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英雄との邂逅

ここから第二章となります。

あれから数日、 ビアトロはレトン・スリエードの紹介によりガシオン公の邸宅に招かれていた。


この邸宅は元々とある大商人の所有していた屋敷で、町の東から南を流れて海にそそぐ川『スカータ・オシュ』の中州という、攻めにくく守りに適した場所にあった。


ビアトロは対岸に築かれた門を守る衛兵の許しを得て、川に掛けられた長い橋を渡り、ようやく邸宅へとたどり着く。


詩人という立場上、地位のある人間と顔を合わせるのは決して珍しくはない。だが、大半の場合こちらは、珍しい見世物のようなもの。


 礼を失すれば相手の怒りを買うこともしばしば…ビアトロは面持ちを引き締めて公との会見に臨む。


「よくぞ来てくれた、放浪の白き詩人、ビアトロ・ヴァトーレよ」


「二度にわたる大戦の英雄であるフォルト・ガシオン公。お会いでき、光栄にございます」


「堅苦しい挨拶はいい。わたしも若いころは一介の戦士に過ぎなかったのだからな。無論、今も鍛錬は怠ってはおらぬぞ」


 そう言うと公はビアトロに自らとは対面の席を勧める。


 やはりこの人物は噂通りのようである。ビアトロは認識を一部改めると一礼し、公の勧めを受ける。


「それで公、一介の詩人である私めに話とは?」


「…うむ、その前に…貴公はこの世界についてどれだけ知っている?」


「は?どのくらいといいますと?」


「例えば、西に広がる『(スカータ・)(マレ』の先、とかな」


 その言葉の意図が読めず、ビアトロは一瞬言葉に詰まる。


「…あの先は滝となっていて、行けば流れに飲み込まれて帰ってこられない、と聞き及んでおりますが」


 あえて巷に流布する噂話を述べたビアトロに公は小さくうなずくと、傍らに置かれた見慣れないものを彼の目の前に差し出す。


「これは?」


 細かい細工が施された台座、その上部に三日月の様に大きく弧を描いた張り出し部分があり、そこには見事な球体が取り付けられている。


「これはとある冒険者の一団が南の古代遺跡から持ち帰り、献上してきた遺物だ。これとこれを見てくれ」


 そういうと次に公は、獣皮紙に描かれたこの辺り一帯の地図を取り出す。


「この球体のこの部分と、この地図に描かれている海岸線の形…似ていると思わないか?」


 そう言われビアトロは二つを見比べてみる。確かに似ている…しかし公の意図が何を言わんとしようとしているのかがわからない。


「わたしの考えを言おう。わたしは『これ』が我々の住むこの大地を模したものではないかと思っている」


 その言葉にビアトロは目を見張る。

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