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第十章 混乱 場面三 遺言状(一)

 九月四日、ドゥルーススはウェスタ神殿から、アウグストゥスの遺言状をユリウス議事堂に持参した。それは二冊の冊子本と三巻の巻子本からなる膨大なもので、ティベリウス、両執政官、及び数人の元老院議員が封印を確かめた上で開封され、更に元老院議員以外で遺言状に署名していた者が各々自分の署名を議事堂の外で確認し、さらに議事堂内で元老院議員の署名者が確認するという過程を経て、ようやく朗読にこぎつけた。日付は今から一年四ヵ月も前、建国暦七六五年(紀元十三年)の四月三日となっている。

 昼までは、その朗読に費やされた。ティベリウスは中央を広く取って向かい合わせに置かれた議員席の最前列に腰を下ろし、ドゥルーススはその隣にいた。普段は二列目か三列目に座ることにしているが、今日はカエサル家の人間としての役目もある。先刻も父に代わって議会の開会を宣言したのだ。

 元老院の座席は指定ではないが、最前列は執政官経験者で占められるのが慣例になっている。ドゥルーススも昨年までは少し後ろの席を選ぶのを常としていたが、財務官を経験し、更に予定執政官となった今、あまり後ろの席に掛けるのも逆に不自然になっている。正直、新参のヒラ議員たちと後ろに掛けている方が気楽ではあったのだが。

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