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異世界生活RECオン!!

 「ったくよ……どこもかしこも同じような番組ばっか流しやがって……」


 ソファに沈み込んだまま、足元に転がった空のペットボトルを蹴飛ばしながら、俺はポテチの袋を漁ってテレビを睨む。


 いつからかつけっぱなしテレビが流すバラエティ番組では芸人が大声出して、それが観客の笑いの連鎖を産むが、俺にとってはどこが面白いんだか分かんない。 

 安っぽいBGMに、とってつけたように派手なテロップ、編集技術だって拙いように感じる。


 「こんなもんより、俺がプロデュースした方が百万倍おもしれーっての……」


 そう、俺なら――俺なら……って、言うだけならタダだ。


 ――俺は“東 朝日(ヒガシ アサヒ)”18歳。

 輝かしい青春の時を全て生贄に自堕落な生活を手に入れた無敵で完璧で天才的なニート様だ。


 ああ、今日もいい天気だなぁ。外に出ないけど。

 

 誰かに会うわけでも、何かをするわけでもなく、ネットも解約されちゃったから、ただ退屈しのぎにテレビを眺めるだけの日々。


 まぁ、毎日高校指定のジャージに身を包んでいることだし、これも一種の高校生活といって差し支えないだろう。

 自慢じゃないが、俺以上に胸に“東”の苗字の刺繍がついたジャージを着こなすやつはいないと自負している。


 「ったく……世の中の番組作ってるやつ、センスねーんだよ。俺がやりゃ、もっと爆笑も感動も取れるのにさ」


 あくびをしながら、今日も口だけの理想論をこぼす。

 

 ……その瞬間だった。


 ――バチバチッ、パキィン!!


 「うぉっ!?」


 突然テレビから勢いよく火花が散った。


 なんだ!? まさか寿命か?

 せっかく従兄弟の兄ちゃんに高校の合格祝いに買ってもらったのに……もしやこれは高校に行かず引きこもっているバチか……?


 ……なんて思った次の瞬間。


 ドカァァァン!!


 テレビの画面が派手に弾けて、中から――


 オレンジ色の髪の女の子が飛び出してきた。


 「……え?」


 理解が追いつかない。

 しかもこの子見たこともないような変なスーツ着てる。

 ……え、夢?


 「――初めまして!! 異世界職業斡旋所“ハッピー・ワーク”転生転移部のナビィ・テンショックと申しますっ!」


 固まる俺をよそに彼女は名乗った……。

 笑顔でウィンクして名乗った……。


 「……え、え?」


 俺の口から出たのは、もはや言語というより音だった。


 何この人……? 何が起こってんの今……?


 「私たちは現世じゃイマイチ才能を活かしきれてない人に、異世界でピッタリの職場を斡旋するんです! それがハッピー・ワーク、略して“ハピワ”!」


 「……え、えぇ?」


 理解はまだ全然追いついていないものの、俺は口から盛れる音をなんとか言葉に変えて返した。


 「な、なんだあんた? 新手の訪問作業かよ!?」


 「違います! “ハピワ”です!」


 俺のツッコミなんかお構いなしに、彼女はさらに笑顔で続けた。


 「実はですね、あなた……東 朝日様の能力を是非とも貸していただきたいと言う方が異世界にいるんです!」


 「えぇぇぇぇぇええぇええええぇぇええぇ!?」


 何かがおかしい。いや、全部おかしい。

 だって俺、ただのニートだし、何でもないし……あれ? この展開ってもしや……。


 「……もしかして」


 「はい?」


 「……俺、異世界の勇者的なやつ?」


 ナビィの目が、ぱぁっと光った。

 なんかこう、尊敬と信頼の混ざったヤバい光をしてる。


 「まさにその通りです!!」


 「っしゃあああああああ!!」


 マジか!? 


 俺の中で、剣と魔法とモンスター、そしてモテモテハーレム生活が一気に爆誕した。

 ああ……ついに俺の時代が来たんだな……!

 ニートしてて良かった……!


 「任せろ! 俺が異世界、救ってやるよ!!」

 

 詳しいことなんて聞かなくても良い!

 俺は男としての夢を一歩踏み出すようにそう叫んだ。


 一階からは「うるさいわよー朝日」なんて母ちゃんの声が聞こえてくる……ごめんよ母ちゃん、今までありがとう。俺ちょっと異世界救ってくる。


 「ありがとうございます! それでは異世界へレッツ・テンショック!!」


 目元にうっすら涙を浮かべていると、ナビィが元気よくそう言った。


 「テンショ……あ、ちょ、待っ――うわあああああああああ!!!!!」


 すると光に包まれ、体がふわっと浮かんで、意識がどんどん遠のいていって――


■ ■


 目を覚ますと、俺は草原に立っていた。


 山と森。鳥のさえずり。遠くには小さな村。

 なんだか懐かしくなるような風景だが、よく見ると、飛んでる鳥も建ってる家も俺の知っているものとはやや異なる。

 ……あれ、ほんとに来ちゃった?


 「マジで異世界だこれえええええ!!」


 初めてだけが広がる眼前にテンションは爆上がり。


 「勇者・東 朝日、爆誕じゃああああああああい!!!」


 そう叫んだところで、隣にいたナビィがにっこり笑って言った。


 「こちらが、あなたの配属先です!」


 彼女が指差した先に俺は期待と興奮と、少しの不安と緊張が入り混じった視線を向けた。


 ……まさか冒険者ギルド!?


 しかしそこにあったのはボロい木造の建物で看板にはでかでかと、こう書かれていた。


 『カナイローカルテレビ』


 「……は?」


 「地方住民の生活を始め全エリア住民に寄り添ったテレビ局――ここ“カナイ村”のローカルTV局です!! あなたにはこちらで、視聴率向上のプロデュース業務に従事していただきます!」


 「……勇者じゃねえじゃねぇかああああああああああ!!!!!!!」

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― 新着の感想 ―
 ま、まぁ人を救う勇気ある者と言う意味では勇者……ニートに勇気があるのか? と言うのが1話終わった感想ですね。  異世界と言ってもテレビがあるということはよくある中世的なものではなく結構近い過去? …
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