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あの時の剣がまだ残っているはず

 アスカ、ヒロミ、オビトの3人は、オビトが偶然に拾った『陽劍』と『陰劍』を手にして、ボーゼンを斃した生ける(しかばね)の霊力を押さえた。だが、12歳の3人の霊気だけでは生ける(しかばね)を調伏させるには至らず、戦闘は膠着した。


 これを打破しようと、オビトが生ける(しかばね)真名(まな)を当てると言い出した。彼には不思議な『記憶』があって、生ける(しかばね)真名(まな)が分かるかもしれないと言うのである。


オビト

「その名は、オオタタネコと言うんだ」


 オオタタネコ|(大田田根子)は、わが国では崇神天皇の時代、大物主命を三輪山に祀った者である。魏志倭人伝に言う卑弥呼の正体が倭迹迹日百襲姫命ヤマトトトヒモモソヒメだとすれば、大田田根子はこれと同時代の人物である。


 その正体が本当にオオタタネコであるとの確信までは持てなかった。だが、このまま戦闘が膠着すれば、いずれ霊力に疲弊して、自分たち3人は全滅してしまうだろう。


挿絵(By みてみん)


 オビトが「オオタタネコ」の名を唱えると、生ける(しかばね)は、たちまち身体を崩壊させ、浮遊霊(スライム)の如き存在に成り下がった。

 その正体が、「オオタタネコ」で間違いなかったようである。


 安堵の息をつくアスカ、ヒロミ、オビトの3人。


ヒロミ

「それで、この後、どうするの?」

アスカ

「当然、この御魂(みたま)をオビトの守護霊(トーテム)とするのよ!」

ヒロミ

「アスカ、本気で言っているの? これをオビトの守護霊(トーテム)にするって、どうやるか知っているの?」

アスカ

「は? ヒロミが知っているんじゃないの?」

ヒロミ

「え? 当然、知っているわ。 でも……私はやらない!」

アスカ

「どうして?」


 ヒロミは、御魂(みたま)守護霊(トーテム)とする方法のサワリを、アスカに耳打ちする。アスカ、赤面。


オビト

「いや、やはり、この御魂(みたま)には、しばらくここで眠っていてもらおう。 無闇に御魂(みたま)を使役するのは、よくないと思う」


 そう言って、オビトは『陽劍』と『陰劍』とを巧みに操作して、真名(まな)を言い当てられた御魂(みたま)を、もとの木棺の中に誘導した。そして、その蓋を閉める。


オビト

「それよりも、アスカとヒロミには、お願いがあるんだ。 さっきの、僕の『記憶』のことなんだけれども、秘密にしてもらえないかな。 こんな『記憶』があるって知られると、まわりに気味悪がられるから」


 アスカとヒロミ、これを了承。3人は、気絶したボーゼンを起こし、安全に帰宅した。


挿絵(By みてみん)


 宮中楽団が奏でる陽気な旋律。


皇太后

「その後、オビトは自分が『転生者』なんだって不思議なことを言っていたわね」

ドグブリード夫人(ぶにん)

「ちょっとアスカ、それは秘密っていう約束でしょう」


 コーケン帝の8年――崩御した先帝のショウム帝の思いで話にふけるアスカとヒロミである。あれから40年以上が経った今は、アスカは『皇太后』と呼ばれ、ヒロミはドグブリード夫人(ぶにん)と呼ばれている。


ドグブリード夫人(ぶにん)

「あの時、オビトは、私たちを守るために2本の剣を手に取ったのでしたよね」

皇太后

「えぇ、そうでしたわ……そうだ、あの時の剣が、まだ残っているはず」


 そこでアスカとヒロミが宮殿の宝物庫に行く。そこではショウム帝(オビト)の愛用品が無数に保管されている。


 探すこと小1時間。


ドグブリード夫人(ぶにん)

「あった。 ありましたわ!」

皇太后

「え? 本当?」


 2振の剣は、小剣(ショートソード)ではあったが、それなりに重量があった。その刀身に『陽劍』と『陰劍』の銘が残っているので、間違いない。


ドグブリード夫人(ぶにん)

「こんな重い剣を、あの人は片手で持っていたのですね」

皇太后

「誰もが彼のことを弱虫と言っていたけれども、ここぞと言うときには助けてくれる、そういう人であることが分かった冒険でしたね」


 皇太后は、この2振の剣を、ショウム帝(オビト)の遺愛品として、グレートテンプル・イーストに奉納した。グレートテンプル・イーストには、ショウム帝(オビト)が建設を指揮した巨大な神像がある。この2振の剣は、後に、この巨大な神像の足元に埋められることとなった。そして以後は誰の目にも止まることはなかったという。

(おわり)

 面白いと思われた方、ぜひぜひ、いいね、ポイント、感想、ブックマークをください。レビューも大歓迎です。


 さて最後に、この2振りの剣が「以後は誰の目にも止まることはなかった」というのは、ここ異世界でのことです。現世では、明治時代に東大寺の大仏の下から発見されています。実物は長さ1メートル弱のロングソードと言うべきものですが、それでは少年が片手で持つには重すぎると思ったので、ショートソードという設定にしました。


 すでに、続編を執筆中です。まもなく公開できますので、お楽しみに!

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