻にかけるような態度でいる。幼馴染のアスカはそれを、苦々しく思っていたから、言ってやった。
アスカ
「アンタ、皆から嫌われているのよ」
オビト
「――だから――何だって言うんだよ」
アスカ
「どうして嫌われているか、分かっているの?」
オビト
「僕が先帝の長男で、いずれ皇帝になる身分だから、付き合いにくいんだろう」
アスカ
「アンタって、本当に馬鹿ね。 このまま普通に皇帝になれると、本気で思っているの? アンタ、女帝陛下に嫌われていること、気付いてないの? このクラスの何人かは、それを知っているのよ。 だから皆、アンタのことを避けているの!」
オビト
「……」
ここのところ女帝は、あたかもそれがゴミであるかのように、オビトのことを見る。だから、オビトは、自分が女帝から嫌われていることを、直感していた。だが、認めたくはなかった。
アスカは、そんなオビトの気持ちに気付いているが、容赦はしない。
幼馴染で、同居人でもあるオビトが、同級生から嫌われていて、それが分からないかのような態度を見せている。歯がゆい。
アスカ
「アンタ、悔しくないの? アンタ、将来は皇帝になるんでしょう? それを認めさせようとは思わないの?」
オビト
「でも、どうすれば良いのさ?」
アスカ
「さっきの話、聞いてなかったの? 学院の東にある小高い丘が古墳だって言うじゃない。 誰も祀っていない古墳なのよ。 あの丘が古墳だとしたら、この辺りでは見ないぐらいの大きさの古墳よ。 きっと、その奥には、強い霊力をもった古代の大王が眠っているわ。 その大王の霊を守護霊にして自分のものにできれば、きっと皆のオビトを見る目が変わるはずよ!」
同級生の皆を見返すために、古墳に眠っている大王の霊を自分のものにする、そのために古墳を探検しよう、アスカはそういう提案をした。