表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/356

第十章 混乱 場面三 遺言状(二)

 六百人の元老院議員たちが耳を澄ます中、解放奴隷ポリュビオスの朗々とした声が、ユリウス議事堂の広い空間の隅々まで響き渡った。

「無慈悲な運命が、わたしから二人の息子ガイウスとルキウスを奪い去ってしまった以上、ティベリウスに遺産の二分の一と六分の一(三分の二)を譲ることをここに言明する」

 思わず、ドゥルーススは傍らの父を伺い見た。「無慈悲な運命が、わたしから二人の息子ガイウスとルキウスを奪い去ってしまった以上」―――そんな書きようがあるだろうか。まるでやむを得ず渋々養子に譲るとでもいった風で、深読みをすれば「自分の血を引くものが正統な後継者である」と宣言しているにも等しい。そう感じた者は少なくなかっただろう。囁きが議事堂内に満ちた。

 ティベリウスは相変わらず無表情を保っている。

「ティベリウスは「アウグストゥス」の称号を受け継ぎ、これより正式にイムペラトル・ティベリウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥスと名乗るであろう。リウィア・ドゥルシッラには遺産の三分の一が与えられる。リウィアはユリウス一門の一員となり、今後ユリア・アウグスタと名を改める」

 遺言状は更に、第二相続人―――第一相続人が何らかの理由で相続できなかった場合の、いわば「予備」の相続人の名前が続いた。それはドゥルースス及びゲルマニクス、そしてゲルマニクスの三人の息子―――ネロ、ドゥルースス、そして二年前に生まれた末っ子のガイウス―――が挙げられていた。そして、第三相続人として、相当数の親類縁者や友人の名前が読み上げられた。もっとも、今回の場合は第一相続人が相続できないという事態はまず考えられなかったし、第二、第三はほとんど儀礼的なものと言っても差し支えない。相続人に指名する事で敬意を表すという行為は、ローマでは頻繁に行われることだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ