蛇蝎(だかつ)の戦士
一方、準決勝の第二試合。闘技場ではスクードとセルぺが戦っていた。
だが、その勝負は歴然だった。長賢と短剣、その間合いの差を生かしたスクードはセルぺを全く寄せ付けない。
無駄な動きをせず守りに徹するスクードに対し、隙を見つけようと動き回っていたセルぺの方が消耗が早い。
二振りの短剣を手に斬りかかってくるセルぺ、刃を交えるスクード。
互いの息遣いまで伝わる距離。
と、セルぺが突然小声で声をかけてきた。
「ど、どうだい、スクードさん、ここは取引と行かないか」
「取引だと」
セルぺの言葉に眉をひそめるスクード。この期に及んで一体何を取引するというのか。
「ああ、俺が優勝したらガシオン公に取りなしておれがあんたを雇う。そうすればあんたは晴れて自由の身だ。何ならあんたが前に率いていた傭兵団を呼び寄せたっていい」
その言葉にスクードは表情は変えずに思案を巡らせる。
なるほど、要はわざと負けろと、そういう事か。だがスクードにはその提案の問題点も見えていた。
「…悪くない話だが、賞金だけではどうにもなるまい」
そう、確かに優勝賞金は莫大。だが、ガシオン公から剣闘士を引き取り、さらには傭兵団を呼び寄せるには足りない。
「それは…」
口ごもるセルぺ。それを見たスクードの表情が険しくなる。
彼の胸中で漠然と存在していた予想が現実味を帯びてくる。
「裏賭博、だな」
その指摘にセルぺの表情が変わる。その様にスクードは確信を得た。
裏賭博の話は剣闘士の間でも広まっていた。しかし、剣闘士たちは外部との接触手段が限られている。しかし、裏賭博に盗賊結社()ラバン・ルクシャ)が関わっていて、勝敗操作を目的に剣闘士と接触したのなら、十分にあり得る話。おそらくセルぺは盗賊結社と取引をして、エダと自分への賭け率は低く、このセルぺ自身の倍率を高く設定するようにしたのだろう。
そうしてセルぺが優勝すれば結社とセルぺに莫大な金が入る。
だが、どうやってエダを仕留めるというのか。それについてもスクードは確信があった。
おそらく…毒。
結社なら兵士たちの目を盗み、暗殺用の毒物を持ち込むことも不可能ではない。
短剣使いであるセルぺを選んだのもそれだろう。
スクードは確信を得た。




